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成活とは 1-7 全ての入れ歯を半日で治します。技術を身につけた成活(4/7)

成活とは 1-7 全ての入れ歯を半日で治します。技術を身につけた成活(4/7)

伊藤 高史

開業して三代目。高齢の方にも安全安心な保険の入れ歯治療、修理、メンテナンスを中心に行なっている。

当ブログ「杉並区「入れ歯専門の歯医者さん」今日の出来事」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ito_takafumi/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


Wさんの気が変わらないうちにと、すぐにその日から道具を借りてワイヤーを曲げてみたいと申し出ました。

最初は簡単な形から挑戦。

 

これなら一時間もあればできるだろう。

なんて予測をたてて加工を開始しました。

 

ところが「見る」と「やる」では大違い! 

いくらやっても優しく歯を包みこむような形にはなりません。

何度調整しても大きな隙間が出来てしまうのです。

 

「私でも出来そうだ」なんて、とんでもない!

固いワイヤーは思い通りに曲がってくれません。

「どうせ歯科医の気まぐれに違いない。すぐにあきらめるだろう」

 

もしかしたらWさんはそう思っていたのかも知れません。

でも私には、あきらめるなんて考えられません。

満足に食事が出来ずに困っている患者さんの顔が浮かんできます。

 

だからどうしても覚えたい! 
 

それから毎日残業です。

 

診療が終わってから三時間以上も作業台の前で過ごす日が続くことになります。

ひとり技工室にこもって悪戦苦闘。

 

目の前の模型を相手に真剣勝負です。

BGMに流しているFM放送の軽快な音楽も耳に入りません。

 

見本を見ると簡単に出来そうなんです。

一本のワイヤーを曲げるだけ。

 

でも現実はそんなに甘くない。

出来そうで出来ない。

それだけに悔しい。

 

慣れない手作業で道具の当たる部分が擦りむけてきました。

指の関節のあちこちが赤く腫れています。

 

こうなるとムキになります。

絶対に覚えてやる! 

仕事の合間も昼休みもワイヤーとの格闘が続くのでした。

 

「うっ!」

手が滑った。

 

突き刺してしまった指先のワイヤーを静かに抜くと、小さな赤い点はみるみる大きくなっていきます。

 

やがて一筋の流れとなってポタポタと床に落ちる赤い血。

ティッシュペーパーで押さえてその上からセロテープでぐるぐる巻いて固定します。

その上から輪ゴムで止め、道具を握ると指先に激痛が走りました。