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画面デザインは法律上保護されるか?
ITビジネス法務の現場から
画面デザインは法律上保護されるか?
弁護士。内田・鮫島法律事務所。アクセンチュア等でのシステム開発やコンサルティングの経験をもとにした、システム開発、IT、ネット、知的財産に関する法律問題が専門。
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こんにちは。弁護士の伊藤雅浩です。
今回は、ソフトウェア、ゲームの画面の模倣という問題について考えたいと思います。
【携帯電話向けゲームの事例】
ソーシャルゲームで圧倒的なシェアを誇るグリーとモバゲーの2社。平成21年にグリーがモバゲーを運営するDeNAに対し、携帯電話向けの魚釣りゲーム画面の著作権を侵害したとして、差止と損害賠償を請求しました。
問題となったのは、判決文(注:東京地裁平成24年2月23日判決)から抜粋しますと、以下のような画面です。
(左:原告グリーの画面、右:被告DeNAの画面)
裁判所は、著作権侵害を認めました。その論拠は、
原告作品は、この魚の引き寄せ画面について、(略)特に、水中に三重の同心円を大きく描き、釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体を動き回らせ、魚を引き寄せるタイミングを、魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表した点は、原告作品以前に配信された他の釣りゲームには全くみられなかったものであり(甲3)、この点に原告作品の製作者の個性が強く表れているものと認められる。
といったように(下線等は著者)、ただ単に共通点があったということではなく、他の同種のゲームには見られない個性的な特徴部分が共通していたとして、著作権侵害を認めました。
DeNAは、こうした共通点は単なるアイデアに過ぎないと反論しましたが(注:著作権法では、アイデアは保護の対象ではなく、あくまで表現を保護している。ただし、どこまでがアイデアなのか、どこからが表現なのかという区別は難しい。)、上記の共通点は単なるアイデアにとどまらないと判断されています。
ただし、この判決に対しては、双方ともに控訴されていますので(注:著作権侵害が認められたグリーの側も損害賠償の額が不服として控訴しています。)、この先、知財高裁で判断が変わることもあり得ます。
【ビジネスソフトウェアの事例】
ソフトウェアの画面の模倣に関する裁判例で有名なのは、約10年前のサイボウズ事件(注:東京地裁平成14年9月5日判決)です。これは、ウェブベースのグループウェアについて、サイボウズ社が、類似品を販売したとして競合他社を提訴した事件です。
問題となったのは、以下のような画面でした。
(左:原告サイボウズの画面、右:被告の画面)
通常の感覚として、似ている程度は、上記の魚釣りゲーム以上ではないでしょうか。しかし、この事件では著作権侵害を認めませんでした。
その理由は、確かに共通する部分はあるものの、縦軸に担当者、横軸に日付を取り、格子部分にスケジュールを表記するなど、スケジュール管理という機能から必然的に導かれるものであって、右側の画面から、左側の画面の表現上の本質的な特徴が感じられるわけではない、というものでした。
この事件も含め、ビジネスソフトウェアの画面の事例では、著作権侵害を認めたケースはほとんどありません。
【画面デザイン保護の重要性】
最近では、スマートフォンやタブレットPCの普及や、モニタの高解像度化によって、GUIの依存度が増しており、画面デザインの重要性はますます高まっているといえるでしょう。
しかし、画面デザインを著作権によって保護しようとしても、上記の2つの裁判例からも分かるとおり、どこまで類似すれば、権利侵害となるのか、どこまでなら許されるのかという境界線が分かりにくいという面があります。
ソフトウェアの画面デザインについては、上記のような著作権法による保護のほか、以前から意匠法による保護が検討されていました。そして、本年の3月27日の日経新聞でも「ウェブページやアイコンなどのデザインにも意匠権を認める方向」という報道がなされましたが、次回では、意匠権と画面デザインの関係について触れていきます。
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