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「私をコミケに連れてって!」

「私をコミケに連れてって!」

倉澤 コイ

40代、仕事を持った腐女子。 某ジャンルにハマり09年夏に初めてコミケという場所に赴く。 さらに同人デビューを画策、悪戦苦闘の日々。

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2009年、8月の暑い日に
私は、生まれて初めてコミケという場所に赴いた。
その存在は知っていたし、興味がないでもなかったが、
漠然とした興味だけで出かけるにはハードルの高い場所である。

そのハードルを超えるきっかけは、
日参しているファンフィクション小説(※)サイトの管理人嬢の
「夏コミでアンソロジー本(※)に参加します」という書き込みであった。
春にハマり、初夏にサイトを立ち上げ、
発掘したファンサイトのブックマークも華やかなりし頃、
その「字書きの神様」の一言は、
老体を東京ビッグサイトに向かわせるのに十分なものだった。

仕事と趣味をかねて、ちょくちょくコミケに出かけている友人に
「ねえ、今年も夏コミ行く? 一緒に連れてってくんない?」
と申し出たところ、爆笑された。
「いいね!それ!『私をコミケに連れてって!』ってか!」
ふたりともバブル世代である。
連れていってくれ、と頼んでおきながら、
「2日目がいい」と注文をつける私に、彼女はつきあってくれた。

東京ビッグサイトの正面入り口は西よりにあるが、東館のほうにも入り口はある。
私は他のイベントの時と同じノリで、東館よりの入り口から入ろうとした。
が、コミケの場合、そこからは入れないのだ。
一般入場は正面入り口のみ!
人員整理のスタッフが声も枯れよと東西に人々を誘導している中、
人ごみとともに牛歩で東館への通路を移動する。
(この通路のことをコミケに参加する人々は「ゴキブリ回廊」と呼ぶ。豆知識w
なるほどこの人ごみでは、入り口はひとつにしないと暴動が起きそうだ。

ショートカットをしようとして、遠回りしてしまった私たちだが、
東館に向かう歩道橋の上で、コミケならではのすごい光景を見た。


koiblog_1.jpg

 

ナスカの地上絵のような行列を眺めながら、そのエネルギーに圧倒される。
上から見ると気がつかないが、
行列がちょっと距離をおいて続く場合、その途切れる場所にいる人は
「ここは最後尾ではありません」というプラカードを持っており、
本当の最後尾の人は「ここはA-何番、○○サークルの最後尾です」
というプラカードを持っている。
それをバトンのようにつなぎながら、同人誌を買う人々の列は粛々と進んでいく。
コミケ参加者の規律正しさは、そら恐ろしいほどだ。

昼すぎに国際展示場駅に到着してから一時間。
正面入り口から目的の東6棟まで移動する間に、人ごみは枝分かれし、
目的のスペースに着く頃には、人波はだいぶ落ち着いていた。
コミケの動員力というのは小さなセルの集合体なのだな、と思う。

お目あての本と、なんとなく目についた本を購入する。
サークルチェック(※)もせずに飛び込みである。
R18表記の本は購入のさいに年齢確認があったりして、
ちょっとした羞恥プレイものだ。
それにしても、同人誌の装丁は今時本屋では見ないような
箔押しとか、エンボス加工とか、フィルムの遊び紙とか...
なんだかすごい豪華だ。
いったいこのお嬢さんたちはどこで印刷しているのだろう?
私は帰宅後、購入した本の奥付をしげしげと眺めていた。


※ファンフィクション小説
 二次創作の小説。これを書いている人は、
 絵描きに対して「字書き」と呼ばれる。

※アンソロジー本
 複数の書き手や描き手の作品を集めた本。
 作家の数が多い順に「アンソロジー」「合同誌」「個人誌」となる。

※サークルチェック
 コミケに出展しているサークルをあらかじめカタログなどで、
 吟味し、購入したいサークルの場所をチェックしておくこと。