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家探しに役立つネットの口コミを分類してみる

家探しに役立つネットの口コミを分類してみる

大出 裕之

日本最大級の不動産情報ポータルサイト『HOME'S』で、マーケットデータの編集担当をしております。HOME'Sマーケットレポートなど。まだHOME'Sを知らないという業界のかたはこちらの不動産業向けサービス概要ページをごらんください。 「このサイト(ブログ、アカウント等)に記載する内容は私個人の見解であり、必ずしも株式会社ネクスト(またはグループ会社)の立場、戦略、意見を代表するものではありません」

当ブログ「住宅・不動産業界とネットの進化をウオッチ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hiroyukimac/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


IT革命後、口コミは変わった

 どのような商取引にも、口コミが介在する余地がある。価格設定の良し悪し、製品・サービスの良し悪し、輸送から接客に至る流通の仕組みの良し悪し、アフターサービスの良し悪し......。

 これら、供給側が総称するバリューチェーンのどこであっても、ユーザーは体験に基づく主観的な評価を語る。口コミとは、それらの総称であり、他者の取引活動に影響を与えるという事実は、今更申し上げるまでもないだろう。

 IT革命後の世界で変わったのは、口コミの伝播スピードの高速化、それまで狭い範囲に限られていた伝播エリアの拡大、そして、知人でもない人のつぶやきを口コミの一つとして認知し参考にできてしまう脳内回路の形成、などが挙げられるだろう。

 不動産の世界でも他の分野と同様に口コミが商取引に影響を与えることが多い。

・物件の物理的、環境的評価
・店舗、接客サービスの評価
・物件の管理状況の評価

 これら全て、口コミに評価されることになる。

 今回は、住宅・不動産の世界と口コミの関係をざっと俯瞰する。口コミにもいろいろあるので、是非自分のニーズに合う口コミサービスを利用しつつ、スマートな住まい探しをしていただければと思う。なお良いことも悪いことも書きやすいので、弊社のサービスを例にとって紹介していく。ご容赦願いたい。


物件そのものの口コミ

 まず、物件そのものの口コミというのが、一番てっとりばやくエンドユーザーには気になるところだろう。とはいえ、物件そのものの口コミは、限定的な分野でしか実用化されていない。

 その限定的な分野が、新築マンションだ。新築なだけに取得価格が高額であり、事前に口コミで確認したいことが多い。確認したいこととは、新築マンションを企画したデベロッパーの評判であり、そのマンションが建つ立地であり、同様のシリーズのマンションの評判であったりする。

 不動産全般に共通することだが、商品として一物一価という特殊な世界であることだ。住宅・不動産業界にも量産効果はあるが、それはハウスメーカーのパーツが量産効果を生んでいるだけであり、全て異なった立地にあわせて設計され、施主の意向で通常の家電製品・PC製品とは次元が異なるカスタマイズが可能だ。マンションのような集合住宅であれば、さらに一緒に住む他人という容易ならざるファクターも存在する。

 だからこそ、特定のあのマンションの口コミが知りたい、という要望が出てくるわけだ。

 弊社にあるマンション100%ようなマンション比較・口コミサイトの欠点は、たまたま知りたいと思った肝心のその物件の口コミがない、という事態に直面することが多い、という点だ。

man100.PNG              マンション口コミサイト マンション100%


 新築時に口コミが形成されそのまま中古物件として情報が蓄積される場合を除き、中古物件の口コミ、賃貸物件の口コミは、さらに希少であり無いに等しい。口コミをする、という行為がいかに希少性のある、価値ある行為かがよくわかる。この分野はその地域、エリアという環境要因の口コミを探すしかない。

 妄想だが、例えば日本国民がみんなで行動ログを取って公開し始めたりしないと、賃貸・売買流通を円滑にするのに有効な口コミインフラはできないのではないか、と思ったりしている。


Q&Aの利便性と危険性


 とはいえ、住まい探しで気になる物件の口コミが無いからといってあきらめてはいけない。他にも確認しておくと良いことが住まい探しにはいろいろある。

 おしえて!HOME'Sくんというサービスを弊社は2003年から運営しており、不動産関連のQ&Aサイトとしては相当古くから運営しているサイトとなる。ここは物件そのものではなく、探し方のコツ、ノウハウ、常識など違う情報を得られる。例えばその工法が注文した人の要望に合っているのか、知識のない人がすぐに判断できるわけがない。

 Q&Aサービスの場合、聞きたいことが明確になっていればいるほど、的確な返答を得られることが多い。明確になっていない場合でも、一般論としての話は聞けるだろう。流行のサードオピニオンとして使うのがかしこいと思う。

oshiete.PNG            住まいのQ&Aコミュニティ おしえて!HOME'Sくん

 唯一気をつけるべきは、前出の口コミでも言えるのだが、意図的に誤った情報を出す人がいる可能性があるという点だ。特にハウスメーカーやデベロッパー、業者などの口コミの際、同業者が根拠の無い誹謗中傷を書き込むことがある。聞き方のコツでもあるのだが、良い悪いという聞き方ではなく、特徴なり得意分野を聞くなどして判断材料にするといい。

 ちなみにQ&Aコミュニティにもよるが、自浄能力が高いところであれば、根拠のない誹謗中傷は指摘され削除されたりすることもある。


地域情報とカバーエリア

 住まい探しは、新たに住む場所を探すことでもある。極端に言うと、物件情報はどうでもよく、自分に合った街に住みたい、と思っている人も少なからずいる。では地域の口コミはどうやって手に入れると良いだろうか。

 通常は地域情報サイトというもので口コミを探すことが多いだろう。弊社もLococomというサイトを運営しているが、全国を扱う大手から地方限定、イベントだけを集めたりグルメだけだったりと、いろいろなサービスのサイトが世の中にはある。

 個人的には、2chの地域板が興味深い。あそこは善意の塊で成り立っているようで、実にリアルで、建設的な意見が大多数を占め、面白い。

lococom.PNG               地域コミュニティ Lococom

 地域情報サイトの悪い点も言っておこう。それはネット社会の構図と一緒で、大都市ほど人口が多く、人口が多いエリアほど口コミが多い、という単純な事実だ。どこにでも口コミが落ちているわけではない。日本の国土面積の大部分は、口コミもされにくいエリアなわけだ。


サービス業だったよね......

 そして、これまであまり見ることの無かった口コミが、店舗・接客という部分だと思っている。業界の動きとしては、今後不動産と人との関係性が変わり、エンドユーザーにとっての不動産屋さんはコンサルタントとなり、ベストなソリューションを提供する高度なサービス業になろうとしているムーブメントがある。

 マンションやビルを建てたり分譲地を開発したりするのが字義通りの不動産業とするならば、街で店を開いて、エンドユーザーと物件をマッチングしてくれる不動産屋さんは、プロフェッショナルで大切なサービス業なのだ。

 ならば、そのサービス評価について口コミが発生してよいはずだろう。誰だって口コミを頼って不動産屋さんを選べる世の中になればそれはそれで良い。

 大手ポータルサイトで初めて、HOME'Sは不動産会社評価機能をサイトに機能追加した。接客を受けた不動産会社の評価をエンドユーザーに投稿してもらい、他の人も見られるようにする。不動産会社からもお返事コメントを書き込めるようにしている。

evaluate.PNG               HOME'S 不動産会社評価

 中の人として言うと、もちろん最初は、不動産会社から拒否反応される覚悟だった。そこで口コミそのものを公開するか非公開するかは不動産会社に任せることにしたのだが、結局HOME'S加盟不動産会社の約80%が口コミ公開を選択している。意識の高い不動産会社では、指摘された内容を業務改善に活かせるので歓迎だと言っている。業界のサービスレベルが少しでも向上するきっかけになるのなら、こんなにうれしいことはない。

 ここまでいろいろな口コミを語ってきたが、つくづく複雑な分野だと思う。工業製品でないものを評価する場合、多角的に見なくてはいけない。でもだからこそ、家や土地との出会いであったり、人とのご縁であったり、そういうヒューマンな要素が息づく分野とも言える。ネットサービスの使命は、そのヒューマンな要素をスマートに利用できるインフラの構築ではないだろうか。