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品揃えの3つの考え方〜品揃えのタイムライン

品揃えの3つの考え方〜品揃えのタイムライン

西村 賀彦

大学を卒業後、コンビニチェーン本部に就職。約5年間店舗の経営指導等に従事したのち、様々な経営者とより親密なお付き合いがしたいと決意し税理士を目指す。以来、名古屋市内の大手税理士法人約10年間勤務した後、平成26年に税理士として開業。平成22年MBA取得。元コンビニスーパーバイザーの経験を活かし、フランチャイズビジネスを営む方へのサービスを得意としています。

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どの業種でも、商品のラインナップ、すなわち品揃えは大きなテーマなのではないでしょうか。品揃えを、広げることは、効率、在庫リスクを、伴います。逆に品揃えを絞りすぎるのは、ニーズに応えられない可能性があり品揃えをどうするかは非常に難しい問題です。

ここで、ひとつ確認すべきことは、品揃えは広ければ広い方が顧客のニーズをつかめるのかということです。答えはNOですよね。『商品は無限に種類がありますが、どれになさいますか⁉』と、言われたら『うーん、また、出直します...』となりますもんね。ですから、顧客にとっては、ちょうどよい品揃えというものがあるはずだと思います。

さて、ここから3つの考え方に入って行きます‼品揃えで一番わかりやすいのは、『今の目の前の品揃え』です。コンビニでいえば、常に3000アイテムほどの商品があると言われています。これらについて、なぜこの商品は必要か、また、この商品群はよく売れているから、品揃えを拡充した方がいいのではないか、ということを限られた売り場の中で考えることです。
例えば、最近のコンビニでは主婦層や高齢者への、アプローチとして野菜の取扱を拡大していますが、代わりに何らかのスペースが減少しているはずです。もともと3000アイテムに厳選していますから、置いておけばそこそこ売れるものばかりのはずですが、それらのどれかを削らなければ、野菜の売り場は確保できません。データ、購買シーン、アルバイトの意見などを総動員して仮説を立て意思決定をしなければいけません。これが、一つ目の品揃えの考え方である『今の目の前の品揃え』です。

次に、二つ目の考え方は『今までの品揃え=品揃えのタイムライン』です。すなわち、どのような戦略で今までの品揃えをしてきたかということです。競合が激しくなり、商圏が狭くなってくると、来店客数を増やすためには同じ人に何度も来店していただく必要があります。同じ人に何度もきていただくためには... 一言で言うならば、品揃えに時間軸を加えること必要だと思います。すなわち、来店の度に新しい発見があるような品揃えにするということです。
具体的には、例えば、『新商品は必ず一番目立つように展開し、品切れしないようにする』というコンセプトを持って営業を続けているお店とそうでないお店では、お客様の期待感に差が出てくると思います。お店にくる前に、今日はどんな新しい発見があるのかを楽しみにきてくださるのと、近いところにお店があるからという理由できてくださるのとは、天と地ほどの差があります‼

コンビニでは、今の瞬間の売り場では3000アイテムしか置けませんが、一年間に提供できるアイテムは7000アイテムとも8000アイテムとも言われています。すなわちお店ごとに仮説をたて、自店のタイムラインを作っていくつもりで品揃えを構築していくのです。通年売り場にあり続ける商品はほんの僅かです。めまぐるしくうつりかわる商品たちをうまくアピールしなければ、現在の売り場にある3000アイテムだけの勝負になり、うまくアピールし続けているのであれば、過去の商品も含めた8000アイテムの品揃えで勝負ができるのです。どちらがお客様に満足感を与えられるかは、一目瞭然ですね‼

さて、最後は『仮想の品揃え=バーチャルの品揃え』です。これは、タイムラインの品揃えがしっかりできていることが前提で可能な品揃えです。例えば、テレビCMで新商品が紹介された時、それを見た消費者が『あの店のあの辺りに並んでいるはずだ』と思ってもらうということです。テレビだけでなく、Twitterなどのソーシャルメディアで

『おでん5点セット購入で50円引‼あと一品をどうしようと思っていた仕事帰りの主婦の方にピッタリ‼今日は店長の私がおでんの専属販売員をしています 笑』

とつぶやいたとします。その時にお客様が想像するのは、具体的なあなたのお店の売場になっていることが重要です。仕事帰りには他のお店もたくさんありますから、具体的に自分の店の売場をイメージしていただくことがとても重要です。これは、『タイムラインの品揃え』というお店の今までの歴史も含めた個店単位のブランドが構築されてこその効果です。こうなると同じチェーン店でも、お客様にとっては、お気に入りのお店になるのです。
バーチャルの品揃えは、定期的に誰でも発信ができるソーシャルメディアの発達により可能となりました。チェーン展開の弱点であった個客への対応の可能性がありますので、是非とも取り組むべきと思います。
これは、また別の機会にまとめてみたいと思います。
 
今まで、述べてきました3つの品揃えの考え方をまとめますと、以下の図のようになります。

zu_20120910.jpgのサムネール画像

①のように日々の品揃えをコンセプトをもって取り組んでいくと、②のように品揃えも人間と同じようにタイムラインが形成されます。これは、『この店にいけば、毎週の新商品がわかりやすく並んでいる』といったお客様との信頼感ともいうことができます。そしてその信頼感があれば、ソーシャルメディアを利用してお客様に直接訴えかけるマーケティングを行うことができ、③のバーチャルな品揃えイメージを作り出すことも可能だと思います。そしてそのイメージを持ったお客様が来店され、満足をしておかえりいただければ、信頼関係はより強固になると思われます。
まさに人間関係と同じでお客様とお店との信頼関係は、毎日毎日の品揃えの積み重ねだということがわかります