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クラウド、フレームワーク、、現場の社長はこう捉えます
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
クラウド、フレームワーク、、現場の社長はこう捉えます
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
前回、IT会社が短命に終わる理由について、以下の3つを挙げて説明しました。
- 知識の逆転現象が起こる
- ボスの成長に揺さぶられる
- 王より上位の神が存在する
これについて、IT業界の事情通の読者はやや違和感を覚えたかも知れません。
「なんか言っていることが古いんじゃないか?」「いまひとつしっくりこない」
と。
確かに。私自身が書きながらそう思っていました。
1.知識の逆転現象が起こる
これは、技術の連続的な革新によって、ベテラン技術者の積み重ね革新の努力が意味をなさず、若いプログラマーに最新の有益な知識が集まる、という現象でした。
しかし、実はここ3年ほど、ちょっと事情が変わってきた気がします。
ここでいう技術の革新とは、古くはWindows3.1くらいから始まるPCの出現に始まり、TCP/IPで簡単にLANが組めるようになり、クライアントサーバー型のシステムが一気に普及し、インターネットの常時接続が低料金で可能になり、サーバーがデータセンターに置かれWEBシステム化され、AjaxやJavaScriptやFLASHでリッチなUIが追及されるようになり...
このようなドラスティックな変革です。
これらは、確かに前回述べたようなデメリットを引き起こしはしましたが、一方では業界にとっては大きな特需ももたらしました。
しかし、ここ3年ほどはこういう種類の技術革新がほとんど無いのです。
いえ、確かに今も技術革新は起こっています。
たとえば2009年くらいからクラウドサービスが、これまでのASPやSaaS型のサービスに比較にならないほど柔軟で完成度高く出現してきました。
しかし、クラウドサービスとは、古くは企業に文房具を納めていた出入りの文具店がアスクルのカタログを配って回っていたような、あるいは、Amazonが小さな書店の利益を一気にかっさらったような、業界全体にとってはむしろジリ貧を巻き起こす改革と言えます。
つまり、これまでの技術革新は「やらないと儲からない」というレベルの話で、経営者は積極的にその若い技術者の知識を吸収しようとしていましたが、クラウドは「やらないと近く死ぬ(らしい)」「やってもいずれ死ぬ」という話でして、なるべくなら避けて通りたい、むしろ使えない技術であることを願っているような状況です。
こういう状況ですと、ベテランエンジニアの立場がなくなるということがあまり起こらず、その前までの状況とは少し異なります。
また、もう一つ技術革新という面では、2007年くらいから、cakeやらsymphonyやらpython、RubyOnRailsといったオブジェクト指向のフレームワークが、どこの開発会社でも採用され始めたということもあります。
しかし、この技術革新は、開発の効率化を進めはしましたが、決して市場の規模を大きくしたりはしませんでした。
まあプログラマー的には、忌々しい何十行にも渡るコードがシンプルに数行で美しく書けるということになれば、魅力のあるところだと思いますが、経営的にはあまり面白い話ではありません。
営業的にもお客様に目に見えるメリットを提供できませんし、できるとすれば「価格を下げられますよ」、という話にしかなりません。
いや、実際問題、開発の効率化ができたのかすら怪しいです。確かに、よく言われるようなメリットもあるにはありますが、開発者の教育コストが増大したり、どうしてもオブジェクト指向言語に壁を感じてしまい使いこなすことができないプログラマーが居るなど、悪い面もあります。
弊社もzendやcakeを導入していますが、まあ直感的には、いろいろ勘案して「導入した方がよかった」とは思いますが、会社によってはそうとも言えない会社もあると思いますね。特に古い保守案件を多数抱えているような会社では、その導入はリスキーです。股裂きに合う気がします。
「クラウドサービスの出現」「高度なフレームワークの浸透」
これらの変革は確かに大きいものではあるのですが、特段、開発会社を潤すものではなく、業界自体の注目度は冷めていると思います。
むしろ、「だんだん、俺たち開発者って要らなくなるんじゃないか?」「市場全体が萎んでいるのではないか?」という声が、実際に手を動かす現場でもささやかれ始めています。
「こんなシステムを入れたら、社員を○%カットできますよ」としたり顔で訴えて仕事を取っていた開発会社が、今度は自らが同じ謳い文句によって、整理されているという、なんとも笑えない皮肉です。
これが、2010年あたりのIT会社を取り巻く現状だと分析します。
ただ、私はIT業界はお先真っ暗だ、もうダメだ、という話をしたい訳ではありません。
どんな業界であっても、企業は、そしてそこに集まる一人一人の経営者・社員は、社会に価値を提供していかなければいけません。
需要につながる技術革新がないから仕事にならない、やっていけない、というのではなく、そこで価値を提供できなければ提供できる場所を他で探すか、自ら作るかしていかなければなりません。
それが、社会へのコミットメントというもので、等しく私たちが追及していかなければならないものだと思っています。
当然、こんなコラムを書いている私は、私なりの「脳内ビジネス」をうち立てていますので、まずは一個人としてこの環境を元に事業を見直し、その結果をリアルの会社経営に生かしていくつもりです。
その足がかりが、2010年の年末に始めました、この誠ブログでの執筆活動という訳です。