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学校中の人々の脳が、宇宙人にハッキングされる

学校中の人々の脳が、宇宙人にハッキングされる

中山 順司

スキナヒト製作所 所長。

当ブログ「20年前の留学を、淡々と振り返る記録」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/jnakayama/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


みなさんは、サマータイムをご存じですか?

サマータイムとは、夏の間、太陽の出ている時間帯を有効活用するために、現行の時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用する制度です。つまり開始時は1時間時計を早め、終了時には1時間戻します。なお、日本では採用されていません。

このサマータイム、私はまったく知らずに留学しておりました。


今回は、私がサマータイムを知らなかったことで起きた珍騒動について、書こうと思います。




サッカーの部活から戻ったある日のこと、寮でシャワーを浴びて夕飯に備えておりました。たしか4月のどこかだったように記憶しています。寮の共有スペースでくつろいでいると、寮長さんがその寮に住む生徒全員を集めてこう言いました。



「えー、ではみなさん、今から時計を1時間進めてください」



私以外の生徒はごく当たり前といった様子で、各自の腕時計をいじり始めました。寮長さんも壁にかけられた時計をはずし、裏側をいじっています。なんの前置きもなしに、いきなり時間を進めろと言われ、全員がなんの疑問も持たずに時間を進めています。サマータイムを知らない私は、当然状況が飲み込めず、「いったい、なにやってんの??」とその場に突っ立っていました。


すると、寮長さんが



「さあ、ジュンジも時計を1時間早めなさい」



と促してきます。ですが、理由もなしに素直に従うワケにはいきません。



「いやいやいや、みんな、なに勝手に時間変えてるんですか。そんなことして許されるわけないでしょう!?」



と問い返しても、



「いや、これは別にかまわないんだ。気にせず時間を早めていいから。さあ早く」



と繰り返すだけ。まったく意味がわかりません。




じつはこのとき、私は2つの可能性を考えていました。


1 全員で私にドッキリを仕掛けている
2 全員が悪者(or 宇宙人)に脳を乗っ取られ、気が狂った



生徒だけでなく、大人(寮長)まで真顔で、とても冗談を言っている雰囲気ではありません。しかし、寮長ぐるみの集団でからかっている可能性はなきにしもあらずです。


もうひとつの悪者(or 宇宙人)説は、ドラマチックすぎてあり得ないと理性で否定しました。

ですが、一瞬


「オレ以外、学校中の気が狂ってしまったのか?なぜだ?原因はなんだ?軍の細菌兵器が流出したとか?いや、ここはアイオワの陸の孤島だ。周囲に基地はない。あるのはとうもろこし畑だけだし、それはありえない。だとすると、まさかの宇宙人の脳内ハック?超能力で人間の時間の概念を覆してしまったとかか?そんな映画みたいな話が現実にあるのか?いや、あっていいはずがない。では、この怪現象をどう説明すればいい?わからない、いったい何が起きているんだ、なぜなんだ。みんな、しっかりしてくれ。いいか、時間は勝手に進んだり戻ったりはしないんだ。時間とはもっと普遍的なものなんだ。世界中が共通の時間軸で成り立っている以上、時間を変えることは許されないんだ。お願い、目を覚まして」


と考えてしまいました。それもかなり真剣に。

今思い出しても、我ながらアホとちゃうかと思います。




「やりなさい」

「いやです」

「つべこべ言わず、いいから時間を進めなさい」

「意味がわかりません、いやです」

「そういうルールなんです」

「時間のルールを変えるなんて、あってはならないことです。いやです」



寮長と押し問答をしましたが、ラチが開きません。結局、私だけ時計を進めることを拒否したまま、夕飯の時間になり、すごく変な雰囲気のまま、寮の生徒らとカフェテリアにゾロゾロと移動しました。



移動中も心の中では、


「カフェテリアでほかの生徒や先生に確認しよう。どうか、ドッキリであってくれ。悪い冗談であってくれ。しかし、万が一学校中が時間を進めていたとしたら、いったいオレはどうすればいいんだ。全員が宇宙人に脳をやられていたとしたら、自分の脳もいずれ乗っ取られてしまい、やがて身体も支配されてしまうだろう、それはいやだ・・・」


と不安を抱えていました。



そして、カフェテリアで急いで他の先生と、別の棟に住む生徒等に事情を打ち明けたところ・・・・







腹を抱えて笑われました。(とくに宇宙人のくだりが)






ちゃんと説明してくれよ、寮長先生・・・orz



でも、大笑いされながらも、「なんか、この学校に馴染んできてるのかも」と少し楽しめている自分がいました。


つづく



代表 中山順司