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影で人知れず頑張ってる人に甘えてはいけない
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
影で人知れず頑張ってる人に甘えてはいけない
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
手前味噌で恐縮ではありますが、プラムザにはいくつかユニークな制度がございます。
必ず45分でなんらかの結果を出さなければならない「3QC」という会議の制度、1時間に限り音楽を聴きながら仕事してよくて、その間周りの人は話しかけ等に気を遣う「シェルモード」、昼食を45分以内に戻ってきたら休憩時間分の賃金を手当としてお返しする「ゴールドランチ」などなど、、、他にもいくつかあるのですが、普段あまり語られていない「アンパンマンコンプガチャ」という制度があります。
今日はその話をしてみようかと思います。
実は、その制度を説明しようとするとかなり長くなってしまうのですが、簡単に言うと滅茶苦茶簡単です。
要はガチャガチャを回して、出てきたアンパンマンのキャラクターが10種類全部揃うと現金伍千円がもらえるよ!というものです。
この制度の始まりは、3年ほど前、巷で「コンプガチャふざけんな、グ○ー、D○NA金返せ!」という怒号と、それに対して「すみません!監督省庁から怒られる前に廃止しますので、ご勘弁を」というゲーム会社の自主規制の嵐が吹き荒れていた頃に遡ります。
その中で私は一人、こう叫んでいました。
「これはいい!!」
● 会社には、誰もやりたがらない仕事というのがある
会社には、「誰がやってもいいけど、誰もやりたがらない仕事」というのがあるものです。
たとえばトイレ掃除であったり、観葉植物の水やりだったり、要らなくなったサーバの廃棄であったり。
他にもまだまだあります。
蛍光灯の取り替えであったり、飲み会の幹事であったり、シンクの掃除であったり、こんがらがったLANケーブルをほどく作業であったり、ネットワーク構成をまとめる作業だったり、「お客さんあと10分で来ちゃうよ、急いでお茶買ってきて」だったり、クリスマスツリーの組立てであったり、ネットワークの調子が悪い時に原因を調査したり、情報漏洩事故を起こしてしまったときにお客さんへ謝りの電話をかけたり。(最後のは冗談)
昔、このアンパンマンコンプガチャが無かったとき、そういった仕事は社内一モラルの高いH君がほとんど一人でやっていました。
もちろん、私も査定面談の時には「いつも助かってるよー」「H君はプラムザの心だね」「マン・オブ・モラルだね」などと持ち上げて賞賛していまして、給料の方もドカッと弾んで、、、いたらカッコよかったのですが、無い袖を振るのはなかなかに難しく、苦し紛れに「ああいう仕事はみんなで持ち回りでやるようにした方がいいよね?」とか聞いてみると、「いえ、気づいた人がやればいいと思うので大丈夫ですよ(ニコツ)」と返ってきまして、(なんて素晴らしい男なんだ!)と思って甘えてしまっていた次第です。
しかし、そんな状態が1年も2年も続き、やはりちょっと待てと。
私は、たまたま気づいたときは感謝の言葉を口にしているけど、気づいてないときもあるはず。それはとても申し訳ないし、そして、他のみんなはどうなんだろうかと。
トイレが常に綺麗なのも、観葉植物が生きながらえているのも、不要なサーバがいつのまにか無くなっていくのも、みんな妖怪のせいにしていていいのか、と。
やっぱこういうのは、見える化しなきゃいけない。
もちろん本当は持ち回りでやった方がいいけど、不得手な人に「やれ!」と言うのもあまり楽しい話ではないし、嫌々やるのは仕事効率が悪いし、「開発の方が忙しくてやってられないですよ」とか言われるとお互いストレスが溜まるし、そんな感じでタラタラやっているとH君は率先してやってしまうに違いないです。
H君の言うように『気づいた人が気づいたときにやる』というのも確かに気持ちのいい正義ではあります。
● 気づいた人が人知れずやっていればいいのか
ただ、少なくとも自己犠牲を払ってやってくれている人には、「あいつが好きでやってるんだからおら知らね」じゃなくて、きちんとみんなでそれを認識してどこかのタイミングで感謝しないといけないよな、と思い始めました。あ、私だけじゃなくてマネージャ一同ですが。
かように考えて、以下のような制度を考えました。
- まず、前述のようなめんどくさい業務を見つけてはマネージャがBackLogというタスク管理ツールに登録する。
- その際、担当者は空白にしておき、それとともに、作業完了時にもらえるコインの枚数を登録しておく。
- 「まあ、これならやってもいいかな」と思った人は担当者を自分にする。
- 作業を行う。
- 作業が完了したら週一の朝礼で報告する。
- 完了が確認できたら、みんなからの拍手と枚数分のコインをもらえる。
- そのコインでガチャガチャが回せる。
- アンパンマンのキャラが出てくる。
まあ、前に出てきて拍手されるところがちょっとこっぱずかしいっちゃこっぱずかしいんですが、そこは慣れれば嬉しいもののようです。
あと、やりたくない人はやらなくてもいいというのもミソです。そういう人は毎回、感謝の拍手だけしていただくということになります。
Chappyプチコロ(ラベンダー) 専用コイン仕様
http://chappy-net.com/products/detail.php?product_id=211
これ使ってます。意外とそんなに高くはないです。
●ダントツで差が付くとつまらない
さて、もう少し考えたかったのはゲーム的な味付けです。これを単に、集めた景品の個数を競うだけにしてしまっては面白くないですね。
そんなことをすれば先のH君がダントツで10馬身差をつけて賞金をかっさらっていくに決まっています。
もちろん、それでも「Hさんすげぇ」、「いつもこんなにやってくれてたんだ」ってことはみんなに分かってもらえて、意味がなくはないですが、できれば他のみんなにも競走に絡んでもらいたいです。
ということで先のコンプガチャ形式です。
この方式にすると、最後コンプリートに近づくにつれて有効なキャラが出にくくなり、H君を足踏みさせることができます。
巷でいらついておられるユーザーの怒号を聞くにつれ、
これはまさにうってつけのシステム!
ということで早速開始しまして、今年で丸2年。
去年は途中まで余裕こいて中段に位置していたH君が、やはり最後にはキレのある末脚を見せつけてトップをかっさらって行きましたが、今年は4番人気くらいのS君が、混戦を抜け出し本日めでたく1着となりました。
賞金は5千円。ハーフコンプリート(前後賞みたいなもの)を合わせて7千円。
彼にはパチスロであっという間に無くしてしまうのではなく、是非彼女と美味い飯でも食べに行ってもらいたいものです。
(一部、話を単純化するための脚色有り)