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バーのマスターに聞く「The・BAR」の楽しみ方(コラボ#15)

»2010年11月20日
安齋の「No brain,no life」

バーのマスターに聞く「The・BAR」の楽しみ方(コラボ#15)

安齋 慎平

社会人5年目。世の中にある様々なモノ・サービスに対してブレストしたものを記事にしていきます。また、ほかのブロガーさんや企業さんとのコラボ企画なども織り交ぜてお送りいたします。コラボしたいという方、絶賛募集中です!

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(この記事は、フジテレビ系列「僕らの音楽」のメインテーマを口ずさみながらお読みください)

かつて古代アテナイの詩人・エウリピデスは言った。「酒がなければ愛もなく、人々を魅了する何物もない」と。
人はお酒を飲むと酔う。酒が非日常的な空間を演出する。昔話に花を咲かせる人もいれば、自分の将来を熱く語る人もいる。酔うとはそういうことだ。

私は20代の半ばに達し、そろそろ一人でお酒を楽しみたいと思うようになった。駅前の居酒屋で騒ぐことよりも、偶然バーのカウンターの隣りに座った人と、違った価値観を語るほうが面白い。
そんな折、ある方の紹介でバーに行くことになった。都内某所にあるバー。お店側のご配慮で、バーの開店を早めて頂き、僭越ながら取材をさせて頂いた。バーの経験が無いに等しい私は、取材というよりも「勉強」というスタンスで来店。カクテルの種類やお酒へのこだわりなどを聞いた。そこで見えてきたものは、お酒を飲まなくなったという我々の世代が、実は最もバーに向いている世代であるということだった。


某月、18時。いつもより早く開店して頂く。店内にはカウンター席のみ。照明は少なめ、随所にキャンドルが置いてある。カウンター後ろの棚にはたくさんのお酒が並ぶ。全部で250銘柄あるという。壁には絵画が掛かり、所々にミニチュアの置き物が見える。
「絵は知り合いの方に描いてもらいましたが、それ以外の置き物などは、お客様が持ってきて下さったものなのですよ」マスターはいう。客と一緒に店を作っている。
照明は暗めだが、カウンターのカクテルが置かれる場所に、光が集まるように工夫されていることに気付く。マスターから客にカクテルが渡される瞬間、最もカクテルが輝く。

私はまず、マティーニを注文した。「カクテルの王様」と称される、ジンベースのカクテルだ。飲むと、コンビニで買えるものとは全く違う味。これが本物のマティーニだと思った。
マスターは言う。「このマティーニは今まで私が作ったどのマティーニよりも美味しいと思います。常に美味しいものをご提供できるよう、味にこだわっておりますので」。お酒に対する飽くなき探求心が感じられる。

一緒に取材に立ち会った方はモスコミュールを注文した。使われるジンジャエールはカクテル専用のもの。それ自体は生姜を搾っただけのように見え、味も美味しいとは言い難い。しかし、これがウォッカなどと混ざると、絶妙の味に変わる。カクテルというものが、いかに奥深いものなのかを物語っている。


バーにはメニューが無い。そのため、お酒の知識の無い若年層はなかなか行きづらいと感じてしまう。しかし、むしろお酒の知識の無い人にバーに来てほしい、とマスターは言う。例えば、楽しいことがあった日なら「今日という日の締めくくりに最適なカクテルを下さい」と言えば、その雰囲気に合ったお酒を提供してくれるとのこと。逆に嫌なことがあった日なら、「楽しい気分にしてくれるものを下さい」と言えばよい。味も「ミント系がいい」とか「さっぱり目がいい」などといったように、曖昧な注文でも構わない。価格なども相談に乗って貰えるとのこと。実際、意外とバーはリーズナブルである。

面白い注文をしてみた。「僕の母親が大学生だった頃の、コンパで飲んでいたカシスオレンジを下さい」という注文だ。母親の在学年を告げると、その年代に出回っていたリキュールを選び、忠実に再現されていく。30年という年月を越え、目の前にそのカシスオレンジが置かれた。完成までにそれほど時間は掛からなかった。味はというと、今のカシスオレンジよりも甘い味がした。私は「時をかける少女」ではないので、その時代の味を知ることはできない。しかし、客の無理な注文に対しても真摯に応えようとする姿勢に、「もてなしの心」を感じることができた。


マスターは言う。「ある日、大学生3人が来店しました。その大学生は『僕たちでも飲めるのでしょうか』と率直に質問しました。もちろんです、と私は答えました。その学生さんたちは、彼ら・彼女らの持ち合わせる知識をたくさん話すのですが、言っていることは的を得ないものばかりでした。けれども、最後は3人とも気持ちよく酔って帰っていきました。私は、バーという場所が高貴で厳格な所ではなく『ここに来た時に一番楽になれる場所』にしたいと考えています。ですから知識の無い方、嗜み方を知らない方にもぜひ足を運んで欲しいですね」

「one for the road」という言葉がある。その日の締めくくりとして飲まれる最後の一杯だ。バーという場所は、その「one for the road」を提供してくれる場所なのである。



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取材協力:Bar Lancha(バー ランチャ)
各種モルト、カクテル、そしてシガーも充実したオーセンティックなバー。
世田谷区桜新町1-3-8 1F 03-5758-3278
Open:月〜土19:00〜03:00 日・祝19:00〜01:00
Drink:1000円〜
Charge:500円