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e-TAXは、ゆっくり調べたい派にも

e-TAXは、ゆっくり調べたい派にも

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

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確定申告のシーズンです。これが来ると、「あぁ、、、創ることだけに専念させてくれないかなぁ・・・」と声が、事業主のクリエータの方からよく聞こえてきます。

私は、創業初年度の確定申告は、知らないことだらけで、ひどく落ち込んで「もう、商売向いてないな、一人でやっていくの無理じゃない?」的な心が後ろ向きな準備時間を過ごしました。今思えば、やる気と誠意と長時間労働で、とにかく創業一年目を乗り切ることに精一杯で、帳簿をつけることを知らなかった初年度(今思えばひどいですが)は、白色の申告をするだけでも、それはえらいストレスでした。なにせ、一年間の取引をさかのぼって膨大な領収証や案件ファイルから入金引き当てをする、という作業をするので、丸々一週間、その準備に当てました。

その方法は、実はこうやりました。

1.確定申告って、カラフルな升目をもった謎のシートを、税務署の人が言うがままに、わしわし書いていくものだったな、というおぼろな記憶を思い出しました(これは、大学院生時代に収入がわずかにあった年に、行った作業でほとんど覚えておらず)

2.確定申告の書類(B表とか、そんなことを税務署の人が言うけど分からないので、とにかく全部くれ、といってもらってきました)を3回ほど眺めました。必要な項目には何があるのか、分からないながらも書き出してみました。(で、ほとんどわからない。)

3.確定申告の会場に領収書を輪沢さ持っていくとかは、おぞましい煩雑さなのでしたくない。そこで、e-TAXという方法でやってみようと思い、準備を始めました。

4.ICカードリーダ(アマゾンで買う)、住基ネットのICカード(区役所で1時間ぐらいで発行されました。1000円ぐらいかかったかと)を得る方法を実践。そろうまで2日程度。その間も、領収書や請求書を全部そろえて、日付順に並べる作業をしていました。(こういうまめまめしい作業、大っ嫌い!・・・個人の感想です)

5.機材とICカードがそろったので、税務署のWEBサイトへ行き、e-TAXの利用開始の設定をしました。この辺は長くPCを使ってきた人ならだいたい、ガイドに従ってやっていけばできる作業で、割と設定していく作業は面白くできました。

6.e-TAXで、白色申告をやろう、ということで、「青?白?」の選択は、迷わず白に。白色申告の画面に入り、入力を始めました。売り上げが緻密にデータがそろっていて、経費が、勘定科目毎に分けてあると、結構、進めます。(でも実は、勘定科目というのが、あることを知らずに、「これは、旅費。これは開発用資料。これは書籍代。」と勝手に分けていたのですが、ある程度、会計の中には皆が共通して使っている仕訳の項目がある、というのを後から知って、e-TAXの画面を半日ひらいたままにして、仕訳直していました。)

7.いくら売り上げて、いくら経費で使ったのか、を書いていくのでなんとか行くものの、「減価償却ってなんやねん!(←人は起こると急に関西弁で文句言いたくなる)」とか「源泉徴収10%って、どこで入力するさ、、、」という不安を抱えたまま、一つずつ、分からないたびに、e-TAXの画面を2~3時間ほったらかして、「初心者のための会計入門」みたいな本を読み始めたり、ネットで言葉の意味を調べたりしていきました。

8.こんな調子でやっていくと、何日にもまたがるので、こまめにセーブします。正しくは、データを保存します。あちこちの画面で、データ保存ができます。長いRPGゲームのような感じで、あちこちにセーブポイントがあるので、疲れたら保存して、やめられます。

ここで、タイトルの言葉に戻ります。ゆっくり調べて納得してから先に進みたい性格の人には、e-TAXはいいですね。

こんなやり方、帳簿を学んでから創業した人にとっては、ひどくロスの大きいやり方で笑われてしまう方法かもしれませんが、とにかく創業して一年間、なんとか食っていって、さあ、2月になってから「やばい、こればっかりは、仕事を治めて金をもらって食っていけば何とかなる、っていうスタイルでは、どもならん」といって、焦っている人には、一つの方法かもしれません。

ちなみに当時、私は、その作業のほとんどを、マインドマップで書き出してみる、というこれまた時間のかかる、自分納得の方法をとりました。これは翌年以降に、e-TAXをする時にかなり思い出すことを助けてくれました。(ただ、2年目は、青色にしたので操作内容が一緒ではなかったのですが。)

ちなみ、初めてe-TAXをやった時に、意外なところに作業ボリュームが多くて、うんざりしたのが、控除の所でした。あれやこれやと、控除できるので、所得税額を抑えられるので本来ありがたいですが、生命保険?国民年金?医療費?住宅ローン(特にこれは入力情報が多い)?などなど、該当する控除額をすべて入れ始めると結構な大変さです。それができてようやく、納税額が出ます。この部分で、家中をばたばたと走り回って、「そういえば、なんか銀行から来てたな、あのハガキってどこだ?」みたいなことをしました。

この作業も、もし会場に行って「あの書類がない。この書類はこれだっけ?」と人ごみの中の狭い机でやることを考えると(私のような性格の人には)自宅でお茶を飲みながらじっくりやれるe-TAXは、いいな、と思いました。

アイデア発想法のスキルや創造技法をどんなにもってしても、確定申告をアイデアの力だけで乗り切ることはやっぱりできなくて、そういう私が一年目に体験したことを、書いてみました。

ただ、ここに書いたことは個人の感想です。実際、当時の私も、どうしてもネットと本だけでは分からないところが少しありました。友人に聞いたりして解決しましたが、確定申告会場で係りの人に聞いたら早かったのかもしれません。


蛇足:

確定申告を毎年やりながら思ったのですが、一年目の確定申告のストレスは(私のようなタイプには)非常に強いものがあります。二年目からは結構、全体像が分かっているので一日もあれば終わるので(帳簿も付け始めますし)、何とか今後の創業者のために、一年目の確定申告が楽しくのりきれる方法がないだろか、と考えていました。

例えば、確定申告の作業を、テーブルゲームみたいな感じで、やれないかなぁと。

ゴミ拾いだって、それを競う要素を入れて、ゲームに仕立てることができるように、確定申告をなんとなくやれてしまうような、楽しい要素を盛り込んだ何かができないかなぁと、毎年2月に思うのです。本物の確定申告をゲームでやれてしまう、というのはハードルがいかにも高いですが、作業の全体像をゲームを通じてなんとなく把握できるような物なら、可能性があるような気もします。(それが便利かどうかは、わかりませんが。)