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【問い】 1つのアイデアに縛られ、他のアイデアを考えようとしても、そのアイデアが忘れられない。アイデアを頭から引き剥がすにはどうすればいいでしょう。
»2012年11月 2日
力重の「ブレインストーミング考」
【問い】 1つのアイデアに縛られ、他のアイデアを考えようとしても、そのアイデアが忘れられない。アイデアを頭から引き剥がすにはどうすればいいでしょう。
アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。
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アイデア創出のワークショップをしたり、ブレストの補助道具を作っています。アイデアプラント 石井力重です。
以前、ある方から、アイデア発想についてご質問をいただきました。
力不足かも知れませんが、私なりに切り口を考えてみます。
【質問】
ひとつのアイデアに縛られてしまう(他のアイデアを考えようとしても、そのアイデアのことが忘れられない)ときに、アイデアを自分の頭からひきはがすコツを知りたいです。
【回答】
この問いも興味深いです。しかも良いアイデアが出せる人はときどきこういう悩みに突き当たります。アイデアがあまりない人は初めに見つけた一つに飛びついたきり、それ以上の疑問もないのですが、アイデア創出の力が強い人だと、「もっと、あるはずなのに、おかしい。なんか、こればっかりが前に出てきて、他のが出てこない」という感覚を感じ取ることができます。
さて、じゃあ、どうすればいいのか。そのまえに、そもそも、それが悪いことなのか。
まず後ろから行きますと、この状態は100%悪い、とは言えないわけです。1つのアイデアを胸に持ってさまざまなものを見て、聞いて、味わっていく行く中で、そのむねに持っている概念にいろんなものを刷りこんでみます。すると、そのコンセプトが発展するような機会が巡ってきます。意識がそのコンセプトをずっと離さないで保持しようとする時は、それに任せてしまうのもいいでしょう。いろんなものをこすり付けてクタクタにしていくなかで、それが擦り切れてしまって、、、ということもあるでしょうし、どんどん吸収して育つことも。アイデアマンは固執するような資質も含みますが、良いアイデア自体が自らを固執させてしがみついてくる、という側面もあるんじゃないだろうかと、いろんな人の創造活動に関する手記文献を精査している中で、感じます、あまりアカデミックな論証はできないことがですが。
さて、今度は「じゃあ、どうすればいいのか」のところ。ずっと一つにしばれてしまう状態を、変えたい、という時に、すべきことは何か。
端的に言うと「アイデアを世の中に生み出してやる」ことがもっとも早い「引き剥がし」方法です。
グレードがあります。余力があるならば、実際に試作品まで作ってみる、あるいは、公道系の物なら試行してみる。逆に最も簡易的な「世の中に出す」方法は、「紙に書く」ことです。書くことで短期記憶の中からの消去は早まります。人間の記憶には、記録したことで安心してメモリーを解放する、ようなところがあります。要らないものを後生大事にかきとめるのか、と言われそうですが、こたえは「はい」と言わざるを得ません。要らないものは、書いて捨てる。別に捨てなくてもいいのですが、書くことで頭の中のメモリーを開放してやる、というのがもっとも効果な忘れ方です。
私は古今東西の創造技法の文献を調べますが、発想法の文献においては「紙に書け」というのは、うるさいほど、繰り返し発想系の考案者たちは言っています。しかし、それがあまりにどこでも目にし過ぎて、馬鹿にしがちなのですが、実はここはとても大事な秘訣があります。
口に出して言う、といのも、非常にラピッドな「外に出す」方法です。ただし、相手が要るので、一人での考案作業には向きません。また、聞いてくれるとしても、相手にそれを受け止める器がないと、否定されてしまいますが、そうなると、人間の感情は認知的なゆがみを引きおこします。つまり、そのアイデアに固執しよう、という。
そうなると引き剥がすどころか、余計に澱みが残るというか、変な感情とともに余計に湧いてくるので、口に出して言う、というアプローチで引きがす時には、黙って聞いてくれる人、根こそぎ引き出してくれるような智者を相手に、やりましょう。
以上です。
どれも仮説的なこと、経験則的なことを多分に含みますので、完全な情報ではないのですが、ほんの少しでも、何か考えるヒントが含まれていれば、幸いです。また、面白い問いがあれば、教えてください。
アイデアプラント
代表 石井力重