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危ない運転を何とかできないか

危ない運転を何とかできないか

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


高速道路の95%無料化の山形県を昨日と今日、車で走ってきました。通行量増加にともなって、いつもより交通量が増えた一般道でも危ない運転をする車が時折見られました。夏休みに向かって更に増えそうです。危険な運転をする車をつぶさに観察することから、何かのアイデアが得られないか、今日は考えてみます。まずは、つぶさに観察してみました。

高齢運転者標識(黄色と橙の葉っぱ状のマーク)をつけた軽トラが、追い越し車線を走っていた。追い越し車線にしてはやや遅い速度で一定の速度を保って。しだいに前方に大きく車間が空く。軽トラの後ろには、男性一人がのったセダン。彼はじれて走行車線(つまり左)から軽トラを抜く。かなり狭い車間で追い越し車線に戻る。間の悪いことに前方の信号が赤に。セダンは軽トラの前に入ると同時にブレーキを踏む。軽トラは車間がないので危なく接触しそうになりながらブレーキをふむ。

この時点で周囲が異変を察知。

信号でとまった軽トラは、ピッタリとセダンにくっついてとまる。中央によってサイドミラーに大きく写るような位置に。信号が青になり、軽トラは車間を開けずに加速していく。二台は連結したかのようにくっついて追い越し車線で加速減速をつづける。危なそう。そのうちセダンはそのうち曲がってしまった。
 
これで終わったか、と思いきや、もう一幕。
 
軽トラは以前と同じように、追い越し車線をやや遅い一定速度で走る。そして不意に左の車線に入る。車間の狭い所へぎゅっと入ったので後続車二台にぱぱっとブレーキランプがつく。そして、彼は程なく信号で曲がった。

 
この観察から、彼らの発想を推し量り、ヒントを探します。
 
軽トラは、多分自分の走りなれた道を走っていた。追い越し車線はいつもどおりに走っていたとおもわれる。

セダンはその行動を何らかの形で改めてもらいたいと想い、やや狭い距離で強引に前に入ることで「不快である」とシグナルを送った。あるいは単に、じゃまだよ、と思って雑に前に出ただけかもしれない。

その後、急ブレーキを踏まされた軽トラは、危機を回避すると同時に、憤慨した。遺憾の意を運転で表明した。

セダンがいなくなったが軽トラとしてはやり返せていない感じが残りいらつく。他の車にも同じ事をしてうさを晴らしたい。(あるいは単に、いつもどおりに左車線に移っただけかも。他の車はいつもどおりよけてくれるだろうさ、と思ったのかもしれない。)


人間の発想の特性の一つに「短期記憶が活発なうちは観点が固定化される傾向」があります。一つのことに深く考え始めると他の観点を当初持っていてもだんだんそこにはもどれなくなって、フォーカスしたところについてずっと考えていくような思考のクセ、のようなものです。通常なら、運転中、いろんなことを考えたり、音楽を聴いたりして時間を有意義に過ごそうとしますが、先の例では、強い刺激によってそのことにフォーカスし続けていると考えてみるべきかもしれません。

この「受けたいらいらを誰かにぶつけて気が済むまではずっとそれに思考が縛られてしまう」ということは、例えば、満員電車などでも時折見られます。ただ電車の場合は、気を取り直して本を読んだり、窓の外を見たり、目をつぶってすこしボーっとしたりできて、固定化を外せますが、車はそうはいきません。いらいらの元凶である前車を見続けないといけない。自分を縛るその考えはずっと再ローディングされています。その車が前にいる間はずっと。元凶がいなくなって、あとはのこったイライラを誰かにぶつけて冷静になれる、というのが私達一般のドライバーにも広く当てはまる構造だと仮定するならば、うまくイライラを解消してやる手立てを作れないだろうか、と筆者は考えてました。解消する道具やサービスができたら、一定の需要があるでしょうから。
 
未成熟な段階のアイデアですが、7つほど考えてみました。

  1. 室内クラクション:大音量でなります。ただし自車内でだけ。
  2. メッセージボード:『**-**(車番)さん、運転危ないよ』という意思表示を掲げる。
  3. ビデオ装置(優しくされた時の映像が流れる):誰かが道を譲ってくれたときに自動録画される。いらっとした時にボタンを押すとビデオが流れる(ただし、ビデオを運転しながら見ては危険ですが)
  4. 利尿効果の高い飲み物:飲んで自分を猛烈にトレイに行きたくする。トイレを探すことに必死になって限界まで脂汗をかくと、意外と直前まで悩んでいたことがばかばかしいほど忘れられたり。
  5. 匂い袋:悶絶するような匂いがしゅっと出る。なんか怒っているのがばかばかしいほど。でも怒りが逆に増すかも。
  6. 後で怒る帖:やりきれない怒りをひとまずメモする(でも運転中は危ないので停車してメモ)。次にそのナンバーの車にあったら許さん、ぐらいの感じで。書いたらページは破り捨てます。残すとかえって未来の自分をネガティブにするだけですから。ちぎる行為だけでも気が済む人もいるかもしれません。
  7. :事前に子供か恩師に「ひどい悪人みたいな顔になってない?」と書いてもらった鏡を置いておいて、時々覗き込みます。

*実際には、危ない運転を何とかする、といっても、相手の危ない運転にはあまり打ち手がないので、釣られて自分が危ない運転をしてしまわないためのアイデアばかりになりました。相手を御するのはやはり難しい。しいて言えば「2」がやや抑制になるかどうか。長距離トラックのドライバーさんは何か良い工夫しているのかもしれません。機会があれば聞いてみます。

これから、夏の行楽シーズン本番です。家族、恋人、友人の前で、イライラをさらりと処理していつもどおりの自分でいたいもの。なにかちょっとした工夫で楽しい思い出を最大限にしたいものですね。もっと実行しやすいアイデア、面白いアイデアがあればぜひ教えてください。

追記


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