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海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その33  水中の地獄と天国

海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その33  水中の地獄と天国

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その33 水中の地獄と天国

 私がダイビングの簡単な資格を取ったのは、1986年。
 以来、潜った経験は6度。数年に1度ずつダイビングをしてきた。だからいつまでも素人ダイビングの域を出なかった。
 最後に潜ったのは、モルディブだった。海の楽園モルディブへ行って、ダイビングをするのは、夢の一つだった。
 夫婦で滞在したのは、中のクラスのリゾートホテルで、遠浅の海岸に建てられたバンガローに泊まり、ダイビングツアーに参加した。ボートから飛び込むダイビングだった。ホテルに付属のダイビングクラブには、日本人の女性のインストラクターがいた。長い髪の毛の、すらりとした美人だった。

 彼女が私を含んだ3名のお客をダイビングツアーに案内する。私が一番(はるかに)年寄りだ。小さなダイビング用のボートで島を出て、別の島に向かった。その島の裏側で、ダイビングが始まった。浮力を調整するジャケット(BCD)から空気を抜いて、自力で潜って、海底に着いた。海底で集合した私たちはインストラクターの指導で移動を始めた。巨大なナポレオンフィッシュが影絵のように見られた。

 どれくらい進んだか忘れたが、ふっと気が付くと、私は一番後ろで、数メートルほど遅れてしまっていた。海底にかなり強い反対向けの流れがあって、それに逆らって進むのが難しかった。
 それでもチームに近づこうと懸命になっていた。チームとの距離はますます開いていく。水中の距離感は地上と異なるかもしれない。私は焦りを感じた。それと、私が感じている海流の流れが、更に早くなっている。普通に足をバタバタさせた位では、前に進まないほど強い逆の流れだ。逆に流され始めている。
(こりゃ、いけない)と私は、海底の岩にすがりついた。

左手で岩に触れると、体は海流で鯉のぼり状態となるほど、流れは激しくなった。
 私は恐怖を感じた。そのとき初めて、チームが止まって、私の来るのを待っているのが見えた。
(あそこまでいかなければ)と、私は海底の岩から、岩に、手で、ロッククライミングのように手づたいで、一歩、一歩進み始めた。


(落ち着け)と、ゆっくりと一つの岩ずつ前進して、チームに接近していった。ようやく女性インストラクターから2メートルのところまで、近づき、彼女の水中メガネ越しに笑顔が見えた。
 彼女は、私に大丈夫?とジェスチャー、私は大丈夫と合図。いつも通り、彼女は自分の体の前のボンベの空気圧計を指さしたので、私は自分の気圧計をチェックした。

気圧がゼロだった

見間違えたかと、再度確認、たしかにゼロになっていた。エエッ!こりゃいかん。


私は気圧計を、インストラクターに向けた。彼女も仰天した。その時だった、突然、ぐっと空気が吸えなくなった。本当に空気が切れてしまったのだった。

 私はパニック寸前だった。インストラクターの女性が、私のところに飛んできた。そして、私に、彼女のボンベから着いている2つ目のマウスピースを私に渡して、私は空気を取り戻した。


 

 その後、彼女は、他の2人に、その場所にとどまるように指示をして、私を抱き上げ、上昇を始めた。
 深い海底から、一気に海上まで上昇できない。途中で2度か3度、中性浮力で停止する。私は彼女に赤ちゃんのように抱かれていた。結婚式で女性が男性を担いで、階段を下りてくるような妙な感じだったが、恐怖はまったくなくって、極楽の雰囲気で、彼女の長い髪の毛が私に絡んでくるのも、心地良かった。人魚姫と交際していたら、こんな感じだろう。

 中年の終わり、高齢の入り口が見えている私が彼女にしがみつき、彼女は、お父さんを担いでいるような気分だったろう。
 水面に出たら、浮き(BCD)に口からも空気を入れて、彼女はボートに合図して、ボートの接近を確認した上で、もう一度、水中に戻っていった。
 最初にチェックしていたから、はじめからエアーが少なかったとは、思えない。そうなると、あの早い海底の流れで、私が思わず、普通よりもはるかにたくさんエアーを吸ってしまっていたということだろう。
 海底のエア切れ対策では、インストラクターの資格試験で、練習をしているおかげで、その対策どおりに、彼女は行動した。そして、私は一瞬の地獄と天国を見た。

  そうタイトルのように、地獄を見たあとで天国を見たから良かったのだ。逆だったら、インストラクターが、あのエア切れ寸前で、空気圧のチェックを指示しなかったら、今日、このシリーズのブログを書いていることはなかったかもしれない。


 海外でのダイブで、2度ほど、浮上してみたら、えらくボートから離れたところにいて、ボートがなかなか気が付いてくれないことや、海流があり、懸命に泳がないと、どんどん流されるという恐怖を感じたことが2度あった。最終的には、私が泳ぎ戻ったか、ボートが気が付いたことで、問題はなかった。
 いつも、海上に戻った後の、ボートへの合図をもっと簡単にする工夫のアイデアをたくさんノートに書いている。

ポイント 

(1) ダイビングの資格を持たないで、海外でやってみようとすることは、絶対にやめた方がよい。

(2)初心者でも回れるコースかどうかを確かめること。

(3)特に海流に注意をすること。晴れた日なら手鏡のようなもので、ボートに合図することも知恵。

(3)ダイビングでは、バディ(もう一人のパートナー)と二人で行動する。今回の場合でも、私一人が長く遅れる前に、チームが私を待っているべきだった。


アイデアマラソン一口メモ

現在、全国の6つの幼稚園と2つの保育園の年長組の園児約600人が、プレ・アイデアマラソンとして、毎日(夏休みを含めて)絵を描いている。みんな絵を描くのが大好き。一つの絵に掛ける時間は約20分程度。開始後数ヵ月後のアンケートで、ご両親が子どもたちの変化で一番驚いたのは、子どもたちが絵が上手になったのと、絵を描くのに子どもたちが集中している姿だった。すなわち集中力を見せているということだった。

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最新刊のアイデアマラソンの本
「仕事ができる人のノート術」(東洋経済新報社)
一読すればあなたも、毎日発想を残すことができる。それがあなたの財産だ。