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ビジネスマッチングサイトにない絆

ビジネスマッチングサイトにない絆

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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▼ビジネスマッチングサイトは心がすさむ

昨日twitterで、htmlコーディングが出来る方で誰かお手伝いしていただける人いませんか?と募ったところ、「Lancers(ランサーズ)を使ってみたらどうですか?」というアドバイスをいただきました。ありがとうございます。

Lancersというのは、いわゆるビジネスマッチングサイト(以下、BMS)というやつですね。


弊社も4年くらい前まで、「楽天ビジネス」や「さぶみっと」などをかなりフル活用していましたので、実はBMSを使うことは当然頭をよぎったのですが、私はそれがあまり好きではないのです。

確かにウチのようにシステムを組むのがメインで、営業(特に新規開拓系)がいない会社の場合、BMSはかなりありがたい存在でした。

しかし、4年ほど前に積極活用するのをやめ、本当に仕事が空いちゃったときに覗くだけにしまして、そして2年くらい前に業者としては完全脱会しました。

抜けてみるととてもすっきりしました。あれは本当によくないです。心がすさみます。


▼弊社がBMSから足を洗った理由

弊社が、BMSから足を洗った理由をいくつか挙げてみます。


・不毛な価格競争になる

基本的には、これですね。システム開発の場合、業者側に圧倒的な情報の偏在が起こっているので、どうしても発注者側で比較できるのは価格がメインになります。まず価格が安くないとリアルの商談の場に呼んでもらえません。商談の場に行けないと何の交渉の余地もないので、基本的に、「これはありえるのかありえないのか」というギリギリの価格で出します。

そういうことをすると、バッファを一切見ていないので、ほんのちょっとの要件変更(「やっぱりこうして欲しい」という変更依頼)で簡単にトラブルになります。


・すれた客が多い

BMSに出すことに味をしめたお客さんというのもかなり素性がよろしくないです。いや、中には知人に聞いたり、Webなどで調べたりして初めて使ってみたという方もいますが、特にIT系の同業者の場合は経常的に使われていることが多いです。その場合、業者を使い捨てだと思っている会社も少なくありません。

とにかく買い叩いて無理させて、音を上げたら、他を探す、というような。こんなお客さんと付き合うとかなり最悪です。
(当然ですが、これは今お付き合いしている会社さんにそういうところが無いから言えることです。一応言っておかないと。。)


・提案のよさよりもプレゼン力が勝る

これは主に商談に呼ばれてからなんですが、弊社は開発がメインなので絵が書けません。高価なイカしたフォントもないです。Verdanaにしようか、メイリオで行こうか、という感じです。

というか、そもそも魅力的な提案書を書くセンスがないです。文字でつらつら提案を書いたりするわけですが、まあこれが説明も特にない大きなきれいな図に負けることがしばしばです。

お客さんに弊社を打ち負かしたという提案書(見積書)を見せてもらったことがありますが、「そんな要件定義があるか!」と思うようなアバウトすぎる内容だったり、「これサーバーが故障したら1週間止まるんじゃないの?」的な超楽観的なハード構成だったりするのですが、負けてしまえばしょうがありません。


・業者同士を戦わせるような客がいる

システムの構築などというのは実は正解のない世界です。もちろん「絶対不可能」な提案をする業者もありますが、「たしかにそれでもいいよね」という手は無限にあるのです。

ところがお客さんはそれを判断できないので、酷い場合、数社を一堂に集めて、論戦をさせたりします。

これはエグいです。みなそれぞれの正義で戦いますが、どの方法でも別に間違いではない場合、最終的には攻撃することに躊躇がない人が勝ちます。どんな提案にも弱点はあるからです。


・トラブル耐性がないのでよい関係が続かない

システム開発などは、実は必ず苦労が伴うのです。数か月規模のプロジェクトになると業者側もそうですが、お客さんにも多大な負担をかけます。その際に、BMSなどをつかっているお客さんの場合、「こんなに苦労するのは、この業者が悪いんじゃないか?」「ちょっと別のところをまた探してみようか」という発想になりがちです。

本当はトラブルを一緒に共有し乗り越えてこそよい関係が築けるのですが、そこにたどり着く前に浮気相手を探されてしまうことがあります。開発業務では、この「よい関係」が築けているかどうかで、まったく作業効率が違うのですけど。


・こすい手段が身につく

これは、業者側の問題です。先にも述べましたが、BMSでは、まず文章ベースの提案を気に入ってもらって商談に呼んでもらわないといけません。

昔は、「やはりここは誠実さだろう」と思って、この文章ベースの提案の段階で、必要かもしれない機能や考えられるリスクなどをすべて洗い出して概算の見積りを出し、「要らないものは削ってください」という流れで構成していました。

しかし、これだと見え方的に、常識的にはこれくらいかな、と思う倍くらいの金額の見積りになることもあって、お客さんもびっくりしてしまうわけです。

「なんだか小難しいことをいろいろ考えてるけど、とにかく高い。他の業者の方がシンプルで安い。」

ということで、瞬殺されてしまいます。

それが分かってくると、本来考慮すべきことをわざと気付かないふりをして安く見積もって、まずは商談に呼んでもらうことを目指します。商談に呼ばれてからじわじわと「こんな機能もないと、実際回らなくないですか?」などとカミングアウトして価格を上げるのですが、これをやると初手から「始めの見積りと全然違う。汚い業者だ。」と印象付けてしまいます。

あるいは、もし本当に予算がないようならそのまま突っ走ることになります。それでやれないことはないのですから。でもこんなことをすると、ろくなシステムにならず、お互い不幸になりますね。


ということで、社内でいろいろ話し合った結果、こういう気持のよくない戦場からはきっぱり足を洗おうという話になりました。


▼BMSに集まる業者というのもどうなのか

さて、以上はいわゆる業者側の立場でみた場合だったのですが、翻って発注者側から見たときに、このサイトにいる業者というのもどうなんだろうとも思うわけです。

私たちも小さな会社ですので、案件がどうしてもキャパをオーバーしてしまうことはよくあって、BMSに出そうかなーとか思って、ランサーズとか見ると、どうにも発注者側にとって圧倒的に有利なことが書いてあるわけです。

そこに出てくる案件を待ち構え、同じように集まってきたライバルと戦い、スペック比較されて選ばれる、というのを良しとしている人たちは、どうも魅力が薄く感じます。

いや、その中で高いモチベーションを保ってよいプロダクトを出せるのであれば、それはそれで尊敬するところもありますけどね。


で、まあ本当にこれが正しい判断なのかどうか別にして、最近は、外注先探しはすっかりtwitterか人の紹介でやってます。

BMSを使ってコンペすれば、本当はもっと安い人で同等のクオリティの人がいたかも知れませんが、そんなことはどうでもいいです。

一定水準のクオリティと、それに見合う価格というのも、私たちもこの業界で長いのでわかります。

そんな小さなお金よりも、コンペされずに信用された、という事実が深くする絆というものもあると思うのです。

長くよい関係を続けてこそ、よい仕事ができるものです。単発の経済効率化じゃダメだと思います。


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とまあ、こんなこと言ってますが、来年はまたBMSをバリバリ使っているかも知れません。

みなさんがお出しになる何かの案件に入札していたら、どうか笑わないでください。

それと、弊社はプロジェクトの進め方はSE個人の裁量に任せているので、私以外のSEは業者探しにBMSを使うかも知れません。

っという感じで、どうでもいい防御線を張らせていただきました。