聞いた私は耳を疑いました。

それでいいのか？

本当にこんなことで改善するのか。

大学時代から今までを通じて初めて聞いた調整方法です。

専門書を調べたときも全く記載されていませんでした。

それは...。

 

入れ歯にプラスチックを盛り上げる。

 

それだけだった。

えっ！

それだけでいいの？

疑っている私に父は

「大丈夫。良くなるよ」

そう言って力強くうなずきました。

 

次の日さっそく入れ歯にプラスチックを盛り上げて新たな咬み合わせを作ってみました。

保険治療では「咬合挙上（こうごうきょじょう）」というテクニックです。

 

「あっ！　これは今までとは段違いに良いね」

Ａさんが初めて見せる本当に満足そうな笑顔。

やはり父の言う通り。

咬み合わせが合っていないのが入れ歯が外れる原因でした。

父は模型を見ただけで今回の不調の原因と治療法を見抜いていたようです。
 

喜んで帰られたＡさんでしたが次の日また来院しました。

何か問題あったかな。

恐る恐る、表面上は平静を装って聞いてみるとＡさんは目を輝かせて

 

「食事もバッチリだよ。あとね、ずーっと夜寝ているときに歯ぎしりするのに悩んでいたのが、きれいサッパリ治ったんだよ。朝起きるとアゴがラクで。先生は魔法使いだね」

と笑顔で答えてくださいました。
　

やっぱり父はすごい！

お金をかけた自費治療でなく、保険治療でも魔法のように良く治す。

「成活」を通じて「深く願って」行きついた答えでした。