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維新八策にある「混合診療の解禁」について...

維新八策にある「混合診療の解禁」について...

原 彰宏

製薬会社、旅行社の勤務を経て独立。異業種経験から総合的に経済、企業をウォッチし、金融出身でないことを武器にわかりやすく解説しています。CFPR認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。大阪府出身。

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 大阪維新の会が、日本維新の会という政党となり、その政策を示すものに「維新八策」が発表されています。その中に、「混合診療の解禁」という項目があります。

 混合診療とは、保険診療と自由診療が一緒に行われることを言い、その場合、医療負担の平等性の観点から、自由診療分を患者さんに請求してはいけないことになっています。もし請求する場合は、保険診療部分も自由診療となり、患者さんの全額負担になりますよというものです。

 いまこの混合診療が認められているのは、差額ベッド代や新しい高度医療の提供などごく一部です。しかし、歯科の分野では広く認められています。抜歯した後の歯を入れる時に「保険適用にしますか、自由にしますか」と聞かれたことはないですか。

 混合診療を禁止することは、一見、患者さんにとって不利益のように感じますが、混合診療の解禁には、いくつかの大きな問題点が隠れているのです。

  いま、健康保険制度は火の車です。おそらく、日本デフォルトなんてことがおきれば、真先にメスを入れられるのが医療制度です。そもそも今の財政状況で、皆 保険制度維持は、非常に困難です。日本国債が暴落し、日本売りが加速し、お隣韓国のように、IMFの支援を受けるようになれば、真先に皆保険制度は見直さ れるでしょう。年金よりも医療の方が、実は、財政がめちゃくちゃ大変なのです。

 永田町では、皆保険性制度維持のために、薬剤の保険適用 外を真剣に検討しているという話も耳に入ってきています。治療等の医療行為は保険適用、薬剤処方は保険適用外ということですね。医療給付費(患者さんが負 担した3割分の残りの7割分のことで、健康保険制度から医療機関に直接支払われています)の削減のために、ジェネリック医薬品の普及を推進しています。

 混合診療の解禁をきっかけに、今まで保険診療だった部分も自由診療に切り替えられるのではという懸念があるとも言われています。また、混合診療解禁は、お金持ちにはとってもいいことですが、経済力の弱い人には厳しくなります。受けられる治療が限られるのです。

 そもそも、混合診療の解禁は、アメリカがずっと前から強く要求していることです。日本では薬価制度というものがあり、厚生労働省が認めた薬しか取り扱えないことになっています。逆にいうと、厚生労働省の安全基準をクリアした薬剤しか使えないとも言えます。

 自由診療の薬の安全性に関して、保証がなくなることは、安全面で不安となります。ただ、外資系の薬がどんどん日本市場に入ってくるので、外国企業にとっては、混合診療の解禁は、規制撤廃と同じ効果を得ることになります。

  また、混合診療の解禁となると、保険診療と自由診療の比率は、医者任せとなり、医療機関としては、お金持ち優遇の病院を作り、大きく稼ぐことができます。 患者さんの了解は得るとはいうものの、病気になった時の立ち位置は、やはりお医者さんの方が上になるでしょう。お医者さんの言うとおりになりがちです。

 今は歯医者さん不遇の時代です。生き残っている歯医者さんの多くは、自由診療の比率が大きいところです。儲かっている歯医者さんは自由診療で儲かっていると言えるでしょう。

 ますます保険診療は、隅に追いやられることになりかねない政策でもあります。広く人を救うか、医療現場に自由経済の論理を導入するのかです。

  よーく考えましょう...といっても、おそらく、混合診療は解禁の方向に向かうのでしょうね。日本維新の会が取り上げているのですから、今の勢いで言え ば、医療制度の大きな見直しは避けられないでしょう。自由経済の論理は、医療の世界のみならず、学校社会などにも取り入れられると思われます。

 自由経済の考え方、競争原理は間違っているとは思いませんが、医療や教育など、ここだけは全国民をケアしなければならないというところだけは、政府が責任を持つべきと思うのですがね...