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新鋭画家と「表現すること」について対談してきた。(コラボ#21)
»2011年2月24日
安齋の「No brain,no life」
新鋭画家と「表現すること」について対談してきた。(コラボ#21)
社会人5年目。世の中にある様々なモノ・サービスに対してブレストしたものを記事にしていきます。また、ほかのブロガーさんや企業さんとのコラボ企画なども織り交ぜてお送りいたします。コラボしたいという方、絶賛募集中です!
当ブログ「安齋の「No brain,no life」」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/shinpeianzai/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
中尾葉子。1987年生まれ。早生まれなので、新卒2年目と同級生だ。
しかし、彼女の描く絵は既に人々から評価されている。
こんな話がある。
とある展覧会で、ある外国人が彼女の絵を購入した。あとで分かったことだが、その人は某国の大使館に勤めており、今も広々とした部屋に飾られているという。
私が彼女の絵を初めて見た時、同世代が描いたとは到底思えなかった。時代に流されないような普遍性を持った絵。そのような印象を受けた。
そして今回、その本人にインタビューする機会を得た。同世代の画家をインタビューすることで、同じ「表現者」として彼女から何かを得ることが出来ないか。そんな思いで臨んだ。
―中尾さんの絵は「人」をテーマにしたものばかりですが、そこに秘められた思いを教えてください。
中尾「私は元々、人に興味があるのです。人と向き合うことで、自分が分かってくる。『自分とは何か』とか、『なぜ生きているのか』とか、『何をしなければならないのか』といった問いに向かい合うために、絵を描いているんです。」
―絵を描く時は、どのくらい絵と向き合っているのでしょうか?
中尾「絵を描いている時は、ずっと集中しています。そして、夜になると一旦絵を寝かせます。そして次の日にまた描く。描きたいという時に描き、描かない時は描かない。日によって絵の表情が変わりますので、何度も描き直したりします。」
―中尾さんにとって、絵をうまく描けたというのはどういった時でしょうか?
中尾「やはり、『自分の内面が表現できた』という時に、一番うまくいったと感じますね。」
彼女は福岡出身。福岡の教育大学で彫刻の勉強をした。彼女の作品に彫刻のような特徴があるのは、大学で学んだことが活きているからなのかもしれない。現在、派遣社員として働きながら、数々の作品を描いている。
都内の企業に勤めるTさんは、中尾氏が絵を出展した「WONDER SEEDS 2010(東京)」にて偶然この絵に出会い、すぐさまファンになった。Tさんも中尾氏の絵を所有している。このTさんにもインタビューをしてみた。
―展覧会で中尾さんの絵を見て、どのような印象を受けましたか?
T「感情を揺さぶられた、という印象でした。この絵を見て、その場にいた上司と一緒に作者を探し、中尾さんに会うことができました。本人に会って、自分より年下の人が、このような絵を描いているということに驚きました。」
―中尾さんの絵の魅力は何だと思いますか?
T「家に飾っていて、毎日同じ絵を見ているはずなのに、その日その日で絵の表情が変わって見えるように感じる所でしょうか。たぶん、私自身の内面の感情の変化が、絵を通して私に話しかけているのでしょう。」
「表現する」という意味では、ライターである私も中尾氏と同じクリエイティブな仕事をしている。ただ私の場合、読者層や季節柄といった様々な制約を受ける。媒体によっては、「タイトル(25字)、インタビュー部分(400字)、記者目線(400字)、でお願いします」というように、文字数の制限を受けることもある。
私は制約の中で表現することにやりがいを感じているが、中尾氏のように「自分との対話」の中から生まれる文章というのもまた、非常に価値のあるものだと思う。内なる感情をかたちにすること。それは、多くの人が抱える、表現できないものを表現することなのである。
彼女は「描く」という舞台で、私は「書く」という舞台でそれぞれ試行錯誤しながら、前に進んでいくことになるのだろう。同世代として、お互いの今後が楽しみだ。
再び彼女とのインタビューに戻る。
中尾「絵を描いて、自分の存在を証明していく。作品を通して自分を知ることが、私にとって絵を描くことなのだと思います。余裕が出来たら、絵と彫刻を組み合わせて展示したいと思っています。方向性はこれから探していくつもりです。」
「方向性をどうしようか迷っている」、そう話す中尾氏の顔は笑顔だ。
(上に掲示した絵画3点は、トップから順に2009年、2010年、2011年に制作したもの)