誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

就職難時代に大学に期待すること。

就職難時代に大学に期待すること。

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。



相変わらず大学生の就職内定率が悲惨な状況のようです。

新聞・ニュースの報道では、学生の就職活動の負担を少しでも減らそうと、いろいろな打開策を提案されていますね。

東京新聞:説明会12月 面接4月 13年入社から適用:経済(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011011302000041.html

これが大学生にとって、嬉しい話なのかどうなのか、よく分かりませんが、ただ、ぶっちゃけたところ、今の就職難は

『日本は、平均して今それほど生活に困ってない』

『欲しい物はバイトでも何でもちょっと頑張れば手にはいる』

『見栄を張って高い買い物をする意味が分からない』

という状況および風潮が直接の原因ではないでしょうか?

困ってない人が多い地域においては、経済活動を行う企業の社会的存在価値は低下する。必然的に、社員もそれほど必要ない、という構図だと思います。

地球温暖化でも介護問題でも中国の脅威でもいいから『国民よ、もっと困れ』というのが、もっとも短絡的な景気回復の手法なのでしょうが、そういうのもあまり褒められた政策ではないです。

先日、

『404 Blog Not Found:職がなければ遊べばいいのに - 書評 - コンピュータが仕事を奪う』
(http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51584549.html)』

という記事があって、よく読ませていただきましたが、これは本当に正鵠を射た主張のような気がします。

要約すると、家電やコンピュータが発達すれば、仕事は減って当たり前。仕事が無くなったのに、仕事を探すのはおかしい、みんなで遊べばいいじゃないか、という主張だと思います。(家電のことは言ってないですが、そういうことだと思います)


...といって、社員数10数名規模の会社経営者がそんな俯瞰しきった話をしても始まらないので、地を這うような現実的なお話を少々。

弊社では、ほとんど新卒大学生というのは採っていません。その一番の理由は、社会人としての一般的な常識を教えている余裕がないからです。

これは別に教育にコストを全くかけたくないというのではなく、そういう社会人常識はすでに有るという人材をベースに、弊社ならではの戦場で本当に戦える開発ノウハウを教育していきたいからです。

基本的には、1ヶ月程度座学と演習問題を行ったら、実際の案件の中で先輩に付きながら仕事を覚えてもらうというスタンスです。

座学は、人にもよりますが、かなりのハイピッチで進んでいきます。多少分かってなくても、とりあえず先に進みます。

その根本思想には、人間は具体性のないところには何も学ばない、ということがあります。わかんなきゃ、まあいいや、なわけです。(もちろん、どうしても分かってもらわないといけないことはありますが...。)

それよりも、早く実戦に参加することが重要だと思っています。その方が勉強する側にとっても面白いし身につくと思います。

それで行きますと、新卒で、電話の取り方や名刺の渡し方、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が何より大事だ、とかいうお話はできればどこかでしっかりと学んできていていただきたいです。

その教育がしんどいので、必然的に新卒ではなく中途採用が多くなるのですが、といって、その基礎教育を大企業さんにお願いするというのもあまりに申し訳ないので、私が言いたいのは、こういうどこの会社に行っても必要なスキルというのは、大学で教えてはいかがかと思うのです。

もちろん、大学は学問を行う場であって職業訓練の場ではないというのは分かります。

しかし、就職内定率にあえぐ大学的にはそんなことも言ってられないでしょうし、その程度の教育は、多くて8時間もあればできます。

『8時間くらいなら、お宅の社内でやれよ』と言われるかもしれませんが、教育とは、頭に入ってから定着するまでに一定の時間がかかります。しかも、プログラミングであったり設計手法であったりといった、他の実務スキルと一緒に一度に教育しますと、どこかで頭がパンクして抜け落ちる部分が出てきます。

大抵の場合、脳内で取捨選択が行われ、インパクトのない常識的な内容はおざなりにされがちです。だから、社会人としての一般常識のようなものは、弊社に入社してきた初期段階では教育したくないのです。

たぶん、これは我々と同じような規模の会社では、みなそうだと思います。

 

それともう一つあります。

  • 会社は利益を追求する組織であって、教育してもらえる団体ではない。
  • 会社の意思決定には、民主主義など存在しない。
  • 労働はサービスの提供であって、消費ではない。自己実現の場であるなどとんでもない。

このあたりの原理原則論もまた大学で教えていただけないかと思います。

これは実は、先の電話のかけ方や名刺の渡し方以上に重要な話で(むしろ、そっちはどうでもいいくらい)、上場会社のものすごいお金をかけた新入教育でもなかなかうまく教えられてはいないと思います。

それはおそらく、会社自らが、利害の対立する(本当は対立していないのに、対立すると信じている)新入社員にこの手の教育をしようとすると、いろいろ軋轢が生じてしまうからでしょう。

実際、ウチでも教えにくいですし、しっかり教えるとブラック企業扱いになってしまいます。

それを大学(専門学校でもいいですが)で、むしろ厳し目に教えておいていただければ、実際に会社に入った時に『ああ、脅されていたほど無茶なことを言われる訳ではないんだな』と感じ、離職率の低下にもつながると思うのです。

ウチの会社だけの話ではなく、どこの会社もやってもらいたがっているのではないかと思いますね。

 

何を言うか、教育機関は、企業の下請け組織ではない!

ごもっとも...。