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マイケル・ジョーダンの言葉に、間接的に励まされる

マイケル・ジョーダンの言葉に、間接的に励まされる

中山 順司

スキナヒト製作所 所長。

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外に出ると、寮の建物がキャンパス内に点在しているのが確認できました。例の中年男性に案内されたのは、平屋作りの全長25mくらいの細長い建物です。中に入ると、まっすぐに廊下が続いており、両サイドに4つほどドアがあります。どうやら、それが各部屋のようです。

1部屋に2人づつ住んでいるとして、部屋数から察するに、15名前後の生徒が暮らしているのだろうと想像できました。

「どのドアに案内されるのだろう、どんなエチオピア人が待ちかまえているのだろう、そういえばエチオピア人の肌は真っ黒だろうか、それとも褐色だろうか。首都はアジスアベバだったっけ」

とドキドキしていたのですが、物音一つせず、人気がありません。全員寝ているのでしょうか。

すると、中年男性は、

「今日はバスケットボールの遠征試合があり、ここに住む男子生徒は全員出かけてしまっている。だから、この寮は今晩は空だ。ベッドが一つ空いているこの部屋でとりあえず今晩は寝なさい」

と言い残し、去っていきました。


少々拍子抜けしつつ、指示された部屋のドアを開けると、鉄製ベッドが2つとタンスが2つの殺風景な2名部屋です。広さは6畳くらいだったと記憶しています。ベッドには無造作にマットレスだけが置かれてあり、枕もシーツもありません。ただ、雪国だからか暖房は完備されているようで、寒さは感じませんでした。

見回すと、この部屋に住むエチオピア人の持ち物が目に入ります。持ち物といっても、めぼしいものはなにもないです。シャンプー、アフロヘアー用のクシ、教科書に文房具、ハンガーに数えるほどの枚数のシャツ、シーンズ、そしてスーツとネクタイ・・の程度です。かなり質素だなと思いました。

白いクロスが貼られた壁には、NBAスターのマイケル・ジョーダンのポスターが飾ってありました。ポスターには、なにやらメッセージがあります。近づいて読んでみると、こう書いてありました。


「少年よ、私のようなプレーヤーになることを目指してはいけない。私以上を目標にするんだ」


当時のNBAトップスターの座に君臨する、あのマイケル・ジョーダンが、こんなメッセージを残していたんだ・・と妙に感動し、しばらくそのポスターを眺めていました。アスリートを目指しているわけではない私にも、なんとなく意味があるように思えて、励まされているような錯覚を感じました。

期待と不安と興奮でなかなか寝付けず、薄明かりの中ずっと部屋の天井を凝視しつつ、留学初日が終わりました。


つづく



代表 中山順司