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結局クラウドって何?(2)クラウドの本質解説はたった1行。それが魅力。

結局クラウドって何?(2)クラウドの本質解説はたった1行。それが魅力。

生内 洋平

EGGPLANT楽団主催 株式会社デザインバンク代表 & アート・ディレクター 株式会社アニー・デザインオフィス アートディレクター ジャンルの垣根なく、仕事活動中。二娘のパパ。音楽は家族。デザイン・アート人生の相棒。創り続ける目的は自分と関連あまたの豊かさ創りです。

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-- クラウドの正体は、たった一言で語れる。

昨年は様々な切り口でクラウドを解説する文章が氾濫していたが、どれも間違っていないし、すばらしく的を得ているものも幾つかあった。
その多くがクラウドの仕組みを的確に説明し、iTunesやGoogleAppsなどの大規模な実例を挙げてその将来性を示唆するものだった。
ただコンシューマーにとっての「クラウド」とはiCloudがどうとか、GoogleAppsがなんだとか言う大げさな話ではない。
大企業が雲の上でどんなサービス基盤を建てようと、いちコンシューマにとってはどうでもいい話なのだ。

コンシューマの全ては
「このボタンを押したら何が起きるか?それは面白いのか?」
である。

そしてクラウドとは
「何時どこからでも効率よく安全にアクセスできるサーバにデータを保存する事ができるプラットフォーム」
である。
このシリーズを読む上で、クラウドそのものの正体はこれ以上でも以下でもない事を忘れないでいただきたい。

例えばこれに企業のサービスを例にとって味付けを行った情報を見ると、クラウドの印象は如何様にも変化する。
しかしクラウドの本質はそこに構築されたサービスとセットでは認識し得ない。
一見クラウドそのものを象徴しているかのように見えるDropboxも、いわばクラウドプラットフォームに構築された一つのサービスに過ぎない。
あまりにも古くからあって、今更聞くと「え?クラウドなの?」と聞かれそうなGmailも、クラウドプラットフォーム上のサービスである。
GmailもDropboxも、クラウドプラットフォームにデータを保存している。
それをGmailでればメール、Dropboxであればファイルの形式にして利用者に届けて(表示して)いるのであって、形は違えどプラットフォームの仕組みは同じで済むのだ。
そういったサーバ資源はIT業界の長い歴史の上で、ただ唯一の例外、Emailを除いては長い期間、ホームページやオンラインシステムを運営している企業や個人だけのものだった。
サーバ資源そのものは規格やアプリケーションも乱立しているし、専門的な知識がなければそこへのサービスの構築はおろか、構築されたサービスでさえコンシューマが不用意に触れるような代物ではなかったのだ。
しかしそういったサーバ資源がクラウド化され、企業間でのサービスの構築方法も(W3Cなどの鋭意的な努力もあって)規格化され、「サーバーの上にサービスを提供する」という技術がこなれてきた昨今、様々構築されたクラウド上のサービスを、

「個人レベルで日常的に、あなたが好きなものを選択して使う事が出来ますよ。しかも、今までとは比べ物にならないくらい簡単に。」

というのが、「クラウド時代の到来」であるというわけだ。
クラウドとは何者か?が何となく僕らデジタル物好きの間でぼやけている理由は、クラウドはサービスではなく、そういったかなり大多数の人が、その気になれば気軽に使えるサービスの基盤となるものだからだ。

そして、そういった状況を支えるサーバ技術自体の進歩は10年前から比べ物にならないくらい進歩している。
誰もが気軽に使えるという状況を創り出す為には、誰もが「安心」できる存在でなくてはならない。それを創り出す為には
・思い立った時にサッと使える安定性が必要だ
・気軽にデータを置けるセキュリティも必要だ
・いちいち消失を心配しなくて済む保全性も不可欠だ
・「耐えられないくらい重い(遅い)」という状況だけは避けなければならない。
技術的な話は長くなるのでこのシリーズでは割愛するが、上記をクリアし、「安心できるレベル」でサーバの運用性が確保できなければクラウドの意味は全くない。
IT業界は、多少のトラブルはあるにせよ、顧客のニーズと兼ね合って最大限開発努力を続けて行けば、上記のクオリティを顧客に提供し続けることができると判断し、クラウド時代の到来を告げたのだ。

「携帯使ってる」と「クラウド使ってる」は同列ではない。
「ネット使ってる」と「クラウド使ってる」もまた同列ではない。

そもそも「クラウド」はコンシューマが直接的に「使う」ものではない。

コンシューマが使うのは「クラウド上に構築されたサービス」であり、それらサービスを利用する上でクラウドそのものを意識する必要がない。
もっと言えば、クラウド化した世界を楽しむ上で、クラウドそのものを理解しようとする試みは時間の無駄だ。
それほどにクラウドは懐が広く、実態がつかみにくい。
その実体はただ単に「どこからでもアクセスできるサーバにデータを保存する事ができる」だけのどうでもいいサービス基盤(プラットフォーム)だし、中途半端に正体を知ったところで何の面白味もない。
そういう意味では空気と同じだ。
空気の成分で一番の割合を占めるのが窒素である事を知っても、だから何?である。
しかし助燃剤としての酸素の性質を知り、可燃性のガスと共に効率よく送り込んで火を燃やすターボライターやガスコンロの利便性を僕らは知っている。
魅力的な概念の性質を研究し、わかりやすい楽しさを持つサービスや製品に変換してコンシューマ消費者に届けるのは、企業の役目だ。に届けるのは、企業の役目だ。

もしあなたがあくまでデジタル好きな(特に好きでなくとも)いちコンシューマならば、クラウドというよくわからない言葉を最近よく耳にする、という近況を素直に楽しんでほしい。ならば、クラウドというよくわからない言葉を最近よく耳にする、という近況を素直に楽しんでほしい。このシリーズも見て見ぬフリをしてほしいくらいだ。

そしてあなたがクラウドを積極的に活用してサービスを構築しようとしている立場だったなら、業界の人間ではない友人からクラウドについて聞かれた時、こう答えてほしい。

「世界を少しだけ変えるかもしれない存在だ。もし数年内に僕が君にサプライズをプレゼントできるとしたら、それはクラウドに基づいたものかもしれない。」

決して具体的にクラウドの技術基盤を説明し始めてはならない。彼が聞き慣れない難しい言葉でまくしたてなければならない上に、結果は「そんな単純な事なの?」だからだ。
クラウドの魅力を伝えるのは言葉ではない。平易な形に噛み砕かれた魅力的で手軽なサービスを目の当たりにしてはじめて、彼らは驚きを呈してくれる。
それまではコンシューマから見るとあまりにも単純すぎるこのネタ明かしを行ってはならない。

クラウドとはそういう存在なのだ。


次回は昨年耳にしたIT事業者の言葉等も取り上げながら、なぜ今クラウドなのかを考察してみる。


因に、このブログの中では内容にはそれほど触れないが、今回のテーマを書く動機になった書を紹介しておく。
iCloudとクラウドメディアの夜明け
スクリーンショット 2012-01-11 1.44.43.pngこの書は特に昨年進歩が目覚ましく、今年もその流れが引き継がれるであろうエンターテイメントメディアにとってのクラウドに焦点を絞って書かれている。
気になる人は呼んでみるといい。大雑把に要約すると、Appleが運営するiTunes / iCloudとSonyによるQuriocityの企業文化からのクラウドサービスへのアプローチの違いを中心に、Sony PSPサービスからの史上最大規模の顧客情報流出事件や日本における電子書籍業界の状況などを例に、近年のクラウド情勢を解説し、「クラウドメディア」という言葉を使ってベクトルの違うクラウド戦略企業たちが一様に進もうとしているマイルストーンを見据えようと言うものだ。
この書でもいわゆる「僕らにとってのクラウドとはなにか?」をイメージする手段を提供している。