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アイデアの技法 速記メモ
»2010年6月30日
力重の「ブレインストーミング考」
アイデアの技法 速記メモ
アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。
当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
速記メモ、という比較的時間的余裕があるときにアイデアの引き出しをたくさん作るための作業をご紹介します。技法というよりもコツ、といった趣です。
『アイデア・スイッチ』について著者が「ノート」で語る
やり方
セミナーや講義に出席し、その会場で話されていることをひたすら追いつく限りのスピードでメモをしていきます。私は昔は手書きでやっていたのですが、キーボードのタイピングのほうが速度で勝るようになったので今はPCをつかって、速記メモを取っています。
なお、言葉を全部メモするのは不可能に近いので、10秒間でおよそ5つの単語(※)をつなげて短文にして文意をメモするようにします。
(※)補足:人間、およそ講演でしゃべるときには10秒間で3文くらいから構成される一連のセリフをしゃべっています。1文は、5W1Hなどを中心に4個前後の単語からなります。単純計算で、3文で12個くらい。そのうち、中心的なものだけに削ぎ、4、5つの単語にして、それをだだだっと列挙する、という形でメモします。すると非常に快速にタイプできます。なお、残念なことに中心的な単語が、聞き取れないことがあります。その時は立ち止まらずに「***」と書いて、即、次へ。重要な単語は大抵、後でも言及されます。
効果
不思議なことに、こうしてメモを書き取っていくと、聞いた内容に別の用途への転用を思いついたり、逆に言えばこんなことがいえるかも、とふと想起するタイミングが必ずやってきます。経験的には、少なくても3度はあります(60分の場合)。それをすかさずメモします。
実践のコツ
速度を落とさないために、思いついたこと・アイデアは、メモを打っているエディターに書き込みます。アイデアを書くために別のソフトをたちあげたりはしません。しかし、そうすると気持ち悪い?そうですね。そこで、聞いたこと、と、自分のアイデア、が、混ざらないようにする工夫がいりますが、その工夫はとても簡単です。
改行して「★、」とうち、アイデアをだっと書き込みます。アイデアの書き込みがおわったら、改行して、速記メモにもどります。これだけです。
★が文頭についていることで、そこは講師がしゃべったこととは違うよ、という自分へのしるしにします。 「聞いたこと」と「考えたこと」が、あとで簡単に区別で来ると、メモ中にアイデアを書くことにためらいがなくなります。人に速記メモを見せるときには、ファイルをコピーした上で、ざっと★の行だけ削ればいいのですから。筆者は、速記メモには、Windowsに付属しているメモ帳ソフトを使います。速記メモには、色もつけないし、下線も引かない、図形も要らないし、余計な補完機能もいりません。早いことだけが重要。速記に最も向いているのは、ノートPCのメモ帳ソフトなんです。(その意味では、ポメラもいいです)
何故、そうなる?
なぜこうすることでアイデアが生まれるのかは、今のところはっきりとは分かりません。ですが、何もメモを取らないで腕組みして聞いているときに比べて思いつくことが何倍も多いようなのです。速記メモを取ることで、頭を非常に早く回転させるので創造性も引き出されるのかもしれません。また普通の聞いた情報は言葉をそのまま覚えるのではなくその話の趣旨を入れていきます。ある程度の抽象化のプロセスをリアルタイムでして行くような感じでしょうか。それが、速記メモではかなり明確に相手の発信した情報を受け取ることになります。以前書きましたがある種、具体性は創造性を高めるのに効果があるようだ、ということに関係するのかもしれません。
副産物、あり
副次的な効果もあります。この速記メモをやりはじめると眠くなりません。眠くなりそうな難しい話でも、話をさかのぼれるので、よく分かるようになります。また疑問に思ったことを、前後の話の間に「メモ」しておけるので、後で質問するときにも、役に立ちます。「~~とおっしゃった部分で、質問なのですが」とはっきり質問したい部分を指定できるので、講師から明確な答えをもらえることが多いです。
・・・
このアイデアの技法は、試すのがは簡単ではないかもしれないですが、せっかく講演を聴くならばこういう副次的な効果も得ながらメモを取ってみるのもなかなか面白いかもしれません。Ustもぼんやり聞くか、ツイートしながら聞くかの2択以外に、「速記メモをとりながら、その30分で、ざくざくアイデアを作っていく」という第3の選択肢もぜひ入れてみてください。人によっては、1度やるだけでも、良い効果が実感できます。
追記
今日は、一つの記念日でした。はじめて出した本が発売1周年、となりました。
拙著『アイデア・スイッチ』は、アイデアを出すときに役立つ手法を、まとめた本です。より活用してもらうための3本の動画があります。どれも徹夜状態で一人で撮影しましたので、死にそうな声と手作り感あふれるの画面になっていますがお許しください。
【!】再生する時は音量にご注意ください。
アイデアを具体化する「6W3Hシート」
「はちのすノート」の作り方
この一年、本のおかげで各地のクリエイティブ・リーダさんたちと情報交換ができました。皆さんからいただくお便りやコメントを励みに、もっと精進したいと思います。
アイデア創出の技法について、学びたいことがまだまだ沢山あります。アイデアにお困りの方にお伝えしたいことが沢山あります。初心を忘れず、人生最後の日まで、道の途上をゆく生き日々を続けたいと思います。