そして三年後、ゴルフ仲間に誘われた父はグアムに行くことを決めました。
目まいや痺れは残っています。あいかわらずフルスイングはできません。それでも行って少しクラブを振るだけでも気分転換になるだろう。
そう言って出かけて行きました。

一週間後、まっ黒に日焼けして帰ってきた父は私に会うなりこう言いました。

「おい。スポーンと抜けたぞ！」

あまり感情を表に出さない父にしては珍しいくらい興奮しています。

グアムでゴルフをしていたら、頭の中で何かがスポーン！  と抜けた感じがして、目まい、不愉快な感覚、痺れの全てがいっぺんに取れたというのです。
気心の知れた友達と暖かい所で体を動かして遊ぶのが、いい影響を与えたのでしょうか。

脳梗塞で詰まっていた血の固まりが自然に取れる可能性は限りなく低いとのこと。
医者に話したところ、やはり不思議がっていたそうです。
薬の量も半分以下に減りました。

それからはフルスイングもできるようになり、前ほどのペースではありませんが、またゴルフに行くようになりました。
その頭の何かが抜けた感覚を決して忘れないと父は言っています。

これが父に起こった、ささやかな奇跡です。
以来、私は奇跡の回復に興味を持つようになりました。調べると世界中にたくさんの奇跡があることが分かりました。

飛行機事故で全身が麻痺し自分で呼吸もできなかった人が歩いて退院できるほど回復した話。
医者も見放したガンが消えた話。
脳梗塞で寝たきりから奇跡の回復をした話もたくさんあります。