誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

長期休暇が取れないのは、長期休暇を取るのがうまいマネージャがいないからだ

長期休暇が取れないのは、長期休暇を取るのがうまいマネージャがいないからだ

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。



やっとセミなどガンガン鳴くようになってきまして、みなさん夏休みの時期ですね。

弊社の場合、全体一斉の夏休みというのは存在しなくて、7月から9月の間のみで使用できる有給休暇を4日間支給して、自分で時期を調整して自由にとってもらっています。

お盆の時期に田舎の実家に帰りたい人もいるでしょうし、その時期に休んでもどこ行ったって混んでるのでちょっと時期をずらして旅行に行ったりしたい人もいますからね。

ただこの運用が結構むずかしいです。自由とは苦痛を伴うものですね。

会社でお盆休みが決まっている会社では、休みを取るのに何の苦労もないです(下手するとお客さんと一緒に会社の制度を悪者にできます)が、「自由に決めていい」と言われると、社長、チームのマネージャやメンバー、顧客、彼女や彼氏や家族、犬や猫やハムスターなどあらゆるステークホルダーのことを考えないといけなくなります。

いっそのこと「休まないほうが楽」ということになりがちですが、私は9月になってまだ休んでないと「早く休みなよ」と言って急かします。ギリギリになるとさらに調整が難しくなりますが、やはりオフは大事です。

ちゃんと休まないと、体を壊したり、精神を壊したりしますし、一番大事なのはある程度長い時間を取って、日々の業務を離れ、仕事について、ひいては人生についてゆっくり考える時間を取ることだと思います。

「半年間、忙しかったなぁ」

でもいいですし

「この仕事、本当に自分に合ってるのかなぁ」

でもいいですし

「将来的には海外で仕事したいなぁ」

でもいいです。

ちゃんと一度立ち止まって、自分の立ち位置を再確認することが大事だと思いますね。

それで、「やっぱり自分にはプラムザの仕事が一番合ってる!今はとりあえずビーチで焼きイカ食う!」と思ってくれれば、そんなに嬉しいことはないです。

ということで、私はちゃんと休みは取ってもらう派なのですが、「休め、休め」と言ってもなかなか難しいのもわかります。

その一番の原因は、社長やマネージャがちゃんと休まないことです。

上がちゃんと休む。

そして、休み方を教えてあげる。

それができないと、部下は休みにくいですし、強引に休むとお客さんからクレームが来てしまいます。なので、私は特にマネージャにこそ、うまく休むように言っています。

あ、嘘つきました。

彼らはよく休み、特に長期休暇を取るのがとてもうまいので、「うまいよなー」と感心してるだけでした。


そんな彼らのテクニックを5つほど紹介します。


・キャラを作る

これはこれから語るすべてのストーリーの土台作りです。まず入社時点から自分は定期的に長期休暇を取る人間であることを内外に吹聴しておくことです。

たとえば

「自分は1年に1回は海外に行かないと死んじゃう体質なんですよ」

とか

「盆と正月に家帰らないやつには、ばあちゃん遺産残さないとかって言ってるんですよ」

とか言っておくことがポイントです。この下準備ができてないと、突然「長期の休みを取らせてほしい」と言うと、みな驚いてしまい、まず態度を硬化させてしまうとこから入ってしまい、リカバリーが難しいです。


・オンの時は責任感を持って仕事する

オンの時には、ちゃんと責任感を持って仕事することです。

特に大事なのは、普段から忙しい時には残業や休出を厭わない態度を見せることです。それをすることで、上司としては「彼がお客さんやチームメンバーに迷惑がかかるような状態で休むはずがない」という印象を持ちます。お客さんとしても、「きっと休み中でも何らかのカバー体制を作って行ってくれるんだろうな」と思います。

そういう信頼関係が築けていれば、ちょっとした無理は受け入れやすくなります。


・早めに宣言する

休みの日程の目星をつけたら、1か月前などに早めに宣言します。お客さんには1週間前とかでもいいと思いますが、社内的には早いに越したことはないです。

そして、何度も何度もことあるごとにアピールします。

私は社員から「何月何日から何月何日まで、夏休み取っていいですか?」と聞かれたら、「いいよー。取んなー。」と答えますが、その1分後に忘れてます。

人のスケジュールなんてどうでもいいのです。それよりダイエット中にあって今日の昼何を食べるかの方が圧倒的に重要なテーマです。

その後、会議や飲み会の時などに、何度も何度もしつこく聞かされるとだんだん「あ、彼は8月末ごろ休むのかー」と認識が始まり、しかしそれでも漠然とした意識でしかなく、Googleの週間カレンダーに予定が表示されるようになって、やっと「おっと、こんなところでヤツは休むのか。うーむ...。言い伝えでは聞いていたような気がするが、ここか...。ここで本当に休むんだ...。」と確実に認知するのです。


・一度決めた日程に関しては一切妥協しない

お客さんにも1週間や2週間前には通知する必要がありますが、もう日程については確定した前提で話をして、たとえただの放浪のキャンプとかなのでずらそうと思えばずらせる、というのであっても、そのあたり、一切揺れてはいけません。

もちろん仕事に一番影響の少なそうな時期を狙って休みを取るべきなんですが、その日程を決めてから1か月くらいの間にやはり状況は微妙に変わってくるものです。

何か微妙な状況の変化あるたびに揺れていると、お客さんや上司は「予定は強く言えばずれる」と学習し、いつまでたっても休みなんて取れません。まあ、これは交渉ごとの基本ですね。


・メールチェックや社内SNSチェックする。携帯は時間を決めて折り返す。

実はこれは大事なことなんですが、オフとは言っても、1日2回くらいは通信ポートを開くべきだと思います。メールチェックをしたり社内SNSにログインしたりして何か緊急事態は発生してないか確認します。

また、携帯の留守電などもチェックし、返事が必要なら折り返します。あらかじめ、「電話はお昼と夕方に折り返せるかもしれない」と言っておくとよいでしょう。

私もかつては、オフなんだから完全に仕事を離れて休みたい、という気持ちでいましたが、そうすると緊急用件がどんどん溜まってしまい、とんでもない事態を引き起こしたり、お客さんや上司にストレスを溜め、最悪の場合、回復不能な不信感を持たれてしまう可能性があります。

そうなってしまうよりは、ちょっと面倒でもこまめに対処をしておいた方がいいです。これは次回の休みのために必要な投資作業です。

メールとかをチェックして、どうでもいい内容であれば返事しなければいいですし、あるいは「休暇明けに一番で対応させていただきます」と返しておけばいいので、実際心がブルーになることなんて滅多にないはずです。

基本的に仕事は一切しない、というポリシーのところに、どうしても対応しなければならない電話とかが入ってくるとかなりブルーになりませんか?

それよりも基本的に緊急事態があれば喜んで対応する、というポリシーにしておいて、「今日も緊急の用件はなかった」のほうが精神的に安定すると思います。

また、逆に休み中にメールや電話がつながった、ということでお客さんや上司、チームメンバーはとてもハッピーな気分になり、帰ってからの仕事もやりやすくなることもあり得ます。


と、こんな感じです。

--------------

なんでやねん!?

なんで、当然の権利である夏休み(夏季有給)を取るために、こないに苦労しなければあかんねんやねん!?


と、都内在住で関西弁に憧れる方は言われるかも知れません。

でもそれはもう仕方がないのです。

あなたは自分が思っている以上に他人から必要とされていて、そして思っている以上に存在は軽いのです。

ちょうど水や空気のような存在ですので、無いことに気づくとみな突然困り出すのですが、それが無くなる日まで、無くなることを現実のものとして想像できないのです。

仕方がないので、あなたが頑張るしかないです。

あるところで、緻密に繊細に相手の気持ちに立つ。あるところで頑固に融通を利かせず。そして嫌な事態を予見して先手を打って対処。

これによって、お互いのストレスというのは大きく軽減され、むしろ信頼関係がより厚くなることもありえます。


そのあたりをよく理解して、うまく休暇を取ることを実現していると、後輩もまたそれに倣ってうまく休めるようになるのです。

長期休暇が取れないのは、長期休暇を取るのがうまいマネージャがいないからです。

もしいないなら、あなたが前例を作りましょう。