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なぜ「ちきりんさん」の素性を暴きたがるのか

なぜ「ちきりんさん」の素性を暴きたがるのか

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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数日前から、謎の女性ブロガー(?)「ちきりんさん」の素性を暴こう(暴いてやった)というようなブログやらまとめサイトやらツィッターのRTやらが目に付く。昨日もJ-CASTか何かに載っていた。

私自身はちきりんさんとは面識もなく、自ら「社会派」と謳っている彼女の記事内容には、時折腹立たしく思うことはあるが、それでも問題提起として非常に面白いものがあって、正直好きなタイプのブロガーさんだ。

連続して読むと精神が不安定になるので、1ヶ月に1回くらい、電車の中などで人知れず煽られてみる感じの楽しみ方だ。


ご存知ない方もおられると思うので、少し説明しておくと彼女のスタイルにはひとつの面白い特色がある。

それはブログでも対談記事でも決して素顔を見せないことだ。いつも似顔絵を書いた紙に割り箸をつけ、それで顔を隠して写真に写る。噂によると、取材前、待合室や廊下などでもそのスタイルを貫いているらしいが、それはにわかには信じられない。

そんな彼女について、「実はこの人だ!」と言って喜んでいる方々がいる。

そして「この人だ」と名指しされている人は、思い切り顔も名前もキャリアも割れている。

その実名の顔と、匿名の顔で、言っていることが微妙に違う(ように思われる)ので、それがまた多くの人の関心を買うのだろう。



正直、バカじゃないかと思う


彼女には彼女なりの理由があってこそ、匿名で意見を言っているのだろう。

ビジネスで深くコミットしていると、実名ではとても言えないということがたくさんある。弁護士はクライアントの利益を最大限に考えるが、本当のところは「そもそもお前が悪いんだろ」と思っているものだ。

匿名の発言は覚悟がない、便所の落書きに近いなどという、実名で活躍する作家やジャーナリスト、ブロガーなどがいるがとんでもない。

匿名だからこそ、すべてのしがらみから逃れた生の発言ができる。

実名を出した瞬間、覚悟は出来たかもしれないが、それはもう「その仕事を普通にしている人間」ではない。もしそこであけすけに物を言っていたら、半分本業から引退しているのに近い状態だ。

(だから私は、本業に関わる深い内容は話してない)


未だにくすぶっているコンビニ店長のブログ(成人確認ボタンにキレてる人に告ぐ)なんかもそうだ。匿名だからあそこまで言える。

それを「この人って、この人だよ」とみんなに知らしめてどうする。

たとえ、自分の意見にあわないことを言う気に入らない筆者でも、そういうことをするとその人はかなりの確率で突っ込んだ発言ができなくなってしまう。

囃し立てている人たちにとっては、なんとなく興味本位で言っているだけかもしれないが、匿名ブロガー的には本業が立ちいかなくなるほどのものすごい打撃を受ける可能性がある。

「いや、そんなんだったら始めからブログとか書くなよ」

という声もあるかもしれないが、私は純粋に

そういう人の本音の話を聞きたい!!

のだ。

まったく見ず知らずの人と出会って、親しくなって、「本当のところ」を聞き出すに至るには物理的・時間的に制約がありすぎる。

この行き過ぎたネット情報社会のなかで、私がもっとも「よかったなあ」と思うのが、この「匿名での発信」が可能になったことだ。石ころも多いが玉もある。

ちきりんさんの素性を暴くような行為は、それを台無しにする行為だ。


これは実はちきりんさんがどうこういうだけの問題ではない。

彼女自身は、実はあっけらかんとしていて「あ、ばれちゃった?」とか、「いやいや違いますよぉー」という感じかもしれないが、そのやりとりに他の匿名ブロガーさんやツイッタラーさんが萎縮してしまう。

あんなふうに暴かれるようなら、あまりPV出ちゃうのも問題だなあ。。

と。

これが間接的な言論封じであり社会的な損失なのだ。

どうかそのような軽はずみな行動はやめていただきたい、と切に思う。