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絵のかけない人に可能性を開く。漫画的な表現方法を可能にする「コミPo!」

絵のかけない人に可能性を開く。漫画的な表現方法を可能にする「コミPo!」

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

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最近、新しいコンテンツ作成ツールが開発されたとしてツイッター上の一部で話題になっていたソフトがある。

絵がかけなくても漫画を書くことが出来るツール、コミックシーケンサー「コミPo!」(読み:こみぽ)だ。

 マンガを描く人にとってこれがいいものであるのかは筆者には分からない。が、ビジネスパーソンにとってこれは面白い道具となりえるのかどうかは非常に興味がある。

 そこで「コミPo!」について調べてみた。このツールをビジネス系のソフトの操作になぞらえて説明するならば、パワーポイントのオートシェープの操作に似ている。要素をパターンから選択、配置、噴出しに文字を打てば、数分で紙面が作れる。

 パワポのような操作感で漫画がかけたなら、自分の頭の中の概念的なものを説明する時に便利そうである。例えば、開発したアプリをリリースする際、使い方をマンガで表現するという選択肢が生れる。従来なら、画面イメージとコンセプトや手順を説明した文章が用いられるが「こういうシーンでこんな風に利用できます。こんな体験を提供するイメージなんです」というのはなかなかテキストだけでは伝わりにくい。漫画的表現はそれを補う一つの手法になる可能性がある。

使い方動画ではとても簡単そうに見えるが実際の操作は難しい--ということはよくある。コミPo!はどうだろう。そこで、今月15日、同製品の開発元である株式会社ウェブテクノロジが行った製品発表会に参加し、ビジネスパーソンのPCスキルなどでつかえるのか、実際に見てきた。報告したい。 

説明会冒頭、動画でソフトの解説が行われた。次のようなことができる。 

  •  コマ割りのパターンからすきなコマ割をえらぶ。コマは手動で変形も可能。
  • 人物、台詞など、各要素はドラック&ドロップ操作で配置する。
  • プリセットされたモデルからキャラクターを設定する。あらかたのポーズパターンがあるので選択するだけ。3Dでデータを持っていてマウス操作で好きなアングルにできる。 
  • 人物の表情や服装もパターンから選択できる。
  • 背景コンテンツから背景を選ぶ、拡大や縮小ができる。「建物内」や「屋外」の背景以外に、「キラキラ」や「雷」のような心象イメージ背景もある。
  • ふき出しを好きな位置において、せりふを入力。フォントやサイズも設定可能。
  • 背景は2Dモデル。(補足:開発段階の動画では3Dであったが、ライトユーザの利用などをかんがみて、2Dの複数アングルパターンでの提供になった、とのこと)
  • 効果線も付けられる。
  • 写真を流し込んで背景に使うこともできる。イラストっぽく加工することも可能。
  • 要素データはカラー。モノクロにもできる。 

次に、企画&プロデューサーの田中圭一氏が、その場で実機操作を行った。

公開されている動画と同じように、さくさくと紙面が出来上がっていく。コマ割りをパターンから選ぶ。次に人物。人物は複数ある。一人のキャラクターに対してもコミカルバージョンがあったりする。人物パターンから人物を選び好きなコマに配置。ドラッグで自由に位置をかえられる。表情やポーズはプリセットされているのでそのままでも人物として成り立っている。更にポーズや表情のパターンから選んでいくと心情や動作をよく表現できる。 

ここまではほとんどパワポの操作感として分かった。やや戸惑いそうなのは、3Dのアングルを変える操作だ。パワポでいえば、オートシェープの「図形の回転」に似た操作を行う。 
人物の中央あたりに出現するポインターをつかむと、前後傾、左右回転、をできる模様。グーグルストリートビューでカメラの向きを上下左右にぐりぐりと動かす操作に似ているように見え、慣れればすぐにできそうである。 

その後、会場の中から実機で操作をしてみたい方にやってもらいましょう、ということで実際に一人の方が操作を行ったところ、どんどん操作をすすめて、数分で一つのカットが出来上がった。人物の表情や向きはプリセットされたものでよければ、オートシェープを置くだけの操作と変わりない簡単さ。パターンを選ぶためのタブもビジュアル的にできていて、操作した方は背景の選択タブを直感的に探し出せていたように見えた。 

パワーポイントに慣れている人ならば、多分、数分で操作に慣れるだろう。ここまでで、スキル的には普通のPCスキルで使えることが分かった。 


次に気になるのは、価格、ソフトを動かすマシンスペック、利用上の制限だ。これについては、とても魅力的な設定であった。 

価格は、パッケージ版9,700円(税込)アマゾンにて販売。ダウンロード版6,700円(税込)Vectorにて販売。服の追加データや、今後追加される新しいキャラクターのデータは有料(予価それぞれ970円、1970円)。 

利用環境は、2006年以降発売のPCを想定。OSはWindows XP/Vista/7、より詳しいスペックは公式サイト http://www.comipo.com/features/features11.html にある。  

利用上の制限はとても少なく使いやすい。商業利用がOKである。会社のWEBサイト、チラシ、プレゼンの中に使うなどは全く自由とのこと。個人のブログや小説の挿絵として使うなどもOKとのこと。会場からはプロの漫画家による商業誌への掲載に使用してもよいか?という主旨の質問があり、それに対してもOKとのこと。目安としては素材集と同じ扱いと考えると分かりやすい。より詳しくは公式サイトを http://www.comipo.com/business/index.html 


物事には二面線がある。楽しく手軽に自由に使えそうなこのツール、 ビジネスパーソンにとって、ネックになりそうなものは何があるだろうか。想定としては以下の3つがあげられそうだ。

表現の幅: 

ビジネスでなにかを表現をしようとしたときにデータの限界もある。今回のソフトではデータを「学園もの」に限っている。漫画的表現を用いて説明したいものの内容によっては、足りないかもしれない。 この点はある程度仕方が無いだろう。世の中の全てのテーマを扱おうとするとパターンの要素数は膨大になるがそれは実現性が低い。今回は「学園もの」に限定することで、ソフトの具現化に成功している。なお次に拡張されるかもしれないデータとしては「ファンタジー」かもしれない。ビジネスパーソンの描きたいものをカバーするような拡張がなされるかわ全く分からない。 

表現のテイスト: 

絵柄がかわいい。かわいすぎて、プレゼンテーションでは使うには慎重さが必要だろう。(企業が製品説明マニュアルなどに漫画的表現を使う場合、絵柄はかなり素朴なことが多い。) 

潜在的なリスク: 

また、利用上の規約が非常に自由であるがゆえ、他のユーザにより社会通念に反する作品が作成される可能性もなくはない。そうした使用が出た場合、同じキャラクターを使うことにリスクに感じる企業もあるだろう。(しかし、逆にとてもよい作品が展開された場合、その絵柄をつかって自社の商品の取扱説明書などを作ることが低コストでできることは大きくもある。) 

上に挙げた3つについては利用者側が判断しながら利用範囲を見定めて使うことになるだろう。そうしたことを総合的に考慮しても、ある種のビジネスパーソンには「コミPo!」はとても面白い道具となりそうだ。 


なお11月上旬から、500名の先行体験版が提供される。応募は公式サイト(  http://www.comipo.com/evaluate/index.html )より。応募多数の場合は抽選とのこと。また、「四コママンガ」をかける「コミPo!プチ」という無料WEBサービスも展開していく予定であるとのこと。

コミPo!は、表現の幅を広げてくれる面白い道具となりえるかもしれない。筆者も先行体験版がうまく入手できたら「文字ばっかりの説明資料」を「漫画的に表現するとどういう感じになるのか」試してみたい。 

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 株式会社ウェブテクノロジ http://www.webtech.co.jp/company/index.html 
 コミックシーケンサー「コミPo!」 http://www.comipo.com/