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自分の頭で考えることと効率化の狭間で

自分の頭で考えることと効率化の狭間で

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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私がいろいろ取り組んでいるテーマの一つに、社内にきちんとしたマネージャを育てたいというのがあります。

これは、非常に難しいテーマで、実はもう5年くらい試行錯誤を繰り返していますが、なかなかうまくいっていません。

いや、マネージャは居ます。そして業務は一応ちゃんと回ってます。ただ、社員数が20人30人になり、子会社がいくつも出来たときにも、今の会社のDNAが受け継がれていくような仕組みが出来ていないのです。


まず、ウチはシステムの開発会社なので、アタマを使わないといけません。

プログラマであってもSEであっても、すべてのことを誰かが指示してくれる訳ではないので、自分の頭で判断することがとても大事です。それもかなり高度なレベルで、です。

上司に判断を仰がなくても自分の判断で即対応するというのが、小さな会社ならではの優位性だと思いますので、ここは30人規模になっても失いたくないです。

その反面、業務の効率性を求めれば求めるほど、組織は軍隊的な規律性が求められます。

上司が

「ここはこうする」

と言ったときに、部下が

「どうしてですか?こっちの方がいいと思うのですが」

と言えば、その説明分の時間が失われます。

また上司は大きな大局観で決断していることもあるので、すべて説明しようとすると大変な時間がかかりますし、そもそも理屈で説明できないこともあり得ます。

上司は説明に窮し、部下は納得できずストレスが溜まります。

ここで通常の会社の成長過程では、双方から厳格なルール化の要望がでてくるわけです。

業務を細かくルール化してそれを徹底させれば、上司は自分の思ったとおりに部下を動かすことができます。部下からの反論する機会を奪い、長々と説明する必要がなくなります。部下は部下で「ルールだから」と納得でき、ストレスから解放されます。

魅力的です。RoR的でイカしてます。

しかし、これを行うと、以下のようなデメリットが待っています。

  • 部下が自分の頭で考えなくなり斬新な発想が生まれなくなる
  • ルールに書かれてないことに遭遇すると、必死でルールを探すようなことが行われる
  • 周りにイエスマンしかいなくなり上司の判断を誤らせる
  • 自分の頭で考えたい優秀な人間が去っていく

これは、頭で汗をかいて稼ぐ商売をしている我々にとっては致命的です。

なので、このマイクロマネジメント的な発想はダメなのです。上司が楽をし、部下がバカばかりになるシステムです。

私は、部下のマネジメントの基本は、見えない壁マネジメント(造語)だと思います。

基本的に部下には命題だけ与えて自由にやらせます。この命題には「効率性」というのもあり得ます。

その命題を達成するために、自分で考えてやるように言います。

達成されれば誉めこそすれ、細かいやり方についての指摘はしません。本人が望めばしますが、「角を矯めて牛を殺す」ようなことをしないことが重要です。

もし、結果と手順のいずれかにおいて、上司の方針に抵触したら、その場合だけ「それはダメだ」と言います。

部下は驚きます。その際にはじめてそれがなぜダメなのかを説明するのです。

これであれば、部下の自主性も保たれ、効率性も規律性も保たれ、説明も比較的容易です。なんと言っても基本的にやり方は部下が決めているので細かい局面で「どうしてですか?」という疑問が生まれようがないのです。

それを積み重ねていくうちに、上司の時折言う「ここはこうする」という決断が、「はいわかりました」とすんなりと通るようになるのです。

「よく分からないけど、普段口出ししない上司が敢えて言うのだから、深い意味があるんだろうな」

と。


ただ、これができるようになるには、上司側に相当のキャパが必要です。自分の自由をマネジメントするのも難しいですが、他人の自由であれば、さらに数倍難しいです。

また部下の方も、「こうやっておけばOK」みたいなルールが無いので、それはそれで苦しいです。自由にやるというのは、非常に厳しいです。「ある意味」がつかず、「もろに」厳しいです。

これはもしかすると無理なのかも知れません。

どうしても無理なところだけ、仕方ないのでルール化していく、という感じで今、進めています。