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奇妙な食事 峠のカレー
»2011年11月23日
読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~
奇妙な食事 峠のカレー
アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。
当ブログ「読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/idea-marathon/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
奇妙な食事 峠のカレー
食事の前には、昼食、夕食に関わらず、絶対に読まないでください!
と、言ってもよむだろうなあ...。
カトマンドゥには、すごくたくさん日本食レストランがある。
もちろんどのレストランにも日本人がいるわけではない。日本風の食事を出してくれるレストランまで含めると、カトマンドゥだけでも、インド全体の日本レストランの数よりも多い。そして、値段も比較的安い店が多い。
駐在していた私も、頻繁に日本食レストランで食事をしていた。同じ店の中には、バックパッカーの若い男女が集まっていることもある。
隣の席の女性二人も、バックパッカーだ。インドに向かうことを、ちらっと小耳に挟んだ。
「あなた方は、これからインドに行くのですか」
「そうです」
「バスで行くのですか」
「明日、出発します。ニューデリーまでバスです。2日か、3日掛かるのですが、出発時間しか聞いていません」と笑っている。
「旅行中の食べ物や飲み物は準備しましたか」
「ミネラルウォーターはたっぷりと準備していますが、食べ物は途中で食べますが。料理して、加熱してあるものなら、大丈夫でしょう。どこもカレーですね」
「ああ、それなら、食べ物もたっぷりと持って行きなさい。峠のカレーの話はご存じですか」
「いいえ」
私が、ネパール語を学んでいる時に、ネパールの新聞に出ていた記事を、学びながら訳した話を思い出した。
ネパールからインドに向かうには、飛行機でひとっ飛びか、たった一本の山の中をくねくね通っている道路で、数日掛けて、バスや車で向かうかしか、方法はない。
バスでは、少なくとも一晩、多くて数日、バスに乗りっぱなしという状態だ。もちろん、バスの事故は極めて多く、毎年バスが何台も谷底に落ちて、乗客全員が亡くなる事故が起こっている。交通事故の怖さは、横に置いて、バス旅行の食事のことだ。
バスは、運転手の都合、運転手の疲れ具合、運転手のトイレ休憩、運転手の腹の減り具合で決まるが、夜がどっぷりと暮れた峠に差し掛かると、運転手は一軒のお店に停車する。
「はーい、みなさん、ここで夕食を食べてください。トイレも済ませてください」と、そのお店に入っていく。その店以外には、まわりには全く店が無い。店に入ると、食事のメニューは1種類だけ。カレーだ。運転手は奥のトイレにでも行ったか、姿が見えない。店のテーブルには、お客の数だけ皿が並んで、手を洗った後、右手でカレーを食べ始める。
お腹は空いているし、カレーは辛いし、まわりはどんどん食べているから、皿を空っぽにしていた。カレーの味は複雑で説明しようがない。何かの肉が入っているように見える。羊なのか、豚なのか分からない。インドだから、牛肉ではないだろうが、水牛かもしれない。(インド、ネパールでは、水牛は差別されていて、牛ではない。だから喰われる)
水は置いてあるが、得体のしれない水なので、もちこんだミネラルウォーターを飲む。お勘定は、少し高いように思うが、まわりに店もないことから、独占体なのだ。
トイレを済ませて、バスに戻って、出発。そして、揺られて数時間。お腹がゴロゴロしてくる。隣のお客も、後ろも前も、全員がお腹ごろごろ、とうとう誰かが運転手に緊急停車を頼んで、止まるやいなや、ほとんどのお客が立ち上がった。そして、周りの林の中に、駆け込んだ。バスは、一人くらいがトイレ休憩を頼んでも、チップを払っていなければ止まらない。
そう、集団食中毒だ。軽くてひどい下痢。悪くて赤痢、疫痢。アミーバ赤痢や、サルモネラ菌など、こちらは様々なメニューがそろっている。
ところが運転手だけは、ケロッとしている。
実は、バスと食事をする店とは結託していて、バスの運転手は、自分が決めている店にお客をドバッと連れて行って、そこでお店からマージンを取る。
お客も、まわりにまったく別の店が無いので、逃げようがない。そして、出てくる料理はいつの料理か、どんな肉か、まったく分からないものだ。腐った肉も、カレーの香辛料の香りが強くて、臭さが消えている。カレーは偉大だ。要は完全に初めから人間の食べ物ではなかったのだ。運転手だけは、店の奥で、別の特別の素晴らしい?料理を食べていたのだ。
集団食中毒下痢がバスで起こると、ひどい状態になる。窓から吐き続け、連続トイレ出撃状態となるのが普通だが、これが数十人に起こるのだ。バスがちょっと揺れても、もう止まらない。ほぼ全員が下痢の便をバスの中で漏らすことになり、上下左右に汚物、吐しゃ物、下痢物が飛び散り、走る下痢トイレと化し、運転手は逃げてしまうこともある。これ以上、原稿を書けないほどの悲惨な地獄の状況になる。
運転手だけが、ケロッとしている。こんなバス旅行の記事を訳しながら、
「先生は、バスで旅行されるのですか」
「もちろんです。一度やはり軽い「バス下痢」をして、それ以降は、バス旅行では絶対に食事をしません。多量のビスケットと、果物、ミネラルウォーターを持参して、決して、バスの推薦のレストランでは、食事をしないのです。ただ、バスの運転手にはチップを渡します。途中でのトイレはする必要があるのです。必要時に止まってくれないと、こまります。お店で、包まれたお菓子を買う程度です」
「なるほど。通の旅行者ですね」
この話を聞いた、バックパッカーの顔は引き攣っていたが、
「助かりました」と、笑いながら一言。
食事の前には、昼食、夕食に関わらず、絶対に読まないでください!
と、言ってもよむだろうなあ...。
カトマンドゥには、すごくたくさん日本食レストランがある。
もちろんどのレストランにも日本人がいるわけではない。日本風の食事を出してくれるレストランまで含めると、カトマンドゥだけでも、インド全体の日本レストランの数よりも多い。そして、値段も比較的安い店が多い。
駐在していた私も、頻繁に日本食レストランで食事をしていた。同じ店の中には、バックパッカーの若い男女が集まっていることもある。
隣の席の女性二人も、バックパッカーだ。インドに向かうことを、ちらっと小耳に挟んだ。
「あなた方は、これからインドに行くのですか」
「そうです」
「バスで行くのですか」
「明日、出発します。ニューデリーまでバスです。2日か、3日掛かるのですが、出発時間しか聞いていません」と笑っている。
「旅行中の食べ物や飲み物は準備しましたか」
「ミネラルウォーターはたっぷりと準備していますが、食べ物は途中で食べますが。料理して、加熱してあるものなら、大丈夫でしょう。どこもカレーですね」
「ああ、それなら、食べ物もたっぷりと持って行きなさい。峠のカレーの話はご存じですか」
「いいえ」
私が、ネパール語を学んでいる時に、ネパールの新聞に出ていた記事を、学びながら訳した話を思い出した。
ネパールからインドに向かうには、飛行機でひとっ飛びか、たった一本の山の中をくねくね通っている道路で、数日掛けて、バスや車で向かうかしか、方法はない。
バスでは、少なくとも一晩、多くて数日、バスに乗りっぱなしという状態だ。もちろん、バスの事故は極めて多く、毎年バスが何台も谷底に落ちて、乗客全員が亡くなる事故が起こっている。交通事故の怖さは、横に置いて、バス旅行の食事のことだ。
バスは、運転手の都合、運転手の疲れ具合、運転手のトイレ休憩、運転手の腹の減り具合で決まるが、夜がどっぷりと暮れた峠に差し掛かると、運転手は一軒のお店に停車する。
「はーい、みなさん、ここで夕食を食べてください。トイレも済ませてください」と、そのお店に入っていく。その店以外には、まわりには全く店が無い。店に入ると、食事のメニューは1種類だけ。カレーだ。運転手は奥のトイレにでも行ったか、姿が見えない。店のテーブルには、お客の数だけ皿が並んで、手を洗った後、右手でカレーを食べ始める。
お腹は空いているし、カレーは辛いし、まわりはどんどん食べているから、皿を空っぽにしていた。カレーの味は複雑で説明しようがない。何かの肉が入っているように見える。羊なのか、豚なのか分からない。インドだから、牛肉ではないだろうが、水牛かもしれない。(インド、ネパールでは、水牛は差別されていて、牛ではない。だから喰われる)
水は置いてあるが、得体のしれない水なので、もちこんだミネラルウォーターを飲む。お勘定は、少し高いように思うが、まわりに店もないことから、独占体なのだ。
トイレを済ませて、バスに戻って、出発。そして、揺られて数時間。お腹がゴロゴロしてくる。隣のお客も、後ろも前も、全員がお腹ごろごろ、とうとう誰かが運転手に緊急停車を頼んで、止まるやいなや、ほとんどのお客が立ち上がった。そして、周りの林の中に、駆け込んだ。バスは、一人くらいがトイレ休憩を頼んでも、チップを払っていなければ止まらない。
そう、集団食中毒だ。軽くてひどい下痢。悪くて赤痢、疫痢。アミーバ赤痢や、サルモネラ菌など、こちらは様々なメニューがそろっている。
ところが運転手だけは、ケロッとしている。
実は、バスと食事をする店とは結託していて、バスの運転手は、自分が決めている店にお客をドバッと連れて行って、そこでお店からマージンを取る。
お客も、まわりにまったく別の店が無いので、逃げようがない。そして、出てくる料理はいつの料理か、どんな肉か、まったく分からないものだ。腐った肉も、カレーの香辛料の香りが強くて、臭さが消えている。カレーは偉大だ。要は完全に初めから人間の食べ物ではなかったのだ。運転手だけは、店の奥で、別の特別の素晴らしい?料理を食べていたのだ。
集団食中毒下痢がバスで起こると、ひどい状態になる。窓から吐き続け、連続トイレ出撃状態となるのが普通だが、これが数十人に起こるのだ。バスがちょっと揺れても、もう止まらない。ほぼ全員が下痢の便をバスの中で漏らすことになり、上下左右に汚物、吐しゃ物、下痢物が飛び散り、走る下痢トイレと化し、運転手は逃げてしまうこともある。これ以上、原稿を書けないほどの悲惨な地獄の状況になる。
運転手だけが、ケロッとしている。こんなバス旅行の記事を訳しながら、
「先生は、バスで旅行されるのですか」
「もちろんです。一度やはり軽い「バス下痢」をして、それ以降は、バス旅行では絶対に食事をしません。多量のビスケットと、果物、ミネラルウォーターを持参して、決して、バスの推薦のレストランでは、食事をしないのです。ただ、バスの運転手にはチップを渡します。途中でのトイレはする必要があるのです。必要時に止まってくれないと、こまります。お店で、包まれたお菓子を買う程度です」
「なるほど。通の旅行者ですね」
この話を聞いた、バックパッカーの顔は引き攣っていたが、
「助かりました」と、笑いながら一言。