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二〇〇七年一一月二九日。父の生活は大きく変わりました。
毎週二回行っていた大好きなゴルフに行けなくなってしまったのです。
スイングのときに目まいがするのを、父は最近気にしていました。
他にも左手に何かがまとわりついている不愉快な感覚や右足の痺れが出てきてゴルフを楽しめなくなっていました。
念のため病院で検査したところ、下された診断は脳梗塞。
治療は、症状が進まないように血のめぐりを良くする薬を飲み続けることだけ。
言われたとおり薬を飲んだおかげで悪化することはありませんが、症状が良くなることはありません。医者からはゴルフは一生無理だろうと言われました。
それでも父は落ち込むことはありませんでした。
医者が言うことは絶対ではない。
とくに「将来こうなるだろう」という見通しは患者の努力でいくらでも変えられることを、自身が歯科医である父はよく理解していました。
日常生活はできる。ゆっくり歩くこともできる。仕事も休まずできる。実際父は脳梗塞の診断後も一日も休まず診療を行なっています。
私は恵まれた脳梗塞患者だ、と父は常々感謝の言葉を口にしていました。
そして自らの回復力を信じ、近所を散歩することに楽しみを見いだしたのです。
花の写真を撮ったり露店の人と仲良くなったり。前にも増して充実した毎日を送るようになりました。
一方でゴルフ再開の希望も持ち続けていました。少しずつパターの練習や素振りを始めます。
「そろそろゴルフ行きなよ」
私が言うと父はこう言いました。
「必ず行くよ」