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片耳だけでいいですから、と社員の一人は懇願した

片耳だけでいいですから、と社員の一人は懇願した

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。



あれはもう5~6年前になるでしょうか...

入社間もないプログラマーが、就業中にヘッドフォンステレオを聞き始めました。

(おっとこれは見過ごせない)と思い、私は彼に注意しました。

「うちはヘッドフォンで音楽聞きながらっていうのは認めてないんだよね」

すると彼は、(ああ、やっぱり...)という残念そうな表情を浮かべつつも、少し粘って来ました。

「すみません。でも音楽聞きながらの方が効率が上がると思うんですが...」

「他の人から話しかけらても気づかないような大きな音では聞きません」

と。

「いやー、気持ちはわかるけど、ダメだねー。」

と言うと、最後には

「片耳だけというのではダメですか?」

と。

「いや、片耳でもダメ。俺たちはチームで仕事をしてる。で、常にチームの誰かが困ってる様子とか、お客さんからのクレーム電話とかに敏感になっていないといけないんだよ。誰かが困って人と相談しているのがなんとなく耳に入って、『ああそれなら自分、前の案件でやったんで知ってますよ』って教えてあげる。そういう関係がいいんだよ。音楽聞いてると、そういうのが耳に入りにくくなる。」

私はこう言って、却下しました。

確かに、表層を説明するとそういうことなのですが、私がもっとも恐れていたのはもっと本質的な部分です。

みんながヘッドフォンステレオを聞きながら自分の画面に閉じこもるようになり、会社全体の動きに無頓着になるのではないか?つまり会社がいくら困ろうが、『自分は今大事なプログラムと格闘中なんで』ということで、「我関せず」な雰囲気になりはしないか?と。

「小さい会社ってのは、そういうモンじゃないだろう...」

というのがそこにありました。

その考えは今も変わっていないのですが、その一件があっての数ヶ月後、我が社に『シェルモード』というルールが誕生しました。

これはどういう制度かというと、プログラマもSEも、『今どうしても集中してやりたい!』と思ったときに、社内SNSで『今からシェルモード入ります!』と宣言すれば、そこから1時間、ヘッドフォンの着用が認められ、かつその間は周りの社員も余計な話しかけをしない、外線電話は折り返しにする、という取り決めでした。

その代わり、その宣言ができるのは1日3回まで、連続使用時には5分以上のインターバルが必要、他人から話しかけられた時に気づかないような大音量で聞いてはいけない、社内に残っている社員が3人以上居ないといけないなどの細かい制限が設けられました。


冒頭の社員が言ったときには、「絶対ダメ」と言ってはみたものの、よく考えてみれば、私もフリープログラマーをやっていた時代にはヘッドフォンをつけながら仕事してましたし、その当時でも深夜や土日一人きりになれば使ってました。

そしてつまらない話しかけによって作業が中断させられると、特に複雑なアルゴリズム設計とかだと、再稼働するのには15分とかかかりまして、それが1日に2度3度続くと発狂しそうになりました。

このことは単に自分的に腹が立つというだけでなく、お客さんのデメリットにもなっています。

チームで助け合うのは大事ですが、一日に何時間かは『おい今から俺様、集中したいので、全員静かにしてくれ』と言いたくなる時はあります。

ならば、チームワークとヘッドフォン着用はうまく共存する方法があるんじゃないか、それを模索していくべきなんじゃないかと思ったのです。

今は社員全員で話し合って、ルールの改定を重ね、1日3回の制限はなくなり、SEは電話のナンバーディスプレー見て、自分宛だったら取る、というルールに変わりましたが、これはなかなかうまく回っています。


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ウチのような小さい会社が段々大きくなると、ルールばかり多くなって居心地が悪くなるというのはよくあることです。

だからルールを制定するときには、それ相応の大きなメリットがあることが大事です。

会社のルールの目指すものは大きく二つ

  • 社員の働きやすさや仕事の効率化につながること
  • これはどうなんだろう?という迷いを解き放つこと

これだけだと思います。

決して、メンバーを束縛することによって自由な職場雰囲気、自由な発想を壊すようなものであってはいけないと思います。

そして会社のルールは、決して経営側が楽をするためのものであってはいけません。

チームがうまく機能するためのルールを目指すのはいいですが、経営者は決して楽にはならないものです。

社員と経営者は利益が相反するところがありつつも、同じ目的地に向かう仲間ですので、その絶妙なギリギリなラインを目指してルールを考えていかなければいけないと思います。



追記

★現在、プラムザではシステムエンジニア募集しています。
 今回は、未経験者をメインターゲットにしています。


 もちろん経験者も歓迎です!