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社内目標が大嫌いな社長が作った社内目標(1/2)

社内目標が大嫌いな社長が作った社内目標(1/2)

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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私の経営する会社はコンピュータシステムの受託開発をしています。簡単に言うとプログラミングの会社です。企画やインフラ設計、サーバ保守などもやっていますが。

これまでこの誠ブログにて、何度か会社の目標についてお話ししてきましたが、要は私は全社的な目標を立てるのが大嫌いなのです。

そんな私ではありますが、今回ちょっと気合いを入れて全社で共有する数値目標を考えてみました。

弊社と同じようなプログラムをメインとする会社や、デザイン制作会社など「手を動かしてナンボ」の会社であれば、参考になるのではないかと思いますので、公開いたしますが、興味のない方にはまったくつまらないお話かも知れません。


▼納得できる目標がみつからない...

私が、会社の目標を立てたがらない理由には、以下のようなことが挙げられます。 

  1. 全員が目標とすべき指標が見つからない。役割別に作ると無用なセクショナリズムを生む。
  2. その目標を達成したといって、業績的に好ましい状態とは言えないことが多い。
  3. 従って目標を達成した際に、インセンティブにつなげにくい。
  4. 目標がしっくり来ていないので、目標を達成しなかった時に、反省のアクションが起きない。
  5. 目標を達成できないことが続くと、社内に目標なんて達成できなくても別にいいんだという雰囲気が生まれ、といって私自身、その目標が本気で重要とも思っていないので、別に達成できなくてもいいかな、という何とも締まらない状態になる。

まあ要するに、私が納得できるようなしっかりした「目標立て」が出来ないので、その次のすべてのアクションがグズグズなわけです。

・売上目標
・利益目標
・獲得成約数目標

この手の目標がどうもしっくりこなくてイヤです。開発屋にはそぐわないでしょう、こういうのは...。

しかし、そうはいっても、社長の一番の仕事は、社員の働きやすい職場環境を作ることにあると言われます。

会社の目標をきちんと打ち出すことで、仕事がやりやすくなるのであれば、それはなんとか作らなければならないでしょう。今回、かなり真剣に考えました。


▼これなら自信を持って「みんなで頑張ろう」と言える!

そんな私が、これなら自信を持って全社員に「これを目標にして頑張ろう!」と言える数値目標を編み出しました。

結論から言うと、こんなグラフを作ります。
kadou_kadou.PNG

(数字は、完全なダミーです) ※クリックで拡大表示します。

この毎月の「稼働率」を「1.00」以上にすることを目標にします。プログラマもシステムエンジニアも営業も経理も一丸となってこの目標に向かってアクションを起こします。

 

▼稼働率を作業日報から計算せず、売上から計算する

ここで「稼働率」とは、1人の社員が何人月分の売上に貢献したか、を表しています。

社員に毎日工数入力させてそこから稼働率を出す方法はイヤです。それをやると、営業や経理が「オレたちにはどうにもならん」と思ってしまうからです。

ということで、こうです。

「稼働率」=「売上」/「人月単価」/「投入人員」

要するに、たとえば10人の社員で人月単価80万で売っている会社であれば、月800万は稼いで来ないといけない、というお話です。(数字はフィクションです。くれぐれも...。)

800万稼いでくれば、稼働率が「1.00」になります。

「ん?なら始めから売上目標を800万に置けばいいんじゃないのか?」

と思われる方がいらっしゃると思いますが、開発屋にとって意味のある売上は「手を動かすことに対する対価部分のみ」です。

売上の中にはサーバ等のハードにかかる費用やソフトウェア代金、協力会社に支払う外注費、データセンターに支払う費用などが含まれてしまっています。

これがあるので「売上目標なんて何の意味もない」と常々思っていたのです。

なので、正確には、上記「売上」は「粗利」ですね。

書き直しておきます。

「稼働率」=(「売上」-「(案件固有の変動的)支出」)/「人月単価」/「投入人員」


▼さらば発生主義。現金主義に回帰しよう。

そして、もう一つ。これだけでは、ワタシ的にどうも納得いきません。この計算方法で、稼働率「1.00」を出そうが「3.00」を出そうが、資金ショートを起こせば会社は立ちゆかなくなってしまいます。

従って、売上や支出の計上タイミングを発生主義から現金主義とします。なまじっか簿記を知っていると

「現金主義?子供の小遣い帳じゃないんだから...」

という発想になりますが、その堅い発想こそイケてないことに気づきました。

ちなみに、現金主義は家計簿や小遣い帳のような馴染みやすい考え方。発生主義とは、売上は請求書を出した段階で計上し、費用はその効果が発現したときに計上するという考え方です。無茶です。

プロマネは、顧客の支払サイトはもちろん、長期プロジェクトになればご入金いただくタイミングも意識すべきです。この交渉をプロマネが契約の段階でしてもらえないと、後からは変更できず、大変な苦労をします。

しかし、意外と社員は、「この案件は利幅がいいはずだ♪」などと余裕で作業していたりするのです。

ここを全員に意識してもらうという意味で、現金主義による目標には大きな意味があります。

 すなわち、まとめますと

「稼働率」=(「入金額」「支出額」)/「人月単価」/「投入人員」

です。

ここまでの話をまとめますと、こうです。

kadou_arari.PNG

 どうでしょうか?そんなに難しくないです。計算も四則演算だけで簡単にできます。

難しすぎる目標は、たとえそれが崇高な思想によって導かれた物であってもうまくいきません。

なぜなら、私を含めた会社の構成メンバーの一人一人が、何をどうすればどれだけこの数字が上がるのか、具体的にイメージできないといけないからです。

この数値目標で、「1.0」といわず「1.5」、「1.8」という数値がポンポン上がってくるようであれば、これは間違いなくうまく回っている開発会社です。ストレス無くインセンティブにもつなげられます。

そして、 

  • 新しい営業フックの発案
  • 新しい開発フレームワークの導入
  • 情報共有ツールの導入
  • 各種セミナーへの参加
  • アーロンチェアの購入

そういったアクションが、すべてこの数値を「1」以上に押し上げるために行われるようであれば、それを否定する理由は私にはありません。

そして、そのアクションは、価格や納期の面で顧客の満足度向上につながり、会社の市場価値を押し上げます。低不具合率化の努力も請求漏れの無いようにする努力も、もちろんこの数値を押し上げます。

ただ一点、人件費についてだけは、全然考慮されていないので、無限に残業されても困るのですが、そこは今まで通り指導することとします。ウチの会社は文化的に徹夜はまず無いので、まあたかが知れているとも言えます。

ということで、マネージャークラスには発表してあり賛同を得ましたので、3月からさっそくこれ、導入してみたいと思います。

まあ、何事も最初はうまくいかないものです。しかし、ここからチューンナップして順次進化させて行きます。

同業者の皆様のご参考になれば幸いです。

次回はこの極めてリアリスティックな目標を、どう楽しく「見える化」するか、というお話をしたいと思います。 

追記

今回のアイディアは、先日、株式会社武蔵野さん(ダスキンの会社)の会社見学会に参加させていただき、その前後のセミナーで小山昇社長がお話になっていたことを存分に取り入れさせていただいています。

小山社長がこの会社目標について、何とおっしゃられるかわかりませんが、私に取りましては、あのセミナーで寝ぼけまなこが火花を散らし、頭の中で何かが弾けました。

考えているようで考えていなかった。まるでピンぼけ。経営者として精進すべきことはまだ果てしなくあると思いました。

また、お誘いいただきました、北良株式会社の笠井社長にも大変感謝しております。