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「それにしてもよく時間を読む」的なマネージャー
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
「それにしてもよく時間を読む」的なマネージャー
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
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「それにしてもよく風を読む」
は、名作『風の谷のナウシカ』で、ユパがメーヴェを見事に操るナウシカを見て、つい惚れ惚れと漏らした言葉ですが、すぐれたチームリーダーはそれと同じように、よく『時間』を読みます。
私もサラリーマン時代からこれまでの間に何度か、そのようなマネージャーの仕切るプロジェクトに参加したことがあります。
ここで『時間を読む』とは、納期に合わせてマイルストンを立て、上手に進捗を管理するということに留まりません。それだけであれば、正直、経験半年のシステムエンジニア候補生でも出来ます。
すぐれたチームリーダーが『時間を読む』とは、時間に伴って移り変わるメンバーの心の内や立場などを事前に予測して、その時々で施すべき適切な対応を考えておくということです。
たとえば、工期が3ヶ月くらいかかる先端テクノロジーを使わなければならない開発仕事があったとして、
- 先端技術大好きだが飽きっぽいAさん
- 技術的には大したことがないが堅いコードを書くBさん
- Bさんを慕うが若干心の弱いC君
- Aさんに憧れる新米プログラマーD君
の4人がアサインされた(集められた)とします。
このとき、まずそこそこのプロジェクトマネージャー(PM)であれば、キックオフの段階でこのメンバーで開発する際のポイントを判断します。
- Aさんは当然この手の技術には明るいし、積極的に技術調査をしてくれそうだ。
- ただコードが若干前のめりで雑なのでどうだろうか?
- そこはBさんがうまくカバーしてくれるだろうか。
- メンバー4人がAさん派とBさん派に別れてしまいそうなので、そこは私の腕の見せ所だな。
- こまめにミーティングや声掛けをして、少しでもおかしな雰囲気が見て取れれば都度テコ入れするか...。
という感じです。
いや、これだけでも十分優秀なPMなのですが、しかし、本当に経験豊富なPMは、ここで、チームメンバーのそれぞれの心の中に、流れている時間とプロジェクトに流れる時間の両方を巧みに読み、マネジメントします。
- Aさんの時間の流れは、前半は極めて早く流れているが、1ヶ月くらい経ったあたりで極端にのろくなる。
- 逆にBさんは、始めは新しい技術を使わなくても古い技術で十分対応出来るとか、文句を言いがちで時の流れはゆっくり。しかし、1週間くらいで腹を決め、一歩一歩確実に歩みはじめる。
- C君は、前半、心の動きが不安定になる。それは、信頼しているBさんよりAさんの方が立場が強く映るから。
- D君は、後半、このプロジェクトに魅力を感じなくなる可能性が高い。Aさんがありありと飽きた態度を見せるようになるから。
こんな読みをして、チームのフォーメーションを考えます。
- Aさんは、始めはこのチームのリーダー的に動いてもらうが、1ヶ月くらい経った段階で、別プロジェクトにアサインさせてそちらをメインに、こちらのプロジェクトではアドバイザー的な役割にしよう。
- 飽きっぽいAさんなら、コーディングが回り始めた後半はチームの雰囲気的に居ない方がよいし、その方がAさん自身のモチベーション的にもよさそう。
- 逆にBさんは、始め、新しいことを調査したがらないので、Aさんと積極的に情報交換させて刺激させてあげる必要がありそう。
- AさんからBさんに技術伝承させ、BさんからC君とD君に伝達する流れを作っておこう。そうすれば、C君の心が安定する。
- D君は、プロジェクトの後半、モチベーションを下げ集中力を欠く可能性があるので、たとえばBさんの仕事のやり方を盗んでプロジェクトの終了後にレポートせよ、みたいなお題を出しておこう。
このようなことを考えます。
しかし、これだけいろいろ考えていながら、このリーダーがメンバーに対して行うアクションは極めて少ないのが特徴です。それは、煮込み料理を作るときに、鍋に素材を入れたら、ちょっと味見をして、あとは何時間もほったらかしにしてしまうのと似ています。
途中、2~3回箸を差してみたり味見するかも知れませんが、特に何もする必要がないと思えば、大胆に放っておきます。この見ているんだか見ていないんだか分からない状態でほったらかしが出来ると、チームメンバーの自主性を最大限引き出すことができます。
アサインされたメンバーが能力的に不足無いにも関わらず、どうもうまく回らないことがあるのは、リーダーがこの種の『時間』のマネジメントができていないのが原因かもしれません。