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私もコミケで売ってみた~その3 開場~

私もコミケで売ってみた~その3 開場~

倉澤 コイ

40代、仕事を持った腐女子。 某ジャンルにハマり09年夏に初めてコミケという場所に赴く。 さらに同人デビューを画策、悪戦苦闘の日々。

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10時、開場のアナウンスとともに拍手が巻き起こる。
この拍手もコミケ特有のものらしい。
気分が高揚して、
今日はなんか売れそうな気がするーーー、などと根拠もなしに思う(お馬鹿。

開場とともに、外に待機していた人々がどっと押し寄せるのか、
というと、実はそうでもない。
開場と同時に混雑するのはむしろ会場の外側だからだ。
壁際に配置された大手(頒布部数が多い)サークルの本目当ての
一般参加者(コミケにおいては客とは言わない。買うだけの人は一般参加者、
頒布もする人はサークル参加者という)の列は、会場の外に出来るのだ。
昨年の夏に歩道橋の上から見た光景が、朝いちという時間、
さらに苛烈な状態で広がっているだろうことは想像に難くないが、
サークル参加者としてはそれを確認することもままならない。
1平方m程度の空間に作りあげた自分のスペースの中で、ちんまり座っているだけだ。
中には、自分のスペースを留守にして買い物に走るサークル参加者もいる。
知名度の低いサークルに客が回ってくるのは開場後1時間ほどかかるから、
コミケにおいてはそれもあり、なのだろう。

ひとり参加の私はせっかくのコミケでスペースを留守にするのが勿体無くて、
通路を行き交う人々を眺めながら、買い手を待っていた。
行き交う人々はおのおの作成したトレジャーマップ(=サークルリスト)を手に、
目的のスペースを探してさまよっている。
私のスペースのポスターに注目する人もいるが、
「おお、注目されている」と喜んではいけない。
自分の居場所を見失ったトレジャーハンターたちが、
ポスターのスペースナンバーを見て、現在位置を確認しているだけなのだから。
「そうやって利用するだけ利用して、私を通り過ぎていくがいいわ!」
と、高飛車なのか自虐的なのか解らないテンションでじっと座っていた。

コミケの空間自体は蚤の市やフリーマーケットのように各スペースが並んでいるが、
ぶらぶらと物色して「あらこれ面白そう」といった風情で本を手に取る人は
少なくとも午前中には見かけない。
買うべきブツは各自、ネットやカタログなどで用意周到にチェック済みだからだ。
その様は、夏休みポケモンラリーのスタンプを押すためだけに
各駅を訪れる小学生さながらだ。
目的行動以外のことにはあまり興味を示さない。


とはいえ、私のような弱小サークルにも
チェックを入れているらしい人が、ちらほらと訪れる。
「出ている本、全部一冊ずつください!」
なんて言われると、これはもう相当に嬉しい。
さらに、
「サイト見てます」
「○○(私のペンネーム)さんの漫画、好きです」
なんて言われた日には、

「あなたは神様ですか。
 更新してもリアクションがなくて凹んだ日々も
 これで帳消しにできますよ、ありがとうございます」

と、感涙にむせび泣きたいような気持ちになる。

 

 

企画発案制作者が、直接エンドユーザーと対峙する機会なんて
現実の会社ではそうそうないことがコミケ会場のそこここでは普通のことだ。


そうして、ちらほらと訪れる人々と触れ合いつつ、
昼近くになった頃、予期していなかった出来事が起きたのだった。
(本来それは予期しておくべきだった出来事、だったかもしれない)