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経営とカネの話

経営とカネの話

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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先日のエントリーの続き的な話です。

これから起業しようという方、あるいはその夢を胸に秘める方へ。
経営とカネについての話です。

 

私は起業して3~4年目くらいで、経営者としてのカネの使い方を学んだ気がします。いや、今でも完璧にうまくできる訳ではないですが、「うまく使うということがどういうことか」は理解しているつもりです。

親御さんが会社経営者であったり、もともとそういう素養のある特異体質な人でないかぎり、経営者的なカネの使い方が分かっている人はほとんどいないでしょう。本を読んだり人から話を聞いて、突然わかってしまう人もまずいません。

「だいたい分かりますよ。おカネはおカネに働かせて稼ぐのでしょう?」

と言われる方もいるかも知れません。

これは金持ち父さんのロバートキヨサキ氏の言っていた言葉で、ある意味的を射ているのですが、言うは易しです。

実際にやってみない限り、この本当の意味が分かることはまずなく、大抵は資金の使途についての計画書を作り、その通りに「消費」していくだけです。

ちなみに、ロバートキヨサキ氏はこの一連のシリーズ本の中で、主に「投資ビジネス」を中心に述べていて、私のような自ら手を動かす経営者はかなりdisられているのですが、彼の言っていることは私でも頷けることが多いです。

結局、会社経営は、戦争のようなもので、武器や戦術、規模は違っても目的ややっていることは常に同じなのです。

戦陣のどこに立つのが好きか、どこに立つ能力があるか、はまた違いますが。


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話をお金の話に戻します。

経営で動かすお金は『カネ』というカタカナで表記しまして、これは普段財布に入っているお金とは別物です。

「おカネはおカネに働かせて稼ぐ」

とはすなわち

「カネを使ってカネを稼ぐ」

ということですね。


これを聞くと、みなさんの中にはスロットマシンのようなゲームを思い浮かべるかも知れません。

経営者はサラリーマンじゃないんだ。これは投資だ。恐れずどんどんコインを入れなきゃ勝てっこない、と。

しかし、私の感覚では会社経営はスロットマシンというよりもコイン落としゲームに近いと思います。あのゲームセンターに必ず1台くらいは置いてある、コインでコインを押し出す系のゲームです。中に押し板があって、前後にひたすら動いているアレです。

この2つのゲームの違いが分かりますでしょうか?

スロットマシンはブラックボックスで、基本的に当たりのアルゴリズムが外からは伺い知れません。

それに対してコイン落としゲームはガラス張りで、何をどうすればどうなって儲かるのか、かなり物理的な感覚でわかります。

そのゲームの経験プレイ時間が同じであれば、コインの質量や摩擦、転がり方を感覚的に分かっている大人の方が子供より上手いというのも、経営とよく似ています。

コインの物理的な動き方と着地点を読み、押し板の動きを出来る限り正確に予測し、うまく手前に押し出されるパターンのアルゴリズムを理解し、1枚のコインを打ち出す。そして、多少の予測違いはあるにせよ、きちんとコインを回収する。

この一連の流れが体感として分かったときが、経営者としてのカネの使い方がわかったということだと思います。

ここでは勉強が得意不得意とかは関係なく、屋台の焼鳥屋さんでもバーのママさんでも理解していると思います。自分一人の判断で経営しているのであれば、ですが。

さて、このコイン落としゲームのアルゴリズムを研究するとき、もっとも厄介な存在が、横で見ていてしびれを切らしたお母さんです。

「ああー、もう、どんどん無くなっちゃうじゃない」と、お母さんが勝手にコインを換金してきたり、あるいは「いつでも換金してきてあげるから言ってね」と持ちかけてしまうと、好奇心旺盛な探求者であったはずの子供は、もうそのゲームのアルゴリズムよりも、お母さんのフトコロ事情や上手な頼み方ばかりに興味が行ってしまいます。


アルゴリズムは分かった。両側から交互に10枚入れなければこのゲームでは勝てない!だからコイン換金してきて!

これはいいです。

しかし、

アルゴリズムは分からないが100枚あれば30分遊べそう。だからコインちょうだい!

というのでは何の成長もありません。


同じ『コインをちょうだい!』という子供でも、それが前者か後者かの違いが分かる方法があります。

100枚のコインをあげようと言われたらどう答えるか、です。

アルゴリズムがはっきり分かってしまった子供であれば、

100枚あってもこのゲームでは意味がない。偶然のリスクを考慮しても30枚あれば十分。しかし、私は同時に1台しか操作できない。従ってこのゲームで勝つのには一定の限界がある。

とか言うことでしょう。そんな子供はイヤですが^^;


一方何も分かっていない子は、

使えるタマは多いに越したことはない。リスクヘッジのためにできるだけ多くもらっておくか。余ったら何か別のゲーム機で使えるかも知れないし。

と言うでしょう。こんな子供はもっとイヤですね...^^


現実の経営の話では、たとえば私なら1年で5%~10%増やす自信のある資金というのがあります。それ以下ではほとんど意味がない、それ以上では運用しきれず逆に利益率を下げるという得意レンジです。

つまり、これから会社を立ち上げようという若き(実年齢は若くなくてもおカネの使い方については若い)アントレプレナーのみなさん。

起業したらまずはしっかりとコイン落としゲームのアルゴリズムを見極め、カネをきちんと使って回収するパターンを習得しましょう。

そして自分の得意な資金運用レンジをつかむことです。これをしらずにベンチャーキャピタルの話に乗ったり、銀行からの借り入れを行うことは危険すぎます。

なにごとも焦らず、です。普通はここまで何年もかかると思います。

ロバートキヨサキ氏も、投資の勉強はすなわちリアルビジネスの勉強だと言っていたような気がします。(もう読んだのは10年くらい前なので忘れましたが)

以上、会社をたった一つしかやったことのない経営者の私見でした。会社経営に王道やルールはありませんから、これが絶対ということはありませんけどね。