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「噛むほどに味が出る」っていまいちスルメ感でてないんだよね -新卒就活 考-
ビジネスを楽しく!熱く! 『デラマンチャ・ビジネスラボ』
「噛むほどに味が出る」っていまいちスルメ感でてないんだよね -新卒就活 考-
中小IT企業を法歴し、SI営業、事業企画、M&Aディール、マーケティングなど様々な職務を経験し現在に至る。
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日清食品「カップヌードル」のテレビCMの中で、新卒就活をモチーフにしたモノが面白い。新卒就活生が不安に思いながら頑張る姿を、北極に冒険に行くような形で描いているアレのことである。
北極を舞台にしているのは
- 「就職氷河期の中、何やら分からない世界へ飛び込もう」っていう冒険心
を、そこにホッキョクグマが吠える姿を
- 「就活面接」の緊張感、恐怖感
を、そしてそれに立ち向かうために。「私は噛めば噛むほど味が出る、スルメのような性格です!」と、
- ステレオタイプのような言葉を使ってでも、一生懸命に向き合う姿勢
を描いている。これは、新卒の就活という一面をユーモアを交えて表現していてオモシレイ。
けれど、このCM。学生の皆さんを煽り過ぎだとと思うんだよなぁ。「就職活動は、人生における喫緊のイベントであるから、早く早くしないとヤバイヨヤバイヨ!」ってな感じで。
僕も学生時代そうだったけど、誰もが耳にしたことがある一流企業くらいしか、「世の中にどんな会社があるのか?」なんて知らなかった。だから、世の中に数多ある企業が何をしていて、どんな強みを持って社会に貢献しているかなんて知る由もないと思うのだ。先に挙げた一流企業でさえ、その本質まで理解するのは不可能だ。
そんな学生の皆さんに、膨大な数の企業情報を提供して、訳がわからないうちに片っ端から応募していく。自分以外の学生の行動原理も基本的に同じだから、企業側には募集人員を超える膨大なエントリーシートが届く。
膨大過ぎるエントリーシートの量が集まる企業の人事担当の方は、どこかで機械的に切り捨てる基準を設けなければ対応が出来ないことになる。出身大学やら取得資格やらで。そんなことで優秀な人材を選別できるわけ無いという事を分かっていながらも、対応できる範囲にまで絞り込むために「やらざるを得ない」のだ。だから、選考や内定者はリクナビ登録者の上澄みにいる人たちに必然的に集中することになっていく。そりゃあ、何十社を受けても落ちる訳だ。
そして、焦燥感、危機感、それに落ち続ける劣等感だけがどんどん増していって、就職活動の塾なんかに行ってSNSの表現方法まで装飾する方法を教えてもらって安心するんだろう。焦燥感、危機感、劣等感に苛まれた学生は、はっきり言って新卒就活者をターゲットにした企業、団体にとっての、態の良いカモだ。
僕は、だいぶ以前にSNSを活用した就活セミナーなんかをしていることを批判したブログを書いたことがある。
そんな、就活塾に行くくらいなら自分の両親にどんな仕事をしているのか?どんな所に喜びを感じるのか?なんてことを話し合った方が100倍マシだ。
例えばリクナビに登録したとして、膨大な企業求人を手に入れることが出来る。それはそれで有益な情報だと思う。けれど、それはツールに過ぎないのであって、ツールはツールとして良いところは活用すればいい。
必要以上に恐れる必要もない。電車に乗ってその辺にいる僕らのようなオッサンと話をするだけだ。「私は噛めば噛むほど味が出る、スルメのような性格です!」と、必要以上に力む必要もない。そんな「スルメ」話を聞かされても、「スルメ感」は伝わらないよ。もっと、率直に自分の思うことを最低限の礼儀をもって語れば良いのだから。そうしたら、学生の皆さんが考える以上に、そのオッサン達は結構すごい、頑張っているという事がわかるかもしれない。
なんてことを、ツラツラと書いていたら以下のような記事が目にとまった。
>>大前研一氏が斬る「就活」 「新卒一括採用」に国際競争力なし
あまりにも、極端な論理でお話にならないと僕なんかは思う。例えば一部を引用してみる。
私ならば、日本人を雇う場合、22歳の新卒は採用しない。一番本人の潜在力を見るのに向いてない年齢だからだ。日本での教育を受けてきた新卒は、キャラが立っていない。採用するうえでの判断が難しい。もっとキャラが立った人を入れないと、今の時代は会社が滅びる。
大きな採用方針をいえば、国籍に関係なく、優秀な人を雇う。年齢のターゲットは、1つは28~32歳。新卒で社会に出て5、6年荒波にもまれた頃だろう。社会の厳しさなど悲哀を味わっているほうがいい。
どこかの会社で新卒採用してもらって、ある程度基本的なビジネスの感覚を身につけた経験者を採用したいということらしい。けれど、そんなのはどこの会社でも同じことだ。即戦力になる人材と新卒者を比べるのは無理がある。
僕自身は、新卒一括採用の慣習は良いものだと思う。何故なら、高齢化社会を目の前にして労働人口はどんどんピークアウトしていく。その中で、学校を卒業したら、すぐに仕事に就けるというのは、労働人口の確保という意味でも有意義だと考えるからだ。欧米では失業率は非常に高く、日本の比では無い。これを、後押ししているのが新卒者の一括採用という慣習もその一つだろう。
問題なのは新卒採用に関する手法が見直されることなく「おざなり」になっていることだ。これは新卒一括採用にまつわるシステムの問題であって新卒者個人の問題ではない。
ただし、氏の言うことも分からないでもない所はある。
私も会社を経営しているから、そのような人を面接したことがある。20~30の会社の試験に落ちていると、自分がどこの会社を受験しているのか、わからなくなっている。面接で「ここは、どういう会社でしたっけ?」と聞いてくる。面接を受けている会社の研究も、志望動機も薄弱なんだ。これでは、採用されないのが当たり前。
ビジネスとは時間の使い方こそ、成功の鍵と言っても間違いない。だから、意識の低い人物との面談は、大変に無駄な時間を費やした、と言えるだろう。
けれど、このことですら本質的には新卒採用とは関係ない。経験者だって同様のことが言えるはずだから。
ちょっと脱線してしまったけれど、就職はゴールではなくてスタートだ。就職活動はキツイかもしれないけれど、工夫して頑張って欲しいと心から思う。つい数年前はSNSを使った就活がスコープされていたけれど、これは先のハイエナ達によって有名無実化してしまっている気がする。けれど、新卒の君たちは、どの先輩たちよりも若いうちにスマホに触れ、SNSを活用し、クラウド環境を利用してきたハズだ。ことITに関する経験値は頭一つ抜いた存在なのだ。
ちなみに、僕の新卒就職は縁故である。アルバイト先で懇意になった方が、入社した会社の社長で、声をかけてくれたことで僕は社会人になることが出来た。縁故だって自分で勝ち取っていくものだから、決して悪いことではないと僕は思っている。
何十社と就活を続けてうまくいかないなら、おそらくその手法や受けているサービスのシステムに問題があると思った方が良い。創意工夫して、もっと自分の素直な言葉で「スルメ感」を伝えてみよう。
<了>
正林俊介
※3/26引用した例について誤りがあり訂正しました。