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「求める人材像」を明確にすることの重要性
経営者必読! いまどきの採用・教育・若者
「求める人材像」を明確にすることの重要性
クレスコ株式会社代表取締役。大手総合人材サービス会社、採用コンサルティング・アウトソーシング会社(3社)の取締役を経て2009年4月、クレスコ株式会社を設立、代表取締役に就任。
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就活で学生が気にする企業情報の一つに「求める人材像」があります。
企業もホームページなどで自社の「求める人材像」を掲げていますが、
多くの企業が「コミュニケーション能力」や「積極性」を挙げていて
学生からするとみんな同じように感じられてしまいます。
そうした中で「求める人材像」を打ち出すことはとても大切であり、
「求める人材像」を明確にすることは、結果、より良い採用に結びついていくと思います。
今回は、自社オリジナルの「求める人材像」を明確にし、その「求める人材像」に合った人材を
採用するにはどうしたらいいかについてお話したいと思います。
●「求める人材像」とは
新卒採用は即戦力ではなく、将来に期待するポテンシャル採用なので、学生に求める素養が同じになりがちです。
そのため、多くの企業の「求める人材像」の表現がどこも同じようになってしまうといった側面があります。
しかし「求める人材像」とは、自社で採用する人材が備えていて欲しい能力や思考です。
例えば「コミュニケーション能力」と一言に言っても、企業によって求めるものは当然違うはずです。
自社オリジナルの「求める人材像」は、業績を上げている社員のコンピテンシーモデル(=高業績者の行動特性)を
とることで見えてきます。
業績を上げている社員の話を聴いてその考え方などをまとめたり、SPIなどのサーベイ結果を検討したりしていくことで
会社としてどういう人材を必要としているのかがハッキリしてくるはずです。
業績を上げている社員の行動特性が、自社の「求める人材像」に一番近い姿と言えます。
●「求める人材像」を明確にする意味
例えば、論理的思考の優れた人材が欲しいと言うのであれば、就職ナビやホームページの内容は勿論のこと、
説明会や選考なども論理的思考の優れた学生が興味を持つようなプログラム、論理的思考の優れた学生を
見いだせるような選考にすることが大切です。
それによって、学生だけでなく、採用する側にもどういう人材を採用していけばいいかということが浸透していくはずです。
「求める人材像」を明確にすることは選考基準の統一化にも繋がりますので、新卒採用戦略を決める上で最上位概念、もっとも基本的な事柄だと思います。
また「求める人材像」を明確に掲げることで、学生のほうも自分の行動志向と合わない企業への選考受検を避けることが出来ます。
企業も行動志向の合わない学生との接触が減れば、効率的に採用活動を進めることが出来、ひいては採用コストの削減にもつながります。
「求める人材像」を明確にすることは学生、企業の双方にとって大切なことなのです。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは「求める人材像」の捉え方に学生と企業との間に大きな差があることです。
例えば「コミュニケーション能力が高い」と言った場合、学生はサークル活動や宴会などを盛り上げて
潤滑に進行していける力などをイメージしがちです。
サークル活動などは気の合う仲間同士の集まりですが、ビジネスは相手ありきです。
その相手は必ずしも自分と考え方や利害が同じとは限りません。
そうしたいろんなタイプの相手の要望をしっかりと聴き、しっかり対応出来る力を企業は求めています。
そうした点を説明会や選考プロセスなどの過程で学生にしっかりと理解させながら、その能力を判断していく必要があります。
●任せる仕事によっても「求める人材像」は変わる
企業として「求める人材像」の基本を掲げても、採用する職種によって「求める人材像」は多少変わってきます。
野球やサッカーなどでポジションによって求められる力が変わってくるのと同じです。
でも、チームとして求める野球やサッカーのレベル、野球やサッカーに対する考え方は変わらないはずですし、
この部分がぶれるようではチームが勝つことができません。それは企業も同じです。
要するに「求める人材像」の基本がしっかりとあり、その中で求める部分の比率が任せる仕事によって少し変わる、ということなのです。
「コミュニケーション能力」をとってみても、百貨店のような接客業と自社製品を販売する営業とでは違うと思います。
様々な企業の商品を販売している百貨店のような接客業であれば、お客様の要望を聴き、たくさんの商品群の中から
お客様が求めているものを提案していくためのコミュニケーションが必要です。
また自社製品を販売している営業は、お客様の要望を聴くだけでなく、その結果、自社製品をアピールして
売り込んでいくためのコミュニケーションが求められます。
また、求職者と企業の間に立つ人材紹介業などは、双方のことを誇張せずに客観的に伝えていく
コミュニケーションが重要になります。
相手のことを客観的に伝えられる力を見るためには選考で他己紹介などを実施するといいと思います。
また、新卒採用では社内を活性化させるという目的で、あえて「求める人材像」とは違ったタイプを採用するケースもあります。
ただ、あまりにも違ったタイプを採用してしまったらお互いが不幸になるだけです。
自社の「求める人材像」の基本に合致しているけれど、ちょっとタイプが違うという学生を採用するのであれば、
築いてきた自社の社風を乱さずに新しい風も取り入れていけるはずです。
そうした細かいところまで考えた上で「求める人材像」を明確にしていければベストですが、実際にはそう簡単にはいかないと思います。
ので、まずは「求める人材像」について社内で今一度意見を出し合うことで、自社オリジナルの「求める人材像」を明確化にし、
新卒採用に対する社内の意思統一を図っていくことをお勧めします。
ちなみに当時、私がいたリクルートでは江副さんが「当社の採りたい人材は『強い子』『よい子』『元気な子』である(翌年は『賢い子』が加わりました)」とずっとおっしゃっていらっしゃいました。
このわかりやすい言葉で語られていた当時のリクルートの「求める人材像」、20数年経った今でも覚えているぐらいですから、当時の全社員への浸透度は言うまでもありません。
以上、何かのご参考になれば幸いです。