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こんなに会社のためを思っているのに、、、なぜあなたの改善提案は通らないのか?
»2012年8月 3日
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
こんなに会社のためを思っているのに、、、なぜあなたの改善提案は通らないのか?
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
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よしっ!この提案を通して、もし上手く行けば次の査定面談で昇給の交渉をするぞ!
などと露骨に自己利益を図る人は少ない。たいていは、本当に会社や部署のためを思って業務改善を提案するものだ。
しかしそれがどうも上司に無視されたり、「いいね」と言われたきり永遠に店晒(たなざら)しにされたりする。
これは不幸なことだ。本当はいい提案なのに、会社はそれを受け入れずに利益を逸している。そして、なによりやる気のみなぎるあなたが評価されることなく、徐々にモチベーションを失っていく。
これはもちろん上司側の問題もあるだろう。
でもあなたの提案にも、いくつけ抜け落ちている視点があるかも知れない。今回はそれを考えてみたい。
■自己犠牲の視点
どんなに良さそうに聞こえる提案でも、「じゃあそれを誰がやるのか」という話になるとあなた自身ではなく、部署の他のメンバーや上司だったりする場合、なかなか提案は通らない。
あるいは、あなた自身が動く場合でも、提案者自身の受ける利益が露骨に大きく見える場合、通らない。「それお前が英語身につけたいだけじゃないのか?」「プログラムやってみたいだけじゃないのか?」みたいな。
まずは提案者たるあなたが一番損をする提案である必要がある。どうしても自分が動くのが物理的に無理な場合もあるが、その場合でも自分には十分な覚悟があることを見せるべきだ。
■先人への敬意の視点
これは心情的な問題で、あまり面白くない話だが、先人の苦労への敬意が感じられない提案は受け入れられない。明らかにあなたの提案で今の不合理が改善されても、今の業務を全否定すれば、部署のメンバーや上司の顔が立たない。
これはつまらないことだが、その回避には大した労力はいらないから考慮すべきだ。言い方一つで、周りのメンバーの立場を立ててあげることはできるはず。
ただ理屈だけでは済まないので苦手な人はいるだろう。
■属人性排除の視点
組織は常にフォローアップ体制を維持しようとする。1人の天才やモーレツ社員に依存するような業務はリスクと考える。
あなたが特殊な技能の持ち主で、それを元にした画期的な業務改善が提案できたとしても、あなたが長期で病欠したり辞めたりした際のリスクを考えると会社は決断できない。これはチキンなのではなく、経営的に正しいことだ。
ということでバックアップメンバーも含めての提案をすべきだ。段階的でもいい。ここで「自分の能力を見せつけて社内プレゼンスを高めたい」というような姿勢が見えると、提案は通らない。
■時間軸の視点
何か変革を起こす時には、必ずオーバーヘッドコスト(初期導入費用)がかかる。現実的なお金もあるだろうが、新体制に必要な管理表の作成だったり、周知のための会議にかかる人件費であったり目に見えないコストもある。
このコストの捻出には時間がかかる。一気にやればやるほどかかるコストは大きくなる。
また何より、部署のメンバーや上司自身の心の準備期間というのもあり、それには通常、数週間から数カ月、長ければ1年とかかかる。
その長い期間中にあなたがイラついたような態度を見せると、意識齟齬が生まれる。
発案者と賛同メンバーに意識齟齬が生まれたプロジェクトというのはなかなかうまくいかない。お互いに「あいつのためにやってやってる」という意識になるからだ。
発案者はゆったりとした長い目で進行を見守らなければならない。
以上の4つの視点を取り入れるだけで、あなたがどんな新人社員であっても、業務改善提案は常に一目置かれるものになるだろう。
さて、ここまで読んできてどう思っただろうか。
「めんどくさっ。こんなことまで考えて会社に改善提案したくないわ。」
と思わなかっただろうか。
思わなかった人は、かなり上昇志向の強い人で、全体利益を見るバランス感覚を持っていて、政治力も高い。おそらく今もうまく行っているし、今後もより一層うまくいくだろう。
残念ながら思ってしまった人は、改善提案のそこかしこに「お前らよりも俺の方がわかっている。教えてあげてもいいが、理解できないなら別に聞かなくてもいい。」という上から目線が見え隠れしてしまっているのではないだろうか。
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実は世の中のほとんどのサービスは、先払いというのはなく、後払いだ。
労働市場では変な法律がたくさんあって、サービス提供者がまるでお客さんのようになっていて、本質が見えにくくなっているのだが、先に何か苦労をして差し出さないとリターンはない、というのが原則だ。