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創造的退行(どうしても、アイデアが出ないときに、思い出してほしいこと)
»2010年5月 7日
力重の「ブレインストーミング考」
創造的退行(どうしても、アイデアが出ないときに、思い出してほしいこと)
アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。
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創造に関するトピックの一つの「創造的退行(※)」という概念があります。今夜はこれについて述べたいと思います。
人間には「創造的思考」と「判断思考」の2つがあります、どちらも大事です。
しかし大人の頭は判断思考が強く効きすぎる傾向があります。「創造思考」と「判断思考」は、新しいものごとをするための「アクセル」と「ブレーキ」のようなものですが、大人になると自然と「ブレーキをいつも軽く踏んでいる」状態になりがちです。生まれたての弱いアイデアが、"門番"によって足止めされている、そんなイメージです。
発想という作業の理想としては、
(1)未成熟でもいいので創造的アイデアをたくさん生成して、(2)それらをくっつけたり発展させたりして、大小さまざまな粒度のアイデアを作り出し、(3)それらを、門番(判断思考)にさばいてもらうのが、良い方法です。「創造的かつ実現性あるアイデア」が効率的に獲得できます。
創造的退行、というのは、いわば、いつでも働いてしまいがちな"門番"に、(1)と(2)の作業の間お休みしてもらう、ようなものです。
この「創造的退行」状態を意図的に作り出す手がかりを、今晩は、述べてみます。筆者が、国内の創造技法の実践者たちとディスカッションして、得てきたものを、整理してみました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━創造的退行というよい創造の思考状態へのもって行きかた締め切りの切迫「うまくいかないかも」とか「あまり面白いアイデアへと展開できないかも」ということを心配して躊躇なんてしていられない!とにかく出さなきゃ間に合わない!━━。そういう切迫感のあるときに、軽い創造的退行状態になる場合があるようです。短時間で答えを出さないといけないとき、人はあまり十分な判断をできない時があることは、だれでも経験がありますが、そういう"短時間で出す"ということを積極的に利用する方法です。睡眠不足でも覚醒しないといけない状況眠い頭は判断力が鈍ります。ある種の条件においては「夜中に筆が進む」という現象がおこったりします。"夜中に書いたものは朝に読み、直すべし"という教えは、夜中の文章作成には判断力の低下傾向があることを指摘したものだと思います。未成熟な文章をたくさん書ける「夜中」を利用するのも一つの方法のようです。(これは人によりかなり違いますが)ほろ酔い居酒屋でブレストしたいなー、という声は結構多いですね。これをよく観察してみると、飲み始めの頃は、創造的なアイデアが結構でることがあります。そのままお酒がすすんでしまえば、だんだん論理的な会話もできなくなり、記憶の保持もしにくくなります。ほろ酔いでキープする技術、というものが肝になりそうです。ほろ酔いの「判断思考がお互い下がって、でも十分に創造的思考は回せる」という状態の効能には、もうすこし光を当ててもよさそうです。リラックスし可能性を作れる関係"ほろ酔い"と似ていますが、お酒がマストではない、ようです。開発合宿とか、ウオーキングブレスト、のような状態がこれにあたります。長時間をワゴン車にのって、雑談的な時間をずっとすごしたり、散歩道をスニーカーで歩きながら、アイデア出ししたり、と いうことには、ケースによっては効果が見られます。追記:5月23日早朝の時間人間の思考は直前までにインプットしたことに強く影響されます。寝ておきたあとは、比較的、仕事上の難しいことからとおざかっており(それでも、ゼロではないしかなり多い人もいるはずですが、それでも仕事中よりは、時間的に遠ざかっており)判断のガードが下がった状態で考え事ができます。ただし、おきてすぐに飛び出さないといけないときには、切迫、という心理環境におかれて創造的思考を発展させることは困難です。まだ、世の中が動き出す前の早朝の時間が望ましいでしょう。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
創造的退行、という概念について、筆者のチームは専門外なので、詳しい論述ができませんが、その根底にある考え方に示唆をうけて、上記の話を展開させてもらいました。より詳しい情報がえら得たら、また紹介したいと思います。
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補足
「創造的退行(※)」の正確な表現について:
『新版・心理学辞典』の中の「創造的思考」の項目に「創造的退行」の記述があります。より詳しく学びたい方はぜひ同書をご覧になってみてください。周辺にもおもしろいトピックがたくさんあります。
補足2
退行とは・・・高度に発達した精神が、以前に経過してきた地点に回帰する現象 (wikipediaより引用)