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【プロローグ】スティーブ・ジョブズと消費者理解

»2012年1月13日
消費者理解コトハジメ

【プロローグ】スティーブ・ジョブズと消費者理解

大久保 惠司

株式会社コプロシステム取締役 商品計画研究所所長。携帯電話キャリア、電機・食品・化粧品各メーカー、エンタメ系企業等のブランディング、商品開発に関するプロジェクトを多数手がける。Mac大好き。

当ブログ「消費者理解コトハジメ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/keijix/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


【アップルの商品開発】

 私はアップルユーザーです。もう25年以上前からMacを使っています。当然ながらスティーブジョブズのファンでもあります。アップル製品はほとんどを手に入れ、MACはSEという初期のモデルから持っていて、家には博物館ができるほど(ほとんどが動かないんですが...)。iPhone iPadに至っては新製品がリリースされるごとに買っているという始末。回りからは呆れられています。

Photo1.jpg iPhoneの登場以来スティーブジョブズに対する評価はうなぎ登り。なぜ日本のメーカーはiPhoneを作れなかったのか、なぜスティーブジョブズは次々とヒット商品を作り出せるのか、次々とイノベーションを起こせる要因は何か...。様々な人が彼から何かを学ぼうとし始めました。そして、昨年帰らぬ人となってからは、彼のオフィシャルのバイオグラフィーが飛ぶように売れ、彼の語録がネット上を一人歩きし始めました。

 スティーブジョブズは消費者調査なんかしなかった。アップルは自分たちの作りたいものを作っている。日本のメーカーは消費者の言うことを聞いてものづくりをするから革新的なものが作れない...。う~ん、なるほど...。

 

【私の仕事は商品開発のコンサルティング】

 ところで、私は商品開発コンサルティングをしています。いままでに数多くの企業の商品開発、商品企画のお手伝いをさせていただきました。私が商品開発において肝に銘じていることは、

1. 「生活者(消費者)視点」
 商品に価値を認め、購入してくれるのは生活者(消費者)である。
 自社の営業マンやトップマネジメント層ではない。

2. 「ターゲットを徹底的にフォーカス」
 全ての人に受け入れられる商品は存在しない。
 ターゲットの顔が見えるようになるまでフォーカスを絞る。

3. 「強固な戦略立案のためのロジック」
 カテゴリートップを目指せなければ競争に負ける。
 トップになれないときはターゲットを変えるか新しいカテゴリーを創る。

4. コンセプトメイクによる価値の転換
 プロダクトをターゲットにとって意味ある価値に転換する。
 彼らは、何故その商品を買わなければならないのかを明示する。

5. プロトタイピング
 デザインワークを含めた試作の繰り返しにより完成度が上がる。
 プロトタイプを作ることでゴールが明確になる。

の五点に集約されます。これを達成するために、消費者調査は頻繁に行っています。と、言うよりも消費者調査抜きにこの仕事で成果を出すことができないと考えています。なぜならば、消費者を理解することこそが商品企画のスタートポイントであり、ゴールでもあると考えているからです。

 

【天才ジョブズの消費者理解】

 さて、ここで困った問題が生じてきます。冒頭に申し上げたように、私の大好きなアップルは「消費者調査なんて信じていない」という話があるからです。見事にアップルの術中にはまり、アップル製品を買い続けている私としては、日頃仕事でクライアントにお伝えしていることが、果たして正しいのかを考えざるを得なくなってしまいます。本当にアップルは消費者調査などしないのでしょうか?

 有名なジョブズの言葉があります。1998年のビジネスウィークのインタビューにて...

「フォーカスグループからデザインを導きだすことは難しい。多くの場合、人は物を見せられて初めて、自分が何を欲していたかに気づくんだ」

と、話しています。前後の文脈はわかりませんが、確かにフォーカスグループインタビューに対して否定的な発言です。しかし、この発言は、人(消費者)に対してのインサイト(洞察)に満ちています。「人は物を見せられて、初めて自分が欲しかった物に気づく」という言葉は、消費者の心理を見抜いていなければ、そうそう言えることではありません。そう、調査は手段であって、目的は消費者理解(インサイト)にあります。その意味ではジョブズは深く消費者を理解していたと言えます。

 昨年発売されたWIRED日本版のVol.2に「ジョブズが遺した14のレッスン」という特集が組まれていました。その中でティム・ウー(作家、コロンビア大学教授)はパラマウント映画の設立者アドルフ・ズッカーとジョブズを結びつけ、「...アドルフ・ズッカーは『観客を理解する』ところに自分の能力があると語った。ジョブズも同じ才能を持っていた。...」と書いています。人並み外れた直感力で、ジョブズは消費者の心理を見抜いていたと考えてもいいと思います。そして、その消費者理解力に基づいて革新的な製品、サービスを次々とリリースしていったのではないでしょうか。

 

【フツーの人の消費者理解の方法】

 アップルがジョブズの天才的な直感力によって、深い消費者理解に基づいて商品開発をしているのは理解できました。では、私のようなフツーの人はどうすればよいのでしょうか? これは地道にやっていくしかありません。
 情報を収集し、整理し、仮説を立て、検証し、考察する。そのことをアップルと同じレベルに届くまで繰り返すしかないと思います。

 長くなりましたが、そんなわけで「消費者理解」に関するブログを始めることになりました。消費者理解のための様々な仮説をご提供できるように頑張って行きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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