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サイエンス型産業という概念があるように「アイデア型産業」も。【中編】

サイエンス型産業という概念があるように「アイデア型産業」も。【中編】

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

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「アイデアと産業の距離が近いものには、何があるだろうか。」

【前編】では、大学発ベンチャー創出におけるサイエンス型産業の話をステップにしてアイデア型産業もあるとしたらそれは何だろう、という問題を提起しました。それについて、ツイッターなどでも情報を頂き、筆者自体も連休中、いろいろ考えてみて見ました。

今晩の記事は、【中編】としたのは、結論的な話ではなく、検討のための取り掛かりを列挙することをしてみたいとおもい、筆をとりました。

まず、「アイデア」と「事業」との距離を長くしてしまう要因を列挙してみます。基本的には、「装置型産業」「社会システム、インフラとの連携が必要な産業」的要素を増すから抽出していますが、それ以外も含みます。(項目は、創造技法の一つ、6観点リストで項目だてて、考えて見ます。)


「アイデア」と「事業」との距離を長くしてしまう要因
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【人】
・製造やサービスの提供にたくさんの人手がいる
【物】
・大量の原材料がいる
・大きな設備がいる
・理論的には可能でも、高度な製造技術の開発が必要
【プロセス】
・消費者へ届けるために大規模なビジネスシステムの独自構築が必要
【環境】
・非常に大きな空間を必要とする
・非常に長い時間を必要とする
・社会システム側に変わってもらうことを必要とする
【意味・価値】
・多額の資金がいる
・難しい認可が要る
・それを渇望するような潜在ユーザが少ない
【五感で感じるもの】
・一人一品の調整を必要とする


こんな点が上げられます。逆に、距離を短くする要因も挙げて見ます。


「アイデア」と「事業」との距離を短くしてくれる要因
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【人】
・わずかな人数(できれば定時後や休日のマンパワーだけ)で実現できる
・開発に手でかかっても、物品/サービスの提供、集金業務が自動もしくは外注できる
・社会・技術の変化に伴い増加の途をたどる属性の人々が、潜在市場となる
【物】
・加工委託で製造できる単純な構造
・あまり在庫を持たずにすむ
・かさばらない、重くない
・故障しにくい、もしくは、故障が無い
・時に、作品、とよばれたり、アートに近い要素を持つもの
・作り手側はコピーをゼロ円に近く複製でき、提供できる「無形物」
・寡占的されているコントロール困難な素材を使っていない
【プロセス】
・非常に安い送料で出荷できる
・手にしたユーザがほとんどマニュアルを見ずに利用できる(電話窓口などが要らない)
・すぐ届けられる
・電子データで提供できる
【環境】
・小さい空間に蓄積できる
・長い時間の保存による劣化が無い
・短い時間で製造できる
・ファン型のつながり
【意味・価値】
・少量作るのも、大量に作るのも、コストがあまり変わらない
・肉体的な消費よりも、感性的な消費や効率的体験、感動的な要素に、お金が払われるウエイトが大きい
【五感で感じるもの】
・従来の製品とは、異なる感覚器への刺激を持つ
・従来の製品より、多くの感覚器への刺激をもつ
・質感、テイスト、と呼ばれる特徴を持つ


これらの列挙が完璧ではないにしても、アイデア型産業というものを、目を凝らしてみるとき、一定の示唆を与えるものであると、筆者は考えています。

アイデア型産業の要素をたくさん持つものの例としてとしては
・アプリを作る
・ITサービスを作る、
・漫画を描く
・小説を書く
・歌を作る、本を書く、
・教育コンテンツを作る、
などが、まずはあげられますが、それに限りません。他の観点を得るためにツイッターでコメントいただいたものから、お二人ほど、引用させていただきます。

「@readmaster9」さん
・僕の捉え方では、アイデア型産業は、地域活性化というような、地域・ローカル・その土地にあるかなと。
・企画は関わる人がハッピーであるというのが真実であるという前提だと、地域の場で企画力あふれる=アイデアあふれるものが、どんどん出てくるのではないかという読みです。

「@jellyfishmoon」さん
・アイデア型産業が出現する場所はQTのQTの連鎖の中であろう


readmaster9さんの地域活性化と企画力の文脈の中に、「アイデア型産業」を見出すのは面白いアプローチだと思いました。筆者も実は、NPOの理事を名ばかり理事ですが引き受けております(仙台のファイブブリッジ、という組織です)が、地域活性化を掲げてさまざまなボランティアに近い活動や、実費+アルファ程度のマイクロビジネスが立ち上がるのをみて、その中には、地域社会ニーズから素直に発想したものも多く、可能性の一つとして、たしかに「ありかな」と思います。ある種の人々の営みは、資本主義から志本主義へと進むように感じます。継続性とインパクトの強い、ソーシャルベンチャーが生まれてくる可能性があります。その時「アイデア型産業」へも、大きな示唆をくれると筆者は予想しています。

jellyfishmoonさんの「QTのQTの連鎖」は、ツイッターの中を、遠くまで伝播していくようなある種の概念、言葉、というものに「アイデア型産業」を見出す面白いアプローチだと思いました。商品やサービスの中に盛り込まれているアイデアに対して、ユーザは、とても直感的に「あ、面白い」「これ、結構自分のとこに使えそう」と判断しています。店頭で手に取る製品についてもそういうセレクションを最初にしています。より人々が「手に取る」要素が多いものほど、最初の伸びがいい傾向がありますが、それらの要素を(しかも、現在の瞬間風速的なそれを)、伸びるQTの中に見出す。そこから示唆を受けて作った製品やサービスには、ある確率で、ヒットをするものがあるかもしれない。jellyfishmoonさんのコメントから、筆者はそう考えました。

※QT=引用されるつぶやき。ツイッターにはQT,RTがありますが、jellyfishmoonさんの文脈からして、ここでのQTは、RT,QTの区別無く、「多数引用されるもの」をさしていると、解釈するべきでしょう。


・・・

さらに書きたいところですが、今夜も時間となってしまいました。

本当はこの後、ジェフリーAティモンズの文献から、アイデアと起業機会のくだりを引用して、一定の示唆を見出してみたいと思っておりました。それは【後編】、もしくは、また別の記事として書きたいと思います。


・・・

余談:

ちなみに、余談で閉めてしまいますが、その、ジェフリーAティモンズの文献、買えば8000円もする高額の本ですが、筆者はお金が乏しい時代に、無理して手に入れた本です。筆者は社会人学生として、大学院で経営戦略論の講義を受講していたとき、尊敬する先生にめぐり合いました。彼が「実学の上でも、研究の資料としてもとても役に立つ本」として紹介してくれました。同書には「ベンチャー起業機会評価選択ガイド」などもあり、ビジネスプランを作るためにも、有効なツールがたくさんありました。ビジネス書に負けないほど実践的で、かつ、深く細かく書いてあります。現代の激しい出版競争で「すぐ」「簡単」が求められている本では、リーチが足りない!という方は、ぜひ一度手にとって見てください。とてもよい本です。