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IT企業に転職するなら知っておきたい6つの業態
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
IT企業に転職するなら知っておきたい6つの業態
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
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IT業界は3K(「キツい」、「厳しい」、「帰れない」)だ、7K(3+「休暇が取れない」、「規則が厳しい」、「化粧がのらない」、「結婚できない」)だなどと言われるようになって久しいですが、それでもやはり、手に職をつけられる、クリエイティブな仕事である、座り仕事である、私服でいい、訳の分からないお爺さんがいないなどという点において魅力を感じる人は多いようです。たぶん。きっと。だったらいいな。
ただ、弊社に面接に来る人の話をいろいろ聞いていると、結構他業種からよく分からずにIT企業に飛び込んで、描いていたイメージと違うと言うことで早々に退職してしまう人も多いようです。
それは無理もないことです。一口でIT業界と言っても実は細かくいくつかの業態に分かれているからです。私は大きく、以下の6つに分かれると思います。まず、これを知らずにIT業界に飛び込もうとすると大けがをするでしょう。
- デザイン、軽量WEB指向
ホームページやオープンソースを使ったCMS、ECサイトなどをチャチャっと構築することを目指す会社です。軽量WEBなどというのは一般的な言葉ではないですが、このチャチャっを表しています。SEO、プチマーケティングなんかもやってしまいます。コンシューマーの荒波に最も晒されている業種で、先端の知識を広く浅く経験できますが、とにかく回転が速いのであまり腰を据えてじっくり1案件に取り組むことはできないと思います。ちなみにこの指向性の会社は意外とガチなプログラマが嫌いです。右脳で動く人たちのクリエイティビティと左脳で作る人間のそれは水と油のように相容れないものがあるからだと思います。
- 職人技術者指向
プログラマやネットワーク技術者が地味に、難しい顔を突き合わせながら日々精進する会社です。会社によっては巣窟、あるいはシェアハウスと呼ぶべきだったりします。1プロジェクトが2ヶ月3ヶ月、長いものだと1年とかかかるものがあったりしますので、腰を据えてじっくり勉強することができると思います。しかし一般的にマニアックでオシャレじゃない人が集まっていて女っ気がなく、将来がかなり不安です。いわゆる3Kだ7Kだとかと言われるのは、残念ながらこの業態と思われます。
- シンクタンク指向
2と同じように開発仕事を請け負うにしても、プログラムをほとんど行わない会社もあります。お客さんと話をして、業務改善のための提案を行うのをメインにしている会社です。開発などと言う汚れ仕事は外部に委託します。いろいろなセミナーや展示会に参加して幅広い知識を得て、それをマネタイズ(カネにする)するのが主な生業(なりわい)です。これはともすれば流行り技術の押し売りになったり、枯れた技術でやる数倍の金額になってしまうこともありますが、それを押し切ることができるブランド力があったりします。
- サービス指向
発想が常に「新規サービス」に向いている会社です。本気でやろうとしている会社と社員のモチベーション維持のためにフェイクでやろうとしている会社の2通りあると思います。元気がよく見え若者には魅力的に映りますが、一般的に会社の資金繰りは厳しく、外部資本を入れるとサービスや経営方針がブレがちです。自社サービスは夢と暴走の諸刃の剣。中長期的な舵取りが非常に難しく、組織が安定しにくいと私は思います。
- 人材派遣指向
人材リソースを開発会社に融通する会社です。一般的に「人売り」と後ろ指を差され嫌われますが、実は開発現場を下支えする大切な仕事
ですかも知れません。優良な会社はきちんとした研修制度を持っていたり、手厚いフォローアップがあるところがあるようです。未経験なら、こういう会社はありがたいでしょう。まあ、開発会社としては、このような人材を使うならトラブル覚悟ですが...。 - 営業指向
他社の開発したソフトウェアやシステムを売るのが専門の会社です。まあどう贔屓目に見てもクリエイティブでももの作りでもないですが、顧客ニーズに敏感で、リスクを抱え込まず、変わり身が早いという面においてもっとも堅実で強(したた)かな業態と言えます。少なくとも1や2で自社サービスを立ち上げるよりはずっと安全です。まあ、消費者視点ではこういう会社からは買わない方がいいと思いますが。
さて、もしあなたがIT以外の業界に属していて、「いっちょうITにでも転職しようかな」と思ったら、ずらーっと並ぶ募集要項を見て、これら6つの業態を的確に見極めなければなりません。
たとえば2のような会社で腰を据えて徹底的にプログラムを勉強したいと思っているのに、1や5や6の会社に入ってしまえば、入社ガイダンスを聞いたときからいきなり辞めたくなってしまうと思います。
それはかなりの悲劇ですので、そうならないために簡単な分類方法をお伝えしておきます。あくまで私の独断と偏見です。話半分でお願いします。
1.デザイン、軽量WEB指向の会社を見極める
業務内容に「WEB制作」という文字があれば、ほぼこれに間違いないです。意外と知られてませんが、一般的にhtmlやJavaScript、Flashをメインにやっている会社は「制作会社」、データベース連動のプログラムをメインにやっている会社は「開発会社」と呼ばれています。募集要項に「photoshop」、「Illustrator」、「Fireworks」などが使えるか、XHTMLとCSSのコーディングができるか?などが問われているでしょう。これは比較的分かりやすいです。
2.職人指向の会社を見極める
この手の募集要項の特徴として、「対応言語」「対応プラットフォーム」が事細かに書いてあります。言語だけでなくOSやらフレームワークなどを細かく書いてくる会社ほど技術指向が強いですが、ググってもあまり件数がヒットしないようなマニアックな技術を誇らしげに謳っている会社は、辞めておいた方がいいと思います。将来的なつぶしが効きませんから。ホームページは「これマジかよ!?」というような、ある意味男らしい質素なものも少なくありません。それは私はあまり悪いことではないと思います。
3.シンクタンク指向の会社を見極める
この手の会社では、業務内容に「コンサルティング」や「ソリューション」という言葉が散りばめられてることが多いです。BtoBの会社が多いので、ホームページは比較的堅めか、モデリングが行き過ぎていて何を言っているかよく分からないか、グローバル視点に偏った傾向になっていたりします。新卒でない限り基本的に素人は入社困難です。しかしその会社がどこかの業界に特化したソリューションを展開していれば、その業界出身者は重宝される可能性はあります。
4.サービス指向の会社を見極める
サービス指向の会社はすぐに分かります。前面に「こんなサービスの立ち上げを手伝っていただける方を募集中です!」とあるはずです。「仕事は面白くなきゃ!ITなんだし!」というのであれば、飛び込んでみるものいいでしょう。ただなぜその会社は新しいサービスを立ち上げたがっているのか?そこだけはちょこっと考えた方がよいと思います。まあ、行きたい人はそういうこと考えずに行ってしまうのですが。。
5.人材派遣指向の会社を見極める
以前はこの手の会社は、派遣的な仕事を行うことを隠して人を集め、内定が出たと思ったら勤務先は別会社だった、みたいなトラブルが後を絶えなかったのですが、派遣法が改正されてからはそのようなことはほとんどなくなったようです。
通常は派遣なら派遣とはっきり書いてあります。ただ、業務請負やアジャイル開発だとかいう隠れ蓑を使って、グレーな感じで人を送り込む会社はあることはあります。勤務地が「23区および横浜」などと非常にアバウトだったり、写真が誰も居ない大きな会議室というのは、この手の会社の可能性があります。
いや、こういう業態が性に合っている人はいます。私のプログラマの古い先輩は、40過ぎてもいまだにこのような派遣形態で大企業の開発部隊に入り込み、悠々自適にやらせてもらっていると自慢していました。
6.営業指向の会社を見極める
3のシンクタンク系と見分けがつきにくいですが、ホームページを見て取り扱い商品・サービスに一貫性が無く、会社としてどこに進んでいこうとしているのか分からない感じならこのタイプだと思います。結構多いです。基本的にはBtoCで手離れ良く売ろうとしていますので、コピーは派手目。とっつきやすい表現や演出になっているのが2との違いです。
と、まあこんな感じでしょうか。
もし、どこかの会社の募集要項を見て、これはどの業態なんでしょう?どんな感じでしょう?ブラックだと思いますか?などという質問があれば、Twitter(@torshim)でご質問ください。無責任にお答えさせていただきます。