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混乱と政治の時代に求められる広告

混乱と政治の時代に求められる広告

谷古宇 浩司

アイティメディア ITインダストリー事業部 「ITmedia マーケティング」編集長:2002年、アットマーク・アイティに参加。@IT自分戦略研究所編集長、アイティメディア エンタープライズ編集長、事業開発部チーフアーキテクトを歴任後、現在、7月17日に立ち上げ予定のテクノロジー×マーケティング専門メディア「ITmedia マーケティング」を準備中。

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吉田望が岡康道との対談で「日本社会の60年周期説」というのを唱えていた。日本の社会は60年で中身がそっくり入れ替わるというもの。1ターンは「政治」「経済」「文化」「混乱」という4つのフェーズで構成されている。1フェーズの寿命は15年だ。

このフレームで戦後の日本を眺めると、1945年~1960年が55年体制を作り出した「政治の時代」、1960年~1975年が高度経済成長を成し遂げた「経済の時代」、1975年~1990年が「文化の時代」(ちょっと貧困だったけど、と彼は云う)、そして、1990年~2005年が「混乱の時代」ということになる。

この説が収められた「ブランド」(宣伝会議)という本は2002年の刊行だから、当然、彼は2012年のことに触れてはいないけれど、15年で社会に変化が訪れるというのなら、いまは「政治の時代」に回帰していることになる。

政治の時代......。果たして、現代は政治の時代なんだろうか?

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中東における民主化運動の拡大や、中国の経済的な台頭による世界の政治的地政学の組み替え、EUの経済的混乱と右傾化傾向というのは、次世代の政治的秩序と経済の方向性を決めるための棚卸しの作業とも見えなくはない。しかし、これは世界レベルの話。

日本国内はどうだろう。大阪維新の会が民主党に変わって政権をとる時が2020年までに来るのかもしれない。彼らは、財政再建と社会保障システムの安定を成し遂げ、年率3%くらいの自律的な経済成長を実現するという大きな流れをあと数年で作り出すことができるのか。

「ブランド」というのは、電通マンだった2人が広告やマーケティングに関して、視野の広い、射程の長い議論を繰り広げる本であって、政治・経済・文化について大所高所から論じる内容ではない。なので、吉田さんも、(2002年の)混乱の時代には、「広告を経済と文化の間のちんまりとしたものとして捉えないで、混乱や政治に、大胆に踏み込む広告なんていうのもありえるかもしれない」という風に広告に絡めて話をまとめている。

それを受けて岡さんは「ものの見方なり、生活のあり方なりを提案していって、賛同が得られたときにブームが起こるのでは」と返している。つまり、時代を創り出す大きな提案ということ。僕は「吉田フィルター」に多少の誤差をみていて、2012年はいまだ混乱期(の終わりあたり)なんじゃないかと思っている。だからこそ、吉田さんや岡さんの2002年時点(混乱の時代)での意見にわりと素直に共感する。