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イクメンという言葉の違和感について考えてみた

イクメンという言葉の違和感について考えてみた

三河 賢文

ナレッジ・リンクス株式会社 代表、兼"走る”フリーライター。スポーツ・IT・ビジネス分野を中心に執筆や編集を手がける。2児の子持ちにて、育児奮闘中!

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育児に参加する男性を表す『イクメン』という言葉。今では、すっかり一般的なものとして定着しています。

確かに日本では、これまで「男は仕事、家事・育児は女の役目!」という風土があったのでしょう。私も、専業主婦である母親と多くの時間を過ごしました。だからこそ男性が育児をすると聞けば、「それは素晴らしい!」と感じるのかもしれません。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

どうしても私は、この『イクメン』という言葉に疑問を感じてしまいます。

■"普通"が"特別"になっていないか?

例えば次のような男性の姿を見て、どう思うでしょうか。

  • 休日に公園で子供と遊んでいる
  • 仕事が早く終わって、飲みにも行かず自宅に帰って子供に本を読む
  • 学校の行事を見に行く
  • 誕生日に家族でパーティーする

もちろん意見は様々だと思います。しかし現代社会においては、「育児していて偉い!」「イクメンだ!」という声が多いのではないでしょうか。そして男性自身もまた、こうした瞬間に「自分は育児をしている」と感じているように思います。しかし、少し冷静に考えてみてください。

これって、普通のことじゃないですか?

仕事が無くて家にいるのだから、子供たちと一緒に時間を過ごす。一生に1回しかない学校の行事なのだから、その晴れ舞台を見に足を運ぶ。これの、どこが「偉い」のでしょうか。同じく育児をする男性の視点から見れば、何も偉くなんてありません。それを特別視させてしまっている原因に、『イクメン』という言葉がある気がしています。

■育児から逃げる男性

もちろん、育児を一切しない父親なんて論外です。

先日、衝撃的な話を聞きました。「家にいると家事や育児を頼まれるから」などという理由で、残業や休日出勤をする男性がいるというのです。つまり、仕事を盾にして育児から逃げているのでしょう。確かに私も会社員の頃、こんな言葉を周囲から耳にしたことがあります。

「家に帰ると、子供がうるさくて休まらない」

「まだ子供が起きているから、少し飲んで帰ろう」

「休日くらい、1人でゆっくりしたい」

確かに毎日仕事に追われ、疲れているのは分かります。1人になりたいと思うことだってあるでしょう。しかし、育児は親として最低限の責任であり、これは父親も母親も関係ありません。そして、日々成長していく子供との時間は、このうえなく貴重なものなはずです。それを、まるで避けるかのように仕事に逃げるということは、一体どういうことなのでしょうか。

そんなに育児が嫌ならば、子供など授かるべきではないと思います。「母親がやっているから」なんて、何の言い訳にもなりません。子供は母親のものでも父親のものでもなく、両親にとっての宝であるはずです。ですから育児は、お互いの協力のうえで成り立つものといえるでしょう。

■1人1人が出来る限りの育児に取り組む

とはいえ育児とは、何も特別なことをする必要などありません。先に挙げた"普通"のことだけでも良いでしょう。どれだけの時間を育児に割けるかなど、人によって違うのです。

例えば私は、ほとんどの仕事を自宅で行っています。恐らく、家族の中で一番自宅にいる時間が多いのではないでしょうか。長男が小学校から帰ってくれば「おかえりなさい」と迎え、一緒にプールや公園に行くこともあります。妻のお腹には3人目の子供がいるので、次男を保育園に送迎するのも私の役割です。先日は、昼間から長男を健康診断へ連れて行き、そのまま水泳教室に付き添いました。

しかし私にとって、これは当然のこと。なぜなら、私はいつも自宅にいて、これら育児をすることに障壁が少ないからです。さらに私の仕事は、そのほとんどがパソコンさえあれば場所を選ばず行えます。

もちろん、仕事が立てこんでしまうこともありますが、そんなときは妻が家にいます。妻も仕事をしていますし、友達と食事などへ出かけることも少なくありません。しかしお互いのスケジュールを共有しているので、イベント事などの際にはよく「どっちが家にいるか?」と摺り合わせを行っているのです。

ただし自分で言うことでもありませんが、これは非常に異例でしょう。会社員であれば日中は拘束されていますから、現実的に無理な話です。

しかし、それで良いと思います。

大切なのは、父親1人1人が"出来る限りの育児"に取り組むこと。そして、パートナーとお互いを理解し合いながら協力することではないでしょうか。

趣味など自分の時間まで、無理に犠牲にすべきとも思いません。私もときどき、子供たちを妻に任せてマラソン大会へと出かけます。イキイキと過ごす姿を見せることもまた、大切な育児だと思うからです。ただしその代わり、趣味の時間を子供と共有できるようにしたり、もちろんそれ以外の時間で育児に取り組めば良いでしょう。

■仕事は家族にとって必要

よく、男性の育児休暇取得などが取り沙汰されます。まるで、仕事より育児を優先させるべきと言わんばかりです。しかしこれには、あまり賛同できません。

仕事というものは、家族にとって必要なことです。お金が全てなどではありませんが、お金がなければ生活できないシーンは間違いなくあるでしょう。収入を得ていくことは、子供を育てるうえにおいても避けて通れないはずです。

それを無理に長期の育児休暇を取得し、その間の収入が減少。場合によっては休暇から復帰する際、前のポジションには戻れないこともあるでしょう。役職者であれば、役職から離れて収入が減るかもしれません。

これが、本当に家族にとって幸せなことなのか?

これだけは家族環境によって何とも言えませんが、必ずしも育児のために時間を作り出すことが、良いことだとは限らないのではないでしょうか。本当に必要な育児、そしてその優先順位については、生活そのものと照らし合わせながら考える必要がありそうです。

■父親を母親が比べないで

最近は女性(母親)の口からも、「旦那がイクメンだ」などという会話が飛び出します。

友達と家庭の話になり、

「ウチでは、保育園の送りは父親の役割だから」

などと言う。すると自分の旦那と比較して、

「いいな〜、イクメンで」

なんて言うわけです。

人はつい、自分にないものを求めがちです。旦那さんの仕事や家にいられる時間、あるいは性格など同じはずもないのに、他と比べて無い物ねだりしてしまいます。しかし100出来る人もいれば、10しか出来ない人もいるもの。比べて羨ましがることに、意味などありません。

男性に育児参加を望むのであれば、多くを求め過ぎないことです。他と比べるなんて、もってのほかです。何でもかんでも「やって」と言われたら、どんなに寛容な人だって嫌にもなります。女性もまた、育児がお互いの協力のうえに成り立つものであると考えてはいかがでしょうか。

昨今は共働きの家庭も増えていますから、男性が担うべき育児は増えていると思います。専業主婦で常に家にいられる女性と、男性と同じく仕事に出ている女性とでは、子育てに割ける時間が異なるのも当然でしょう。これまでと同じように女性にばかり育児を任せていたら、女性側に無理が出るのは当然です。

だからこそ男性の育児参加が必要とされており、『イクメン』などという言葉までわざわざ作り出されているのだと思います。しかし本来、育児は両親がお互いに取り組むものであるということを忘れてはいけません。男性にしろ女性にしろ、育児することは決して偉くなどないのです。子を持つということについて、その意味と責任をしっかりと捉え、子供の成長を育んていってもらえればと思います。