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カトマンドゥ市内緊急通信システムの提案

カトマンドゥ市内緊急通信システムの提案

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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緊急投稿 地震 その2
東日本大震災を被災された方々に心からお見舞い申し上げます!

カトマンドゥ市内緊急通信システムの提案
 70年前には、人口は30万から40万人だったというネパール・カトマンドゥも、現在は140万人に膨れ上がっている。

 大地震が今、発生すれば、これはとんでもない被害が発生することになる。地震測候所の説明では、次の大地震が発生すれば、ほとんどの住宅やビルは倒壊して、最低30万人の死者が出ると言っていた。

 大地震が発生したとすれば、当然ながらインドや日本などの救援隊は入ってくるだろうが、当初は非常に不安なまま、過ごすことになる。そこで、私が考えたのは、緊急時広報システムだった。

 前回の大地震の時も、カトマンドゥの市内の中心の広い公園は、避難場所になって、10万人の人々が集まったらしい。

 中央の広い公園の横に、数10メートルの鉄パイプの耐震対策済みのポール支柱を建てて、その上にビデオカメラ、送信機、照明ライトそして、大きな拡声器を付ける。下には非常用電源と通信装置を付ける。

 市内各所の学校などには、同じようなポールに受信機と拡声器、照明ライトなどを付けて、電源はバッテリーで用意する。

 大震災が発生したときなどの、緊急の場合に、ネパールの国王、皇太子、首相、カトマンドゥ市長の宮殿や公邸から、直接、市内全域の被災者に向けて、直接スピーチを送ることができるシステムだった。

 「大震災に被災されたカトマンドゥ市民へ、現状の支援で、インドや日本などの各国の支援が到着するので、とにかく落ち着いて待ってほしい」というようなメッセージを飛ばす。こうして、市民を落ち着くように説得しようということだった。そして、中央公園の自家発電の照明が希望の光に見え、安全に民衆が集まれるようにしようと考えたのだ。不安な群集が暴動に出ないようにということもある。

 日本の小学校や公民館に付いているアナウンスの装置のシステムと同じアイデアだった。

 簡単な提案書を造り、市長に面談したら、市長がすごく感激して、皇太子への説明をおこなった。

皇太子も、提案内容にすごく納得して、
「これは素晴らしい提案だ。ぜひとも実現したい」と明言された。「私が国王に話すので、一度、Mr 樋口、国王陛下に面談して欲しい」という。
「ぜひとも。お会いしたい。詳しく説明します」と私は、回答した。

次の週に、皇太子の事務所からのメッセージが来て、もうすぐ、「国王に話します」と言う。
その次の週、ネパールの王宮で大惨劇が起こって、国王一家が皆殺しにあった。そして、その犯人が皇太子で、皇太子も犯行後自殺したという。

これほどのショックはなかった。何が理由で、皇太子が国王と王妃(つまり両親)と王女(つまり妹)を撃ち殺したのか、果たして本当に皇太子が犯人なのか?なぞがなぞを呼んでいる。私が皇太子に会った時には、まったく正常だった。国民のことを芯から考える皇太子だった。

この王宮の大惨劇のために、この震災時公共通報システムは、一瞬にして吹き飛んだ。

私が帰国した2004年の4月まで、幸運にも大地震は無かった。

要点 大災害のときほど、情報が大切なことはない。現在のまま進めば、必ずネパールにも大震災が起こって、多数の犠牲者が出ることになり、二次災害も発生することになるだろう。