それは

 

「願うこと」

 

というよりも、それ以外に何もできなかったということ。

 

「もうちょっとお腹の上に行って」

「あと３か月はお腹にいてね」

「もう少しお腹で待っててね」

 

妻と私はお腹に向かって、ひたすら「お願い」しました。毎日毎日、何度も何度も。

妊娠7か月目に入り、お腹もだいぶ大きくなりました。

妻は赤ちゃんのために、話しかける以外にも毎日きれいな音楽を聴いたり、楽しい本を読み聴かせたりしていました。

私もＣＤショップで童謡や落ち着くクラシックのＣＤを買ってきました。

 

無事に生まれるかどうかは分からない。

少しの間でもいい。

お腹の子どもと楽しく過ごそう。

子どもと「楽しむ」ことを心がけました。

赤ちゃんは楽しいとき、妻のお腹を「トントン」と叩いて喜びを伝えます。

 

私は仕事の帰りに妻に花を買ってあげることにしました。

寝たきりで頑張っている妻に感謝の気持ちを伝えたかったから。

 

「感謝」は時に奇跡を起こす。

そのことを人から聞いたり本で読んだりしていた私は信じて行動しました。

 

花屋に入るときれいな花束がたくさんあります。

見ると花束には「お母さん、ありがとう」のシールが貼ってあります。

そろそろ母の日だからです。

 

しかし今回は妻にプレゼントするのが目的です。

「お母さん、ありがとう」のシールは必要ありません。

見回すと、片隅に置いてある花束にはシールが貼られていません。

シールが貼られていない花束を買いました。
 

ところが帰りに花束を見てびっくり。