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011.【雑談】裁断業者と著作権で考えた事

»2011年12月22日
IT雑貨屋、日々のつづり

011.【雑談】裁断業者と著作権で考えた事

佐藤 洋之

1967年生まれ、神奈川県横浜市在住。ひょんな事からIT業界に努めて四半世紀、嫁と子供2人、あとメス猫一匹を抱えて、日々奮闘しているエンジニア(??)です。趣味はバイクと読書。IT業界の事、仕事の事、趣味や日々の雑感などについて、これから書いていきたいと思います。

当ブログ「IT雑貨屋、日々のつづり」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/satou55_makoto/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 年末ばたばたしている中で、帰宅途中に喫茶店に入ってブログの記事を書いています。今日は定時退社の日で、家に帰ると何かとやりたい事もなかなか進まないという事もあったりで、たまには本なども読みたいし、、という事で、ただいま寄り道中です。

 佐藤@IT雑貨屋です。

 いつもは火曜日と金曜日に記事をアップしているのですが、今週は連休という事もあって、少し早めに記事を書きました。

 さて、今朝方テレビのニュースを見ていたら、この事が放送されていて、ITMEDIAにも同じ内容が取り上げられていましたので、この件について少し思う所を書いてみたいと思います。


 私自身、読書が趣味で、時間がある時なんかは、通勤帰りに最寄りの本屋の中をブラブラしながら本を物色するのが大好きで、お小遣いが潤沢にあるならば買いたい本もあるのですが、これが中々厳しいご時世なので、週末に子供をつれて近所の図書館に行っては本を5~6冊借りては読みふけっていたりします。

 この件について法律家でも何でもないので、法的な事を云々できるモノでは無いのですが、今回の報道については何か違和感を感じてしまいます。

 確かにネットの世界では、表だってという事ではありませんが、電子化した書籍などが出回っているという事は知っています。またこれにより正規の書籍などが少なからず影響を受けているという事も理解しています。

 またそれにより、東野氏の危惧する「この違法な商売がまかりとおっていることで、漫画家や小説家といった職業が、近い将来、職業として成立しなくなる恐れさえあります。」という事も確かにあると思うのです。

 でも今回は行動を起こす主体と、訴える方向が少し違うのでは無いかと感じてしまいます。

 まず小説やマンガなど、そういった作品によってビジネスをしているのは出版業界ではないでしょうか。
 であればまずは出版業界全体として今回の事について動くべきであって、作家が前面に出て動いているという事が理解できません。

 以下は私自身の勝手な感覚論ですが、作家の作品を用いて社会の中でビジネスとして展開しているというのは、あくまで出版業界であり、作品を商品化しプロモーションをかけて主として利益を得ているのは各出版社ではないでしょうか。そうであれば本来は出版業界が表だって行動すべきだと思います。

 以前にコンサルティングの業務をしていた時、ある出版社の人から怒られた事があります。
「あなたたちIT業界のおかげで本が売れなくなってきているんだ!もうこの業界の売り上げは縮小する一方だ!今なんか最盛期の1/3まで売り上げが落ちてきている」

 この時はさすがに面を食らってしまいましたが、確かにネットワークが普及し、なおかつ高機能モバイル端末がこれだけ普及する中で、多くの情報がネット上に存在します。以前であれば本を購入しないと手に入らなかった情報の多くが、インターネット上で現在では得る事が出来ます。またこういう状況でもし書籍が電子化され勝手に流通した場合には、それを出版物として扱っていた会社には大打撃です。

 しかし昨今のIT環境を考えるならば、やはり書籍が電子化していく流れは止められないと思いますし、であるならば、電子化する事にも対応したビジネスモデルというものを、そろそろ真剣に出版業界として考える時ではないでしょうか?

 あともう一つは、スキャン業者を訴える事にどれだけ意味があるのかという事です。これは単なるスケープゴート的な意味合いしか無いのではないかと感じてしまいます。

 私の家にもスキャナはあります。そして個人の蔵書は処分をしてきましたが、未だに200冊ほどあり、毎度年末になるとヨメから始末するよう、槍玉にあがってしまう状況です。個人的にはすべての書籍を電子化したいと考えたりもしていました。電子化すれば、家にあるNASに保存もできるし、持ち歩く必要もなくなり、移動中にスマートフォンでみる事も出来てとても良いなと考えています。しかし自分自身で電子化をするほど手間をかける時間もありません。そういう中で「スキャン事業」というのは、新たなビジネスでもあるのでは無いかと思うのです。

 確かに先に紹介した記事の中で永井豪氏の言葉に「スキャン事業者は一見、読者の味方のように思えるかもしれません。が、創作基盤を破壊する可能性のある業態です。便利だからといって、どんなサービスをしてもいいというわけではないと思います。」とありましたし、この意見も理解できます。

 しかしその一方で、媒体の電子化という流れは、もう止めようが無いでしょう。

 だからこそ、出版業界として今後の出版物の在り方についてもっと真剣に動くべきだと思うし、ビジネスモデルも考えなければならないのではないかと。そしてその上で必要な法制化についても、もっともっと業界が中心になって議論をすべきではないでしょうか?

 なにも作家が表だって感情論を前面に出して行動する以前に、出版業界としてこの電子化の流れに対して、どうイニシアチブを取っていくのかという事がはじめに来るべきではありませんかね。

 確かに「性善説」でスキャンニングを全てヨシとすべきでは無いと思います。今後もそういうスキャンしたデータを元に、小銭を稼ごうとする輩も出てくるでしょう。それを考えると野放図にスキャン業者を許容するものでは無いと思いますし、そこには一定のルールと仕組み、そして破った場合には罰則をもうける事も必要だと思います。

 またそういった業者を利用する側についても、しっかりとしたルールを決めなければなりませんよね。個人のモラルだけに任せるという事では、あまり意味がないと思います。

 そういった事をつらつら考えてみると、今回の提訴については、何か片手落ちというか、動き方が違うと私は感じてなりません。

 しかし、、、中々難しい問題ですよね。。。
 つたない記事で申し訳ありません。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました。