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『南欧にチャイナマネーが入って不動産バブル再燃?』~ビザ付不動産投資で経済再建はできるか?~

『南欧にチャイナマネーが入って不動産バブル再燃?』~ビザ付不動産投資で経済再建はできるか?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は「不動産バブル」についてです。

今も世界のどこかがバブっています。

 

投資マネーと不動産バブル

1ヶ月前、日経平均株価が一日で500円以上下落するなど、世界の金融市場が混乱しましたね。

原因はアメリカの金融緩和縮小方針がはっきりしたことでそれまで新興国などの金融市場を支えていた投資マネーが大きく動いた事にあります。
日本のアベノミクス景気にも冷や水が浴びせられた格好になりました。

いまや、世界中の資本が瞬時に世界を駆け巡ります。
投資マネーは、株式市場だけでなく、商品市場に向かう時もあれば原油などの資源に向かう時もあります。それが不動産に向かうとやっかいなことになります。

「この国の不動産は今が買い!」ということになると、ビルや土地が買われたり、マンションがどんどん建設されたりします。不動産は値上がりすると資産効果が大きいので、みんなが「売却して、利益を得て、その資本でまた投資して・・・」というのを繰り返すとあっという間に実態価格からかけ離れた額で取引が行われる「バブルの状態」になります。

不動産バブルは、投資家や建設業界が潤って、瞬間的には好景気に酔うわけですが、投資マネーが去って「バブル」が終わった時には悲惨なことになります。
マネーが次に移った時に残るのは、建設途中で放置された誰も住まないマンションや実態相場に合わない売れない不動産などです。
不動産バブルが他の金融市場のバブルと違うのは、不動産は実需を伴う実物資産であることです。相場を大きくかい離した価格で取引されるようになると本当にそこに住みたい人が誰も買えなくなってしまいます。
また銀行は担保割れを起こした不良債権を抱え込むことになり、金融も機能不全を起こし、地域経済に大きなダメージを与えます。

ビザ付不動産投資で経済再建

こういった不動産バブルは今も世界中の国々で起きています。
これもまたそういうことにならないといいと思うのですが・・・・
↓↓↓

<新興国の富裕層、南欧が呼び込み 不動産買えば長期滞在OK 経済再建に活用>
(2014年2月5日付 日本経済新聞)
『南欧諸国の間で中国など新興国の富裕層マネーを呼び込む動きが広がっている。
不動産投資を条件に長期滞在許可を出し、欧州債務危機で疲弊した経済の立て直しにつなげる狙い。
2012年10月に制度を導入したポルトガルで成果が出始めており、スペインやギリシャが続いた。
フランスも制度改正の検討に入った。』

ポルトガルでは外国人がポルトガルの不動産を50万ユーロ(約6800万円)以上購入すると5年間の居住許可が与えられるそうです。
ポルトガル政府によると2013年にはおよそ3億ユーロが投資されたようで、2014年に入っても前年を上回る勢いで伸びているようです。

同様の制度をスペインやギリシャ、キプロスなども取り入れており、
にわかに南欧の不動産価格の値上がり期待が高まっているそうです。

『外国のマネーを誘致するために、長期滞在ビザを出す仕組みはほかの欧州諸国にもある。新興国マネーの取り込み競争が拡大する可能性がある。』

と記事は結んでいます。


いつか来た道、不動産バブル?

この記事を読むと、「懲りないな~」という印象を持ちます。
ここで何度かお話ししていますが、私は1992~1993年頃と1996~1998年頃にスペインに住んでいました。
スペインは1990年~2000年代に大きな経済成長を遂げましたが、その経済発展を引っ張ったのは不動産・建設業でした。
EU加盟後にスペインの不動産・建設市場に一気に外資が入ってきた結果、
絶望的な経済状況から、「奇跡」とも言われるほどの回復を遂げました。
しかし、2008年の世界金融危機で本格的にバブルは崩壊。国債の信認も失われ、ギリシャ、ポルトガルとともに国家破綻ギリギリのところまで追い込まれたのは記憶に新しいところです。

実需を無視した開発計画や身の丈を超えた住宅購入が相次いだ結果、
南欧諸国には建設途中の建物や手つかずの新築ビルといった「バブルの遺産」が今でも数多く残っています。

これといった強い産業を自国に持たないスペインは、観光や不動産投資など常に外資の流入によって経済を成り立たせてきました。そしてまた今回も、外国資本に不動産投資を誘うような施策で活性化を図っています。
バブルにならないといいのですが・・・。


■買っている「外資」とは誰か?

さて、そういう南欧の不動産を買っている「外資」とは誰なんでしょう?
新聞報道によると、ポルトガルの不動産投資制度を利用した外国人の国籍は中国が最も多く、ロシア、ブラジル、アンゴラと続くそうです。
近年経済発展をとげた新興国マネー、特にチャイナマネーが多いようです。
確かに上海の賃貸投資利回りはすでに2%程度であり、投資に見合わない水準になっています。
そんな中国の方にとって値上がりが期待できる不動産は魅力的なはずです。
さらに、長期滞在ビザの発給は欧州でビジネスをすることが多い中国の富裕層にとっては、ほぼ欧州全域で自由な移動が可能になるという利点もあります。

今のところ、欧州のほとんどの国が加盟しているシェンゲン協定の
対象地域に中国人が入る場合は、都度ビザを申請しなければなりません。
でも例えばポルトガルに家を買って居住ビザを得た中国人は、シェンゲン協定加盟国のどこにでも自由に行けるようになります。

「不動産投資+長期滞在ビザの発給」というセットは、不動産に投資マネーを集めて市況を活性化させるにはいいアイディアですね。


不動産を投機目的で買っても・・・

ただ、投資家の方にとっては気を付けないといけないこともあります。
ポルトガルでは、期間5年のうち最初の1年は最低7日間、その後は2年ごとに14日間ずつの現地滞在が義務付けられています。違反した場合には重い税金が課せられる可能性があります。
つまり単なる値上がり期待とビザ受給のためだけに買ってはダメということです。
中国人など遠い外国にいる方がどのようにその不動産を保守・管理するか。
本当に年何日か現地で過ごす気があるか。
投資家にも、じっくり考えることを促しているわけですね。

南欧の不動産に中国など新興国の富裕層の資金が入ってくれば、
不動産市場は再び活性化するでしょうし、建設雇用などの効果も期待できます。買う側にとっても魅力的な不動産を保有できるとともに長期滞在のビザまで受けることができます。
売る方、買う方、双方にとってよい仕組みです。
ただ当初の狙いから離れて過熱してしまうのが不動産バブルです。
単なる値上がり期待で売買を繰り返す不動産バブルはいつか必ず破たんします。
自分で使わないものを投機目的で買ってもろくなことにならないというのが、私たちがこれまでに高い授業料を払って得た教訓ですね。
また南欧諸国が同じ轍を踏まないことを願うばかりです。


今回は以上です。
もっと日本が良くなりますように。

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