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表現の揃っていない部分は「本音」を探る良い手がかりになる

表現の揃っていない部分は「本音」を探る良い手がかりになる

開米 瑞浩

社会人の文書化能力の向上をテーマとして企業研修を行っています。複雑な情報からカギとなる構造を見抜いてわかりやすく表現するプロフェッショナル。

当ブログ「開米のリアリスト思考室」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/kaimai_mizuhiro/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 こんにちは、文書構造化職人(なんだそりゃ(笑))の開米瑞浩です。
 「経営目標」例題の続きです。

 もう一度原文を再掲↓

例文:経営目標

【経営目標】
全社一体となって業務全般の徹底した効率化を進めるとともに、お客様満足の獲得を目指した営業活動を積極的に展開することで売上を拡大し、利益水準の維持・向上を計っています。
利益目標:連結経常利益 1200億円

それを短文に分解するとこうで↓

S1:全社一体となって業務全般の徹底した効率化を進めます
S2:お客様満足の獲得を目指した営業活動を積極的に展開します
S3:それによって売上を拡大します
S4:また、利益水準の維持・向上を図っています

 さらにそのロジックはこうつながるはずでした↓

2013-0528-01.JPG

 今回はこのうちの「S3とS4に注目」です。

S3:売上拡大
S4:利益水準の維持・向上

 シンプルに書くなら

S3:売上拡大
S4:利益拡大

 これでもよさそうなものですが、なぜ「利益水準の維持・向上」なんてまわりくどい書き方をしているんでしょうか? という疑問が起きてくるわけです。

 実は、情報の分解・分類をしていくと、このS3・S4のように「書き方の揃っていない部分が目立ち、気になる」ことがよくがあります。

 「文章」のままだとこういう部分はほとんど気にならないし、かえって「揃えていない方が自然に読める」ぐらいのものなのですが、バラバラに分解して表を作ると気になってくるのですよ。

 こういう場合、理由はおおまかに3種類のどれかの場合が多いものです。

その1:単になんとなく文章を書いていただけ
その2:どちらかに本音や実情が出ている
その3:良い文章の書き方の法則を忠実に守って書いたらそうなった

 その1の場合は話は単純で、修正すればそれで済みます。

 レビュアー:これ、「利益拡大」でもいいんじゃないの?
 執筆者  :あ、そうですね。そうしましょう

 以上、おしまい。

 その2の場合はちょっと紛糾しそうです。たとえばこんなケースです。

 レビュアー:これ、「利益拡大」でもいいんじゃないの?
 執筆者  :えっ・・・しかし・・・
 レビュアー:どうかした? 「拡大」だと何か困ることある?
 執筆者  :いや、ぶっちゃけ言いますと「拡大」ってほとんど無理だと思うんですよね・・・維持するのが精一杯じゃないかと。こんなこと言うと「何を弱気になってるんだ!」とか怒る人がいるので建前上、「向上」とつけておきましたけど。でも、「維持」のほうが本音なんです。

 こういう「本音」は、文字に書かれたものをいくら読んでもたいていわかりません。でも、面と向かって聞くと出てきたり、受け答えから察しが付いたりします。「表現の揃っていない部分」は、その手がかりを得るための質問として便利に使えることがあります。

 「理解していないものはわかりやすく書けない」という話は今までも何度も出てきました。結局のところ本質はそこに帰着するので、「情報を分解・分類する」のは、「必ずしも本音が書かれていないし勘違いもよくある「文章」から、真相を見つけるための手段なわけです。
 何度も書きますが、「分解・分類する」のは単なる手段です。それ自体に価値があるわけじゃありません。ですので、「必要な情報はこれで十分整理できているか?」と何度もしつこく自問自答しながらやらないと意味が無いですね。

 最後に「その3:良い文章の書き方の法則を忠実に守って書いた」とはどういうことか、というと、実は「良い文章を書くためのテクニック」のひとつに

    同じ単語を何度も使わない

 という方法があります(英文のライティングでは特にこれをうるさく言われます)。これを守って書くと、当たり前ですが「表現が揃わない」状態が起きやすくなります。

 たとえば次の例文1と2ではどちらが「良い文章」でしょうか。

例文1:A商品の売上が向上した。B商品の売上も向上した。C商品の売り上げも向上した

例文2:A商品の売上が向上した。B商品の販売も改善されており、C商品の受注も伸びている。

 例文1は「売上・向上」という同じ単語を繰り返し使って書いているため、表現が単調で、ざっくばらんに言うと「幼稚に」見えます。(小学生に作文を書かせるとよくこういう書き方をしますよね。使えるボキャブラリーが少ないので、どうしても表現が単調になるからです)

 そこで、例文2のように、「同じ事を表すのでも、その都度表現を変える」というのが「上手い文章に見えるライティングテクニック」なんです。これをやると知的な文章になります。

 ただし、「知的な文章」は別に「分かりやすい文章」であることを意味しません。
 というより、「知的な装いに凝った文章」はたいていわかりにくくなります

 ですので、文章を分解・分類するときは、そういう「ライティング・テクニックのために表現を変えてある部分」は全部バッサリと統一してしまいましょう。情報を分解・分類するというのは、情報の本質をとらえて行う作業であって、文章テクニックに類する部分は「どーでもいい」要素であり、そういうものは全部切り捨ててしまわなければいけないのですよ。

 (ちなみに、美しい文章を書くことにこだわりがある人は、この「ライティング・テクニックを切り捨てる」ことに抵抗を感じてしまうことがあります。理由は察しがつきますよね)

 さらに続きます。次回は、S1・S2をもっと分解します。

        ・・・・続く

(注:この話題は、私の著書「最強のビジネス図解ワークブック」掲載の例題を当ブログ向けに再構成して書いています)

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