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なぜ休職を繰り返すのか?【ケース事例:Aさん】

なぜ休職を繰り返すのか?【ケース事例:Aさん】

伊藤 崇

株式会社リヴァ 代表取締役。うつの方への社会復帰支援サービスを展開中。医療、福祉、産業と色々な業界の機関とつながりをつくり、一人でも多くの方が自分らしくハッピーな人生を歩めるような支援を目指している。

当ブログ「うつ病からの社会復帰 自分らしい人生を!」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/liva/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。



こんにちは、リヴァの伊藤です。

毎日猛暑で厳しい日々が続きますが、野菜は美味しい季節となりました。
協力農家さんから頂いたとうもろこし、新鮮なので生で頂いてみました。みずみずしくとても美味しかったです。

さて、前回はうつと自殺という重い内容でしたが、うつは誰にでも発症する可能性があり、死というのもありえる恐い病気であり、深刻な状況というのをお伝えできればと思いました。

前回もお伝えしたとおり、うつは再発しやすい病気です。今回からよくあるケースをもとになぜうつが再発してしまったのかを、考察していければと思います。

医学的ではなく、個人的な考察ですのでくれぐれもご了承ください。


<Aさん(男性40歳)のケース>

■発症から休職
Aさんは、相手からの依頼をうまく断れないタイプ。普段も目立たず、そつなく仕事をこなしてきた。
部署が異動になり、上司が変わって状況が変化。何かあれば上司から、叱責をうけるようになり、会社に行くことがつらくなっていった。また仕事量も増え、帰宅も遅くなっていた。食欲もなくなり、肩こりや頭痛もひどくなっていき、欠勤してしまうことも多くなってきたので心療内科を受診し、うつとの診断を受ける。抗うつ剤と睡眠導入剤を処方される。


■休職直後から復帰まで
休職当初は、外出する気にはなれずずっと家の中に引きこもっていた。朝と夜の区別もつかず、何を食べても味がしないような状態が続く。その後、4カ月後には外に出れるようになり、友人とも外出できるようにまで回復。主治医、産業医にも相談しながら、図書館や公園の散歩など復帰にむけて積極的に活動をするようになった。朝起きれない日もほとんどなくなり、産業医から復職OKをもらい休職して半年後に復帰を果たす。


■復帰から再び休職
復帰後2週間は、10時~16時勤務で残業なしの勤務体制だった。会社の配慮として時短勤務が利用できた。
復帰初日は、休職していた申し訳なさもあって周りに気を使って家に帰った時には、だいぶ疲れた感じが残っていた。
1週間が終わる時には、久々に仕事をしている充実感もあったがとにかく疲れたという印象が残った。
翌週月曜日、身体が鉛のように重く起き上がることが出来ず会社に電話を入れる。休職明けもあって上司は気を使ってくれたが、罪悪感が残り自分を責めてしまう。翌朝は頑張って会社に行くものの、その後も不安定な勤怠が続き、少しずつ遅刻する日が増えていった。
不安なことを相談できる人もいなかった。家族のこともあり、絶対に失敗は出来ないと自分に言い聞かせていた。
しかしながら定着へのプレッシャーが次第に大きくなり、3週間も過ぎる頃には、以前と同じく朝起きれず外出がまったく出来なくなってしまった。うつの再発(再燃)である。


■上記から考える、うつが再発した理由
上記からうつ病が再発した要因としてはどういうことが考えられるでしょうか。
うつになる原因は、人や状況によって様々で簡単に言えるものではありませんが、一般的に考えれられることを3つあげてみます。

①休職中に体力や実戦力が低下していた
一般的には、発症すると病院やクリニックに行き、抗うつ剤や睡眠剤などの薬を処方されます。急性期(※1)には、まずは薬ととにかく安定するまでゆっくり休むことが必要です。そしてだんだんと症状が安定してくると、会社に早く戻らなければという焦りが生じてきます。
この前後で、Aさんのように公園を散歩したり図書館に業界のニュースを読みに行かれる方もおります。しかしこの後職場に戻っても、通勤でまず疲れてしまい職場では休職していたこともあり、周りに気を使い帰宅するころには、へとへとになります。そして翌朝起きるのが、とてもつらくなっていたり、起きれなかったりすると、自分を責めてしまったり、うまく定着できるかの不安が大きくなってきて、しばらくするとまた会社に行けなくなってしまうことが多いのです。

(※1)うつ病の急性期とは、気分の落ち込み、不安、イライラ、不眠、食欲の低下などのうつ病の症状がもっとも重くつらい期間


②うつになった時と同じ状態(状況)で復帰していた
うつ発症に至った経緯を整理したり自己分析をし、自分の考え方やストレスの受け方、コミュニケーションのとり方を一度見直す必要がある場合もあります。今回のAさんのケースでも上司とのコミュニケーションが、うつ発症の一つの要因になっている可能性があります。
周囲や環境の為にどうしようもないと考えてしまうこともありますが、他人や環境は変えづらいものです。そのためにご自身で出来ること、つまりうつ再発予防のために知っておくべきこと、身につけておくべきこともあります。薬や休息によっていくら症状が回復したとしても同じ環境で同じ状況に置かれれば、再発するのは当然のようにも思います。


③周りの支援がなかった
うつになると孤独を感じてしまう方も多く、周りの支援、理解がないことも再発してしまう原因と考えられます。Aさんのケースでも復職後、相談出来る人がおりませんでした。家族や人事には相談しにくいこともあります。
また一人で復職を成功させなければならないというプレッシャーにも勝たなければなりません。職場によっては、理解なく冷たい扱いを受ける場合もあるかもしれません。


今回のケースはよくある一般的な事例をもとに、うつが再発する一般的な要因を考えてみました。


では、このようなケースの場合、どうすればうつ再発の予防につながるのか。
次回は、その対策を考えてみたいと思います。