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デキる上司がやっている「部下との約束」

デキる上司がやっている「部下との約束」

井上 龍司

中小企業診断士。コンサルティング会社などを経て現職。コンサルティング・研修・講演・執筆等の活動を行っている。50名超のコンサルタントを擁する研究団体「Think! Think! Think!」を主宰。

当ブログ「Think! Think! Think! ~中小企業診断士イノウエの思考術~」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/rinoue/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


私が新卒でコンサルティング会社に入社したときのこと。最初の上司になった方は初日に私にいくつかの「ルール」を提示してきました。

それは「遅刻・欠勤するときは連絡すること」といった常識的なものから、「同じことで3回注意させないこと」「仕事で10分迷ったら聞きに来ること」(それ以上は時間の無駄という考えによるものでしょう)といった、その人独自のものまでさまざまなルールがありました。

そのようなルールを示して約束させたのは、もちろん当時の私が新卒1年目でまだ仕事というものに慣れていなかったからだと思います。しかし、仮にそういう状況でなかったとしても、上司と部下との間において最初に「ルール」を合意しておくことは、お互いの関係を円滑にするうえで有用であると考えています。


なぜなら、(そのルールがよほど理不尽なものでない限り)ルールを破ったために叱られることにはある程度納得感を感じることができるからです。叱られるとヘコみますが、自分が約束したルールを守れなかった以上しかたがない。そんな心境になります。

しかし、(少し考えれば分かるようなものは別として)あらかじめ約束していなかったことで叱られることに対しては、人は抵抗感を感じます。


たとえば、上記のように「10分迷ったら聞きに来ること」という約束を最初にしていなかったとして、「どうしてすぐに聞きにこないんだ!時間の無駄じゃないか!」と叱られたとしたらどうでしょうか。分かるまで考えさせてみようというタイプの上司もいるかも知れませんし、それはちょっと受け入れ難いのではないかと思います。

このように「後出し」で叱られることに対して人は反発心を抱いてしまうのです。「聞いてないよ...」「だったら先に言ってくれよ...」という感情を抱いてしまうのです。


そういえば、以前「浮気したら離婚」という約束を定めている夫婦の話をなにかで聞いたことがあります。そのペナルティが妥当なのか重すぎるのかといった議論はさておき(笑)、少なくともその夫婦間で合意している以上、そういう「事態」が起こったときの対処は明確になるわけです。話し合った結果「やはり離婚はしない」という結論に収まるかもしれませんが、少なくとも「約束を破ったのだから離婚」というポイントから話を始めていけるわけです。

逆にもし、こういった約束をしていなかったとして、そういう事態が起こってしまったとしたら、どこから議論を始めればよいのやらと、話がややこしくなってしまうのは想像に難くありません。


上司・部下の関係においても、夫婦関係においても、あらかじめ起こりうる事態を想定して、そのときのための「約束」を結んでおくことが、トラブル時の対処を円滑にしてくれるのではないかと思います。

もちろん、あまりに多くのルールでがんじがらめにしてしまうのも窮屈ですが...自分が相手に「ここだけは守ってほしい」というポイントは何なのかをはっきりさせてみましょう。
そして、もし約束した以外のことで叱る際には、それが「後出し」になっていることを認識しておくべきであると考えています。