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習慣性スマホ指掻き症候群に罹るな  その2

習慣性スマホ指掻き症候群に罹るな  その2

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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習慣性スマホ指掻き症候群に罹るな  その2

 

 私は過去30年間、ノートに発想を書き続けてきた。A5のファイルノートの数は現在、418冊。記録した発想数は、201361日の時点で、375650個となる。

 私の人生を掛けた思考ログである。中には仕事、生活、家族、生きがい、発明、執筆、計画など、すべてが含まれている。全部手書きしてきた。

 

当初、商社マンとして、サウジアラビアのネフド砂漠のリヤドに駐在していた時に始めたアイデアマラソン。毎日思考し、即書き留め続け、ビジネス戦略と、厳しいストレスに対処するために、ノートに思いを書き留め始めた。

 アイデアマラソンを開始したころにワープロが出現した。私はワープロもフルに活用した。ノートに書き留めた発想を、ワープロでまとめて、執筆の流れを作り、すでに50冊近い本を出版し、論文を書いてきた。

 

 アイデアマラソンを開始したのが、19841月で、最初の本を出版したのが、1985年というのも偶然ではない。それ以降、ノートに書いたエッセイ案、原稿案、論文の骨子を、ワープロ、そして後には、パソコンで作り出すことを続けてきた。ノートは独立して使ったが、パソコンの側には常にノートがあった。

 

 ゲーム機は絶対に近寄らなかった。家族でも使わなかった。ゲームは時間と人の感覚を殺し、病的習慣性があるからだ。ゲームは大きな時間も、小さな時間もきっちりと殺してくれる。大人の時間も、子供の時間も麻薬のように殺すと考えてきたし、これは間違っていなかったと思っている。

 

 私のような気の弱い者は、いったん始めるとゲームは習慣性耽溺症に陥ると信じていた。また、人がすぐに特定のゲームソフトに飽きてしまうことも、非常にむなしく思ってきた。ゲームに飽きるのではなく、一つのゲームに飽きて、次のゲームを手に入れる飽き性だ。金も時間もぼろぼろになる。

 

 数年前に大流行した昔の携帯を使ったゲームは、人はいつか飽きがくるとは思っていたが、スマホの病的症状は遙かに深刻だ。

 

 今の、スマホは、たしかにゲームもできるが、それ以上に、あふれる情報からのスマホ依存症、「習慣性スマホ指掻き症候群」が、どのような人格と人生を築いていくか非常に心配だ。私が気にしていることは、隙間時間をすべてスマホに集中していることだ。

 

  確たる目的以外で、何かないかとネットの世界を掻き探し、さまよい、模索して時間を使っていく。

 

  ちょっとした待ち時間は、一日の色々なタイミングにある。プラットフォームでも、喫茶店でも、あるいは歩きながらでも。それらがきっちりとスマホ掻きに盗られてしまうとなると、間違いなく言えるのは、一日があっという間にシームレスで終わることだ。これはきつい。そして、考えなければならないことがどんどん未解決のまま蓄積されてしまう恐れもある。今まで得られなかった情報も多種多様入手できる一方、自己中心、自己中毒症状が出てくる可能性もある。

 

 歩きながらのスマホは、携帯しながらの車の運転と同じくらい危険かもしれない。耳に音楽、目は完全に画面にくぎ付け状態だ。スマホ画面への集中度は、異常なくらい高い。プラットフォームから線路に転落も今後は常習的に増える。川に落ちる、マンホールに落ちる。試験に落ちる。色々起こるだろう。

 

 スマホからは、情報のインプットは非常に多いし、多種だが、指掻きスマホは、情報のアウトプットが得意ではない。

 

 私のアイデアマラソンの研修で訴えるのは、隙間時間を思考とノートへの書き留めに、アウトプットとして集中してはどうかということだが、スマホは見事にその隙間時間をインプットで覆ってしまう。

 

 私も含めて、スマホとどのようにつきあっていくかの自己規制を考える時にきている。